農作物技術情報 第4号 花き(令和3年6月24日発行)

ページ番号2003832  更新日 令和6年3月13日

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タイトル

  • りんどう 病害虫防除を徹底しましょう(とくに褐斑病、リンドウホソハマキ、ハダニ類)。事前に切り前を確認し適期に収穫しましょう。
  • 小ぎく 病害虫防除を徹底しましょう(とくに白さび病)。収穫前に伏せ込み用の親株を選抜しましょう。
  • 共通 今後の大雨に備えた排水対策の徹底と降雹事後対策を行いましょう。

りんどう

1 生育概況

露地栽培の生育は、平年並みからやや前進しています。極早生種の開花が始まっています。早生種は側芽発生期を過ぎ、着蕾期を迎えています。
病害虫では、リンドウホソハマキの食害が全域で確認され、昨年より多い傾向です。また、ハダニ類の発生も増加しています。葉枯病の発生は少なく抑えられています。

2 圃場管理

(1) 新植圃場の管理
新植圃場の乾燥は、苗の生育に大きく影響します。晴天が続く場合は、乾燥状態となる前に通路かん水を行います。
新植苗は、葉枯病やリンドウホソハマキ等病害虫の影響を強く受けるため、多発した場合に翌年の株落ちの原因となります。採花圃場と同様に定期的な薬剤散布を行い、病害虫防除を徹底します。
(2) ネット上げ(図1)
フラワーネットの最上段が草丈の7割程度の位置となるよう草丈の伸長に合わせて調整し、茎の曲がりの発生を防ぎます。
フラワーネットが緩んでいる場合は、支柱の打ち直し・打ち足し、ネットサイドのロープ補強、横木の設置・追加を行います。
(3) 排水対策(図1)
今後の大雨に備え、水路などからの流入水を防ぐため、畦畔の補強、水路の泥やごみの除去を行います。
圃場が滞水した場合は、排水路に水が流れやすくなるよう溝切りをして速やかに排水します。
(4) 残花処理
収穫後の残花は、アブラムシ類、アザミウマ類等の害虫の増殖・感染源となります。収穫が終わった品種では、花蕾の着いている部分の茎を折り取り(花茎除去)、圃場外で処分します。

図1

3 収穫、出荷調製

(1) 収穫
次年度の株養成のため、株当たり3本程度の茎を残して収穫します。なお、県農業研究センターより『りんどう早生品種「恋りんどう」における全茎収穫栽培の適用条件』が試験研究成果として公表されています。「恋りんどう」において、草丈が伸長しやすい圃場で切り下株の高さを50cm 確保できる場合、すべての茎を収穫できるという技術です。詳しくは最寄りの農業改良普及センターにお尋ねください。
収穫に適した開花状態(切り前)は、各地域の目揃会等で事前に確認し、適切な切り前で出荷します。
ウイルス病の汁液感染を防ぐため、刃物を使わずに手で折り取ります。
収穫作業はできるだけ高温時を避けますが、やむを得ず高温時に収穫する場合は、速やかに日陰へ運ぶとともに、できるだけ早く水揚げを行います。
雨天時の収穫や朝露で濡れている場合は、扇風機や専用の切花乾燥機を使って乾燥させます。
水を切るために切花を振ると、花の蜜が花弁や葉などに付着して品質低下の原因となるので避けます。
(2) 出荷調製
出荷規格は、各地域の目揃会等で事前に確認します。
暗い場所での選別作業は、病害虫の見落としや眼の疲労を助長しますので、作業場全体と作業台の明るさを確保します。
水揚げは十分な時間(3~4時間以上を目安)を確保しますが、逆に長すぎると輸送中の蒸れの原因となります。
水揚げ用の水は飲用可能なものとし、毎日交換します。また、水揚げ容器もこまめに洗浄し、
内側にぬめりが付かないようにします。
各部会等で決められた方法で箱詰めを行います。輸送中に花束が動いて傷むことがないよう確実に固定します。

4 病害虫防除

(1) 葉枯病
今後、降雨が続くと発生しやすくなります。定期的な薬剤散布による予防防除が基本となります。また、耕種的防除としてひこばえやこぼれ種からの芽生えの除去が有効です。
(2) 褐斑病
発生後の防除は困難です。発生前から7月下旬まで予防効果の高い薬剤を継続散布することで防除します。前年に発生した圃場では、今年も発生しますので特に防除を徹底します。
併せて、適切な株仕立てや、ひこばえや茎下部から発生する側枝の除去によって通風を良くすることが有効です。
(3) ハダニ類
圃場をよく観察し、発生初期の薬剤防除に留意します。肉眼での確認が難しい場合は、ルーペ等を用いるか指導機関に相談します。
発生初期は下葉の裏に多くいますので、薬剤散布は十分な散布量で葉裏にきちんと薬液が付着するよう行います。
同系統のダニ剤は年1回の使用を基本とし、薬剤抵抗性の発現を回避します。また、増殖場所となりやすい周辺雑草の除草も重要です。
(4) アザミウマ類
花蕾の着色期以降に蕾の内部へ侵入し加害します。花弁展開前の蕾内部にいるアザミウマ類には薬剤効果が得られにくいため、侵入前に圃場周辺の増殖場所を作らないことが防除のポイントとなります。まず、クローバーなど開花している周辺雑草をできるだけ減らします。次に、収穫し終えたりんどうの残花を残さないよう、着花している茎の部分を折り取り、圃場外で処分します。
なお、現地では、アザミウマ類防除を目的とした薬剤散布は、花弁が展開している時間帯に行われることが多いですが、高温時の散布は薬害に注意します。
(5) リンドウホソハマキ(図2、3)
6月から生長部や茎への食害が増えています。茎内に侵入した幼虫は薬剤防除が難しいので、被害茎は見つけ次第長めに折り取り、必ず圃場外で処分します。また、被害が多く見られた圃場では、7月以降も薬剤防除を継続します。

図

小ぎく

1 生育概況

8月咲品種の生育は、全般に平年並みとなっていますが、定植後に低温や降霜の影響を受けた圃場ではやや遅れが見られています。9月咲品種は概ね平年と同時期に定植、摘心作業が行われ、順調に生育しています。
病害では、全域で苗の持ち込みから発生したとみられる白さび病が発生しています。害虫では、一部地域でアブラムシ類、ハモグリバエ類、アザミウマ類、キクスイカミキリ等が散見されています。

2 圃場管理

(1) 排水対策
小ぎくは湿害に極めて弱く、長時間の滞水はその後の生育に大きく影響します(図4)。普段から降雨の際に水がたまりやすい場所では、溝切り等により排水を促します。
(2) かん水
小ぎくは根張りが浅く、乾燥の影響も受けやすいため、晴天が続いて圃場が乾燥した場合は、萎れる前にかん水します。

図4

(3) 整枝
側枝の長さが20~30cm の頃に、生育の揃った側枝を株当たり3本残して他の側枝を除去します。目立って生育の良い側枝を残してしまうと、他の2本の生育が劣る傾向にありますので、全体のバランスを考えて残す側枝を決めます。
(4) 下葉取り
蕾が見える頃になったら、地際から20cm 程度までの葉を落として通風を良くします。着蕾前でも、早期に下葉が黄化・褐変した場合は早めに除去します。
(5) 出荷規格
出荷規格は各地域の目揃会等で事前に確認します。
(6) 病害株の抜き取り
わい化病(図5)に感染した株は、薬剤散布による治療ができないため、見つけ次第株を掘り上げて処分します。感染株を親株に用いると挿し穂に伝染するため、年々発生が拡大します。わい化病は症状にいくつか特徴がありますが、判断できない場合は指導機関に相談します。

図5

3 病害虫防除

(1) 白さび病
気温15~23℃、湿度90%以上の多湿条件で感染しやすくなりますので、降雨前の薬剤散布で予防に努めます。
発病後は病気にかかった葉を除去し、圃場外に持ち出して処分します。その後、治療効果の高い薬剤を散布します。予防剤と治療剤を確認し、状況に応じて適切な薬剤を選択することが重要です。
(2) アザミウマ類
アザミウマ類は、葉や花の吸汁による直接的な加害のほか、キクえそ病(TSWV による)などのウイルス病を媒介しますので、定期的な薬剤防除を行います。併せて、圃場内外の除草も徹底します。
(3) オオタバコガ(図6)
今後、発生の増加が予想されます。蕾を好んで食害するため、発見が遅れると出荷に大きく影響します。圃場
をよく観察するとともに、各地域の防除暦や防除情報に注意します。

図6

4 親株の選抜

翌年の採穂に使用する親株は、収穫後では形質や病害の確認が難しくなります。とくに、わい化病は低温で病徴が現れにくくなるため、伏せ込み時では確認が困難です。よって、収穫が始まる前に、以下の点に留意して親株の選抜を行い、目印を付けておきます。

  1. 草丈の伸長が良好
  2. 草姿が優れる
  3. 品種本来の花色を有する
  4. 開花期が目的の時期に合う
  5. 病害虫(特に白さび病、べと病、わい化病、キクヒメタマバエ(図7))がみられない
  6. 株が充実しており発生している茎の数が多い

図7

降雹事後対策
(1) 降雹等により茎葉が折損した場合は、折損部位を手で折り取り注、圃場外に持ち出し処分します。
(2) 損傷した傷口や泥の跳ね上がりから病害が発生する恐れがあるので、速やかに灰色かび病等を対象とした殺菌剤を散布します。
(3) りんどうでは、収穫が見込めない花蕾は折り取り、養成茎として残します。また、液肥を葉面散布し草勢の回復を図ります。
(注 ウイルス病の感染を防ぐため刃物は使用せず、手で折り取る)

最後

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