農作物技術情報 第3号 果樹(令和3年5月27日発行)

ページ番号2003695  更新日 令和3年5月27日

印刷大きな文字で印刷

果樹 タイトル

  • りんごの発芽・展葉は平年より10~12 日程度早まりましたが、開花は、4月の気温が概ね平年並みに推移したことから、満開期で平年より4日程度早くなりました。また、4月の低温の影響により、開花がバラつき開花期間は長くなりました。さらに、4月の低温降霜により県下全域で凍霜害が見られ、被害の大きい園地では着果不足、また、多くの園地で果実品質の低下が懸念されます。結実の状況を慎重に見極め、できるだけ良質果を残すよう摘果を進めましょう。
  • ぶどうの生育は、3 月までの高温の影響で、発芽期、展葉期とも平年より7日程度早くなりました。しかし、今後の気温の推移により生育時期は変動しますので、計画的に開花期前後の管理を進めましょう。

りんご

1 生育概況について

(1)開花期の状況
生育診断圃の調査結果(表1)から、「ふじ」の開花始期は4月29 日と、平年より7日前年より5日早くなりました。また、「ふじ」の満開期は5月6日と、平年より4日前年より1日早くなりました。今年は展葉、発芽が平年より10~12 日早まったものの、4月が平年並みに推移したことにより、展葉から開花始までの期間がやや長くなりました。また、4月の低温と凍霜害により花器が障害を受け、開花がそろわず、開花期間が長くなりました。開花してもめしべの褐斑や欠落、さらには生育異常が見られ、凍霜害の著しい園地では、着果不足、その他の園地でも果実品質の低下が懸念されます。

表1 ふじの開花状況

(2)結実の状況
開花期間中は前半が低温と降雨、後半が好天でしたが、本年は凍霜害の影響が結実に大きく影響したものと推察されます。
4月の低温、凍霜害の影響で、中心花のおしべ、めしべの褐変(図1)、中心花の生育不良(図2)、中心花、側果の生育不良及び花そう葉の縮れ(図3)など、多くの症状が見られています。
また、結実してもサビ果や奇形果の発生が懸念されるので、慎重な経過観察と良質果を収穫するために摘果の吟味が重要です。

図1 中心花

図2 3

2 摘果について

(1)通常時の摘果
ア 最初に、1果そう1果とする予備摘果(あら摘果)を実施します。その際、不要な果そうの果実を積極的に除いていきます。その後、果実肥大や品質を確認しながら仕上げ摘果を進めます。
イ 摘果終了の目安は表2の通りです。今年の落花期は平年より5日程度早く、落花30 日後は6月10 日前後になります。作業を計画的に進め、早期摘果を心がけてください。
ウ 三角実や扁平果など、果形の悪い果実、病虫害果、傷果を中心に摘果していきます。
エ 果実は横の発育が良く、果硬が太くて長い正形果を残します。
オ 果台が極端に長いもの(25mm 以上)や短いもの(10mm 以下)は、斜形果の発生割合が高くなるので、できるだけ摘果します。

表2 

(2)凍霜害発生園地における摘果の要点
凍霜害の発生した園地では、さび果、奇形果などの障害果の発生が懸念されます。摘果作業は被害様相が明らかになり、結実を確認してから行います。また、結実しても、サビ果や不正形果が多くでるので、予備摘果は多めに残し、仕上げ摘果でよい果形のものを残すように吟味してください。また、中心果が被害を受けた場合は、果形、肥大が良好で障害が少ない側果を利用します。
なお、仕上げ摘果の終了時期は、翌年の花芽確保のため、過度に遅れないよう注意します。

3 病害虫防除について

(1)昨年来、発生が目立っている黒星病や褐斑病、昨年の発生は少なかったものの密度が高くなると防除が難しいハダニ類など、今後これらの発生動向には十分に注意が必要です。病害虫防除所が発行する発生予察情報を参考に防除を進めてください。
(2)6月は斑点落葉病など様々な病害の感染時期です。梅雨期は週間天気予報などを活用し、降雨の合間を捉えて、散布間隔が空き過ぎないように防除を実施してください。
(3)黒星病については、他病害との同時防除を兼ねて、本病に効果のある予防剤を定期的に散布してください。その際には散布ムラがないように十分量を丁寧に散布します。また、降雨が予想される場合は、降雨前に散布を行ってください。
なお、落花10 日後以降のEBI剤の散布は、耐性菌が発現する恐れがあるので行わないでください。
さらに、園地を見回り発生が確認された場合は見つけ次第、発病葉(図4)や発病果(図5)を摘み取り、土中に埋めるなど適正に処分してください。苗木など未結果樹での発生にも注意し、成木と同様に薬剤防除を徹底します。
(4)ハダニ類は気温の上昇とともに増える可能性があり、新梢葉で寄生葉率が30%に達したら、速やかに防除を行ってください。

図4 5

ぶどう

1 生育概況

紫波町の定点調査地点の観測によると(表3)、4月の気温は平年並みであったものの3月までの高温の影響により、発芽期は4月25 日と平年及び前年より7~8日早くなり、展葉期も平年及び前年より7~8日早くなりました。
5月20 日発表の一か月予報によると「気温は高い」とされております。これから開花期にかけては管理作業が重なり忙しくなりますので、生育状況や気象情報をしっかり確認し、計画的に作業を進めて開花前の管理が遅れないよう注意しましょう。

表3

2 開花期前後の栽培管理のポイント

(1)新梢の誘引
展葉7~8枚頃に、2回目の芽かき作業に合わせて良く伸びた新梢から誘引します。

(2)花穂の整理
ア 「キャンベルアーリー」は、開花前に3穂着生している新梢については、1穂落として2穂とし、全体で目標着房数の1~2割増の着生数とします。
イ 「紅伊豆」は、最終房数は1新梢1房とします。摘房の時期は、新梢の強弱を判断して強勢のものほど摘房を遅らせ、着色期を目途に最終着房数とします。
ウ 無核化する品種では、花穂の整形と併せて摘穂を行います。摘穂の目安は、ジベレリン処理により着粒が安定するため、最終着房数の1.5 倍程度とします。

(3)花振るい防止
ア 「キャンベルアーリー」は、強めの新梢を開花7~4日前に房先5~7枚の葉を残して摘心します。
イ 大粒種で花振るいが強い品種や園地では、植調剤を使用することにより花振るいを軽減(着粒増加)できます。使用する際は、品種毎の登録内容を十分に確認し、使用時期や希釈倍率に注意して使用してください。

(4)花穂の整形(図6)
ア 「キャンベルアーリー」では、摘芯作業と同時に花穂の副穂を切除し、下端を切り詰めます(尻止め)。また、主穂が長すぎる場合は上段の枝梗を1~2段切除します。
イ 「紅伊豆」などの大粒種は、1~2輪開花し始めた頃から先端部を切り詰めます。「紅伊豆」では副穂を切除し、主穂の基部から4~6段を切除して10~13 段程度を残すように整形します。
ウ 「サニールージュ」では開花初期(副穂の開花が始まった頃)に副穂を除去し(長い花穂は上部支梗を1~3段除去)、花穂の長さを概ね7~8cm とします。なお、花穂の先端は切りつめません。
エ 「シャインマスカット」では開花初期(副穂の開花が始まった頃)に副穂と上部支梗を切除し、花穂の長さを概ね4cm とします。花穂の先端は切りつめません。また、花穂先端が2つに分かれ使えない場合は、第1枝梗を利用します。

図6 

(5)無核化処理
無種子化のため、「安芸クイーン」などの「巨峰系4倍体品種」、「サニールージュ」、「シャインマスカット」に対して遅れずに処理を行います。
なお、植調剤を使用する際は、品種毎の登録内容を十分に確認してください。


(6)摘粒
ア 果粒肥大を促し裂果や病害の誘発を防ぎ、着色向上など品質確保に不可欠な作業です。果粒の大きさが小豆から大豆くらいの大きさとなる満開後30 日以内に終了するのが目標です。
イ 1果房当たり「キャンベルアーリー」、「ナイアガラ」は70 粒程度、「サニールージュ」は50粒程度とし、二つ折りになる状態を目安に行いますが、縦に1~2列(2列の場合は表側1列と裏側1列)摘粒する方法や段抜きなどの簡便法もあります(図7)。
ウ 「紅伊豆」、「ハニーブラック」は1果房当たり30~40 粒、「安芸クイーン」は25~30 粒、「シャインマスカット」は40~50 粒程度とします。最上位に4粒程度着粒させ、下部に行くほど徐々に着粒数を減らし、下端は1粒となるようにします(図8)。

図7

農作業、山火事防止

PDFファイルをご覧いただくには、「Adobe(R) Reader(R)」が必要です。お持ちでない方はアドビシステムズ社のサイト(新しいウィンドウ)からダウンロード(無料)してください。

このページに関するお問い合わせ

農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
〒024-0003 北上市成田20-1
電話番号:0197-68-4435 ファクス番号:0197-71-1088
お問い合わせは専用フォームをご利用ください。