農作物技術情報 号外 台風対策(平成28年10月3日発行)

ページ番号2001871  更新日 平成28年10月3日

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気象庁発表(10月3日12時45分現在)によると、台風18号が北上中であり、5〜6日にかけて、風雨が強まるなど岩手県に影響が及ぶ恐れがあります。 今後の気象情報に注意するとともに、農作物被害を避けるための防止対策を適切に行いましょう。農作物被害軽減に向け、可能な範囲で収穫を進めるほか、排水溝や防風設備の点検などを行い、迅速に対応できるように備えましょう。
人命第一の観点から、圃場の見回り等については、気象情報を十分に確認し、大雨や強風が治まるまでは行わないでください。これまでに台風等の影響を受けた地域では、地盤が緩んでいる可能性があるので、十分に注意して行動しましょう。

農作業安全

見回りや機械作業は安全第一!

(1)被害確認のための圃場見回りや事後対策を実施する際は、河川や水路が増水中の場合や圃場が冠水している場合は危険なので、近づかないようにしてください。また、土砂崩れなどの恐れのある場所へは、安全が確保されるまでは立ち入らないようにしましょう。
(2)水が引いた後に圃場に入る際は、路肩が緩んでいたり、圃場や作業道等がぬかるんで、農業機械等が横転する危険があります。作業時には十分注意してください。

水稲

台風接近前に刈取作業を進めるとともに、排水を促しましょう!

事前対策
(1)収穫適期を迎えた圃場では、台風接近前までに可能な限り収穫作業を行いましょう。また、自然乾燥で乾燥が進んだものは、脱穀作業を進めましょう。
(2)あらかじめ圃場の水尻を開放し、排水を促すようにします。
(3)特に、北上川流域等の水害の常襲地帯では、浸冠水した場合でも排水がスムースにできるよう、排水路等にゴミなどが詰まっていないか事前に点検をしてください。
(4)コンバイン等の収穫機械は圃場に放置せず、格納するようにしましょう。
事後対策
(1)圃場管理
ア 自然乾燥のハセや穂ニオが倒れていないか、稲束が飛ばされていないかを確認しましょう。
イ 刈取りがまだで倒伏した圃場は、稲穂が水に浸かったままだと穂発芽の原因となります。速やかに排水しましょう。
ウ 浸冠水した圃場には、流木、空き缶等のゴミが流入していることが多く、収穫作業中にコンバイン等を損傷する恐れがあるので、作業前にこれらのゴミを取り除きましょう。
(2)刈取り作業
ア 倒伏したままの稲の稈は切れやすく、コンバインが詰まりやすくなるので、作業速度はできるだけ遅くしてください。
イ 穂発芽等により品質低下がみられる場合は刈分けしましょう。
ウ 高水分状態での刈取作業は、脱ぷ、コンバインの詰まりや収穫ロスにつながるので避けましょう。
(3)乾燥調製
高水分籾を急激に乾燥すると、胴割れ粒の発生により品質の低下につながるので、二段乾燥により水分を調整してから仕上げ乾燥を行いましょう。
(4)仕分け集荷
冠水により泥が付着した籾は仕分け集荷し、十分な品質チェックを行いましょう。
(5)農作業安全
ア 浸・冠水した地域では、路肩がゆるんでいたり、圃場や作業道等がぬかるみ、農業機械等が横転する危険があるので、作業時には十分に注意しましょう。
イ コンバインにワラ等が詰まった場合には、必ずエンジンを止めてからこれらを取り除くようにしましょう。
ウ 夕方の事故が多いので、暗くなってきたら翌日に作業を回すなど、焦らず、慎重な作業を心がけましょう。

大豆

収穫作業に備え、排水対策を万全に!

事前対策
地表排水を促進するため、周囲溝や排水口などを重点的に点検・補修します。
事後対策
圃場にたまった水は直ちに排水し、長時間滞水しないように努めます。圃場排水の促進は紫斑病など各種病害の発生低減やコンバインによる適期収穫につながります。
台風により倒伏した株は、可能な場合は莢が地面に接しないよう引き上げます。

小麦

条件が悪い圃場では無理な播種を避け、排水対策を行ってから!

事前対策
これから播種する圃場については、地表排水を促進するため、周囲溝や排水口などを点検・補修しましょう。また、土壌水分が高い圃場や、播種後に湛水が予想される圃場では、台風通過前の播種は避けましょう。
事後対策
播種が済んだ圃場およびこれから播種する圃場とも、たまった水を直ちに圃場外に排水します。これから播種する圃場については、土壌水分が適湿になるのを待ってから播種を行います。播種期が遅れる場合は、播種量を増やして播種します。

野菜

施設の保守点検と台風通過後の病害対策をしっかりと!

事前対策
(1)果菜類は若採りするなど、収穫可能なものはできるだけ事前に収穫を終えます。
(2)これまでの降雨による排水溝の損傷や詰まりがないか、整備・点検を行います。
(3)防風ネットやパイプハウスは、緩んでいるワイヤーやハウスバンドを張り直し、ネットやフィルムの破れている部分は補修しておきます。特にハウスでは筋交いなどの補強を行い強風に備えます。
(4)風が強く施設を閉め切る時間が長くなると、湿度が上昇して病害が発生しやすくなりますので、循環扇等で空気を撹拌して予防に努めます。
事後対策
(1)圃場にたまった水はただちに排水し、長時間滞水しないように努めます。
(2)茎葉に泥土が付着している場合は、動力噴霧機により水をかけて洗い流します。浸水や多湿、茎葉の損傷等により病気にかかりやすくなっていますので、品目ごとの防除指針に従って殺菌剤を散布し、病害の発生を予防します(特にべと病、疫病、立枯性疫病、軟腐病など)。
(3)強風などで傷んだ茎葉や果実は摘除するとともに、必要に応じて薄い倍率で液肥を施用または葉面散布し、草勢の回復に努めます。浸冠水や土に埋没するなど、回復の見込みのない場合は直ちに整理し、次年度の栽培に向けた対策を検討します。
(4)施設が破損した場合は、速やかに補修を行ってください。

花き

排水対策と風による倒伏対策を十分に!

事前対策
(1)圃場に水路などからの水が入らないよう土嚢などで対策するとともに、排水路の点検を行い、排水しやすいよう整備してください。
(2)強風による折損や倒伏の恐れがあるので、支柱やネットの強度を確認し、補強してください。
また、ネット上げが不十分な場合、茎上部が風で折れることがあるので、適宜引き上げてください。
(3)施設栽培では被覆資材の破損が拡大しないように、ビニールの小さな破れや傷の補修を行います。
また、風が強い場合、施設を閉め切ることになりますが、湿度が上昇して灰色かび病などの病害が発生しやすくなるので、循環扇等で空気を撹拌して予防に努めます。
事後対策
(1)台風の通過後、滞水している圃場は速やかに排水します。
(2)茎葉に泥が付着している場合は動力噴霧器等で洗い流すとともに、必要に応じて液肥の葉面散布や病害予防のための殺菌剤の散布を行います。
(3)支柱、ネットの修復を行うとともに、倒れた茎は早めに起こし、曲がりを軽減するよう努めます。
(4)折れた茎葉は圃場外に持ち出すとともに、茎葉の損傷がひどく回復の見込みがないものは抜き取り処分します。
(5)施設花きでは破損部分があれば補修を行います。また、施設内では過湿の状態にあり病気の発生が懸念されますので速やかに換気し、薬剤散布により病害の発生予防に努めます。

果樹

りんご 防風対策と被害軽減対策をしっかりと!

事前対策
(1)中生品種は、安全使用基準の収穫前日数を確認し、収穫が可能なものは収穫を進めましょう。
(2)防風ネットを設置している園地では、ネットの張りを点検するとともに、破れたネットは張り替えましょう。また、緩んでいるワイヤーは張り直し、十分に効果が現れるよう備えます。
(3)わい性樹は強風で倒状することがあるので、主幹を支柱に2〜3ヵ所結束します。長大な側枝を持つ樹形は、特にもバランスを崩しやすいので、丈夫な支柱で支え、はずれないよう縄で縛り固定します。
(4)高接ぎでは大切な更新枝を保護するよう添え木し、幼木も丈夫な支柱を立てておきます。
(5)降雨による表面水を速やかに排水できるよう、あらかじめ溝を切るなどの対処を行ってください。
事後対策
(1)斜めに傾いたり、横になった樹体は、そのまま不用意に引き起こすと、残っていた根も切ることになってしまいます。このため、倒れた側からスコップで少し掘り下げるなど、注意深く戻します。
紫紋羽病の発生園では、病気の蔓延を予防するため本病に登録のある剤を土壌潅注処理します。なお、使用前には必ずラベル等で使用基準を確認してください。また、樹の衰弱が予想される場合には、堆肥や土壌改良資材を根域に混和し埋め戻します。
(2)園地が浸冠水した場合や枝葉や幹に無数の傷が生じた場合、果実腐敗性の病害やふらん病など樹体病害の感染の恐れがあります。このため、特別散布で殺菌剤を散布し、感染を予防します。また、側枝や大きい結果母枝が折れた場合は、傷口をなめらかに切り、塗布剤を塗ります。

畜産

飼料用トウモロコシ 倒伏・折損時は早期に収穫を!
収穫時の作業機の運行速度はやや控えめに!

事前対策
(1)飼料作物を作付している圃場では、排水溝の点検を行い雨水の排水を促します。特にトウモロコシは湿害に弱いので排水対策を徹底します。
(2)停電により、搾乳が出来ない場合を想定して、発電機の準備や使用方法を確認しておきます。また、可能であれば貯水タンクに水を確保しておきます。
(3)強風により畜舎や施設の破損が懸念されるので、畜舎周辺を点検し、必要であれば修繕や補強を行います。また、畜舎内に雨水が入らないよう排水溝の点検等を行います。
事後対策
(1)トウモロコシの熟期は、完熟期に近い圃場も見受けられますので、収穫作業を速やかに進めます。倒伏や折損した場合、できるだけ早期に収穫します。滞水等がある場合は、溝を切るなどして排水に努め、作業機が圃場に入れるようにします。
(2)収穫にあたっては、ハーベスタの収穫方向をよく考え、作業機の運行速度を控えめにします。
また、土壌の混入はサイレージの品質低下を招くため、やや高めに刈ります。
(3)倒伏や折損の場合は、切断面が粗くなりやすいことから詰込み密度を確保するために、十分な踏圧と早期密封に努め、発酵品質低下を抑制しましょう。また、詰め込み密度が低下する場合、開封後、二次発酵が起こりやすくなります。ギ酸やプロピオン酸などの添加剤の使用を検討します。
(4)畜舎内に浸水や雨漏りした場合、高温多湿となり不衛生になりますので、台風通過後は畜舎やその周辺の排水を徹底し、敷料交換、排泄物の除去、空気の入れ替え等により乾燥を図り、消毒を実施します。

注意!
この記事は発行年月日時点の内容のまま公開していますので、ご覧になった時点の法規制(農薬使用基準等)等に適合しなくなった内容を含む可能性がありますから、利用にあたってはご注意下さい。

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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