農作物技術情報 号外 台風対策(平成28年8月29日発行)

ページ番号2001865  更新日 平成28年8月29日

印刷大きな文字で印刷

気象庁によると、大型で非常に強い台風第10号が、今後北日本から関東地方に接近し上陸するおそれがあります。本県でも台風の接近により、風雨とも非常に強まる見込みであり、農作物被害軽減に向け、最大級の警戒が必要です。
今年度は8月中旬以降、台風が頻発しています。最新の気象情報を常にチェックして、日頃より排水溝や防風設備の点検などを行い、迅速に対応できるように備えましょう。
--------------------------------------------------
人命第一の観点から、圃場の見回り等については、気象情報を十分に確認し、大雨や強風が治まるまでは行わないでください。また、大雨等が治まった後の見回りにおいても、増水した水路その他の危険な場所には近づかず、足下等、圃場周辺の安全に十分に注意し、転落、滑落事故に遭わないよう慎重に行ってください。

水稲

排水路等の点検整備と冠水後の圃場管理を万全に!

事前対策

(1)浸冠水が予想されるような水田では、あらかじめ水尻を開放し排水を促すようにします。
(2)特に、北上川流域等の水害の常襲地帯では、浸冠水した場合でも排水がスムースにできるよう、排水路等にゴミなどが詰まっていないか事前に点検・整備をしてください。

事後対策
(1)浸冠水した場合には、速やかに排水するよう努めてください。特に、長時間冠水すると登熟に影響するので、少しでも早く葉先を出すことが重要となります。ただし、稲体が水分を失いやすい状態にあるため、田面を急激に干さないようにしてください。
(2)排水路等にゴミなどが詰まっていると再び降雨があった場合に浸冠水しやすくなります。このため、土地改良区等と連携して排水路等のゴミを除去するなど点検・整備をしてください。
(3)倒伏した場合は収穫時に刈り分けし、土が付着した籾や青未熟粒等の混入を避けてください。また、穂に泥が付着すると調製時に玄米表面を汚し、外観品質を損なう恐れがあります。よって、作業機はこまめに清掃し、品質低下を防止しましょう。

大豆

排水対策を十分に!

事前対策

地表排水の促進のため、周囲溝や排水口などを点検・補修し、速やかに排水できるようにします。

事後対策

圃場にたまった水は直ちに排水し、長時間滞水しないように努めます。倒伏した株は莢が地面に接しないよう、早期に引き上げて子実肥大を促します。
浸冠水被害を受けると一般に病害虫が発生しやすくなります。発生状況を確認しながら必要に応じて防除を行いましょう。

野菜

排水対策と施設の保守点検を十分に!

事前対策

(1)局地的な大雨に備え、以前の大雨や台風により排水溝の損傷や詰まりがないか、整備・点検を行いましょう。特に、圃場外からの浸入水を防止するため、圃場やハウスの周囲にあらかじめ排水溝を設けておきます。
(2)強風に備え露地圃場やハウス周囲に防風ネットを設置している場合、緩んでいるワイヤーや針金を張り直し、ネットの破れている部分は補修しておきます。
(3)パイプハウスは、ハウスバンド(マイカー線)が切れたり、緩んだりしていないか点検するとともに、ビニールの破損があれば補修しておきます。特に筋交いなどの補強を実施して強風に備えます。
(4)風が強く施設を閉め切る時間が長くなると、湿度が上昇して病害が発生しやすくなるので、循環扇等で空気を撹拌して予防に努めます。
(5)強風で支柱が抜けたり、倒伏する恐れがありますので、畦の両端や畦の所々で支柱を補強し、支柱の倒伏・倒壊、株の倒伏を防ぎます。
(6)支柱・ネット等への茎葉の誘引状況を点検し、しっかり固定します。
(7)収穫可能なものはできるだけ事前に収穫を終えます。

事後対策

(1)排水対策等
圃場にたまった水はただちに排水し、長時間滞水しないように努めます。排水後、圃場作業が可能になったら畦間の中耕を行って土壌中に空気を送ります。

(2)殺菌剤散布・葉面散布
台風通過後は、浸水や多湿、茎葉の損傷等により病気にかかりやすくなっていますので、品目ごとの防除指針に従って殺菌剤を散布し、病害の発生を予防します。
茎葉に泥土が付着している場合は、動力噴霧機により水をかけて洗い流した後、殺菌剤を散布します。
強風などで傷んだ茎葉や果実は摘除して草勢回復を図ります。
必要に応じて薄い倍率で液肥を施用または葉面散布し、草勢回復を促進します。

花き

排水対策と風による倒伏対策を十分に!

事前対策

(1)圃場に水路などからの水が入らないよう土嚢などで対策するとともに、排水路の点検を行い、排水しやすいよう整備してください。
(2)強風による折損や倒伏の恐れがあるので、支柱やネットの強度を確認し、補強してください。
また、ネット上げが不十分な場合、茎上部が風で折れることがあるので、適宜引き上げてください。
(3)施設栽培では被覆資材の破損が拡大しないように、ビニールの小さな破れや傷の補修を行います。
また、風が強い場合、施設を閉め切ることになりますが、湿度が上昇して灰色かび病などの病害が発生しやすくなるので循環扇等で空気を撹拌して予防に努めます。

事後対策
(1)台風の通過後、滞水している圃場は速やかに排水します。
(2)支柱、ネットの修復も行うとともに、倒れた茎は早めに起こし曲がりを軽減するように努めます。
(3)風による茎葉の損傷や泥の跳ね上がりから病害の発生が助長されるので、速やかに殺菌剤を散布します。

果樹

りんご 防風対策と被害軽減対策をしっかりと!

事前対策

(1)早生品種は、農薬の安全使用基準の収穫前日数を確認し、収穫可能なものは収穫を進めましょう。
(2)防風ネットを設置している園地では、ネットの張りを点検し、緩んでいるワイヤーは張り直し、破れたネットは張り替えるなど、十分に効果が現れるよう準備します。
(3)わい性樹は強風で倒状することがあるので、主幹を支柱に2〜3ヵ所結束します。長大な側枝を持つ樹形であれば、一層、バランスを崩しやすいので、丈夫な支柱で支え、はずれないよう縄で縛り固定します。
(4)高接ぎでは大切な更新枝を保護するよう添え木し、幼木も丈夫な支柱を立てておきます。
(5)降雨による表面水を速やかに排水できるよう、予め溝を切るなどして対処してください。

事後対策

(1)倒木の処理

斜めに傾いたり、横になった樹体は、そのまま不用意に引き起こすと、残っていた根も切ることになります。このため、倒れた側からスコップで少し掘り下げるなど、注意深く戻します。
紫紋羽病の発生園では、病気の蔓延を予防するため本病に登録のある剤を土壌潅注処理します。なお、使用前には必ずラベル等で使用基準を確認してください。また、樹の衰弱が予想される場合には、堆肥や土壌改良資材を根域に混和し埋め戻します。

(2)病害予防

園地が冠水した場合や枝葉や幹に無数の傷が生じている場合、果実腐敗性の病害や腐らん病など樹体病害の感染の恐れがあります。こうした場合は、定期防除を早めるか、または特別散布で殺菌剤を全面散布し感染を予防します。また、側枝や大きい結果母枝が折れた場合は、傷口をなめらかに切り塗布剤を塗ります。

ぶどう 棚の補強と排水対策をしっかりと!

(1)防風施設の設置、見直しを行います。(りんごの項事前対策(2)に同じ)
(2)棚が倒壊しないよう、棚内部の力線に補助支柱を配し、周囲柱、隅柱を補強しておきます。
(3)降雨により土壌が軟弱化しアンカー等が浮き上がることを軽減するため、排水溝を切り、速やかに排水できるよう対処します。

畜産

施設等の暴風対策と飼料畑の排水対策の徹底、停電時対応の確認
水辺近くの電牧器は念のため撤収を!!

事前対策
(1)強風により畜舎や施設の破損が懸念されるので、畜舎周辺を点検し、必要であれば修繕や補強を行います。また、畜舎内に雨水が入らないよう排水溝の点検等を行います。
(2)飼料作物を作付している圃場では、排水溝の点検を行い雨水の排水を促します。特に、とうもろこしは湿害に弱いので排水対策を徹底します。
(3)停電により、搾乳が出来ない場合を想定して、発電機の準備や使用方法を確認しておきます。また、可能であれば貯水タンクに水を確保しておきます。
(4)河川や用水路等水辺近くの圃場で放牧や獣害用の電気柵を設置している場合は、念のため電牧器本体を撤収し、浸水等による紛失、故障等を防ぎます。

事後対策
(1)飼料作物を作付している圃場で、滞水している場合は速やかに排水するよう努めます。飼料作物の収穫時には、飛来物が混入しないように注意します。
(2)強風により、とうもろこしの折損や倒伏が懸念されますが、子実の登熟初期までに倒伏した個体は、折損していなければ立ち直る場合があるので、そのままの状態にしておきます(手で直すと茎・根などが折れることが多く、この場合の被害は逆に多くなります)。
(3)倒伏した場合の収穫は、ハーベスタの収穫方向をよく考え、作業機の運行速度を控えめにし、やや高刈りとするなど収穫時の土壌などの混入を避けます。また、切断長が粗くなりやすいことから詰込み密度を確保するために、十分な踏圧と早期密封に努め、発酵品質の低下を防ぎます。
(4)折損等の被害が著しい場合は、圃場準備を急ぎ、エンバクやイタリアンライグラスを播種して、自給飼料確保を図ります。
(5)畜舎内への浸水や雨漏りが発生した場合、高温多湿となり不衛生になりますので、台風通過後は畜舎やその周辺の排水を徹底し、敷料交換、排泄物の除去、空気の入れ替え等により乾燥を図り、消毒を実施します。

注意!
この記事は発行年月日時点の内容のまま公開していますので、ご覧になった時点の法規制(農薬使用基準等)等に適合しなくなった内容を含む可能性がありますから、利用にあたってはご注意下さい。

PDFファイルをご覧いただくには、「Adobe(R) Reader(R)」が必要です。お持ちでない方はアドビシステムズ社のサイト(新しいウィンドウ)からダウンロード(無料)してください。

このページに関するお問い合わせ

農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
〒024-0003 北上市成田20-1
電話番号:0197-68-4435 ファクス番号:0197-71-1088
お問い合わせは専用フォームをご利用ください。