農作物技術情報 号外 少雨対策(平成27年7月22日発行)

ページ番号2001890  更新日 平成27年7月22日

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  • 本県では7月上旬〜中旬にかけて雨が少ない状態が続き、上旬〜中旬の積算降水量を平年と比較すると、盛岡で約10%、江刺で約7%、宮古で約6%、久慈で約10%、など県全域にわたって降水量がかなり少ない状況となっています(表1)。
  • 農作物の生産にとって重要な時期ですので、今後の気象情報に注意しながら、少雨に対応した農作物の生産管理を適切に行ってください。

表1

また気温の高い状況も続いています。作業環境の整備、高温となる時間帯の作業を避け、発汗で失われる水分・塩分を補給するなど、作業者の健康管理に十分配慮し、熱中症(熱射病・熱けいれん・熱まひ)を防ぎましょう。
加えてこの時期は暑さにより集中力が低下しますので、農作業安全にも十分注意しましょう。

水稲

県内の移植水稲は、概ね「減数分裂期」を迎えています。
(葉耳間長:始期-10cm〜終期+10cm,減数分裂盛期は±0cm頃→出穂10〜11日前)。
減数分裂期は、幼穂の発育や花粉を形成する稲にとって重要な時期です。葉が枯れるほど土壌が乾燥すると、一穂籾数の減少や不稔粒の発生が懸念されます。
土壌が乾燥している圃場では直ちに入水し、水がなくなったら再び入水する「間断かんがい」を行いましょう。水不足が懸念されている地域では、全体に水が行き渡るよう順番に走り水(水尻に水が届く程度のかん水)を行い、土壌水分の維持に努めてください。また中干しにより畦畔から漏水しやすくなっています。畦畔からの漏水がないかを点検し、用水の有効利用を図りましょう。
なお、高温時の湛水状態は根の活力低下につながりますので、「間断かんがい」の実施に努めましょう。
また、用水の不足により穂いもち予防粒剤の散布ができない場合は、茎葉散布に切り替える(出穂直前・穂揃期の2回散布)ことを検討してください。
葉いもちの発生に注意し、発生が見られた場合は直ちに茎葉散布しましょう。

図1

畑作物

大豆

7月上旬より降水量の少ない状態が続いており、やや生育量は小さく、乾燥により葉の裏面が見えている圃場も見られます。また気温が高い状態も続いており、平年よりやや早く県南部から開花が始まっています。

大豆の乾燥時の技術対策(畦間潅水)

(1)潅水の必要性
大豆は水稲並みに水を必要とする作物であり、開花期以降乾燥が続くと減収することがあります。現在、土壌の乾燥により葉の裏面が見えるような大豆圃場が見られます。このため、高温・乾燥が続く場合は潅水の実施を検討します。

(2)診断の目安
潅水が必要かどうかの客観的な指標としては、テンシオメータでpF値が2.5〜2.7程度になることが目安になります。実際的な簡易な指標としては、晴天が1週間程度続き、土が白く乾燥した時期を目安にする、日中に大豆の葉が立ち、半分以上の葉で裏面が見えるようになった時期を目安にするといったものが一般的に用いられます。

(3)実施できる条件
潅水が実施可能な圃場条件としては、?水回りがよいこと(中耕・培土等で畦間があること、圃場の隅などに水が溜まらないこと、など)、?湿害を回避するため、などの理由から排水溝を予め設置していることが必要です。また、個別の圃場条件(土性・排水口の高さ・水口の数や水量など)や用水の利用条件などを十分確認した上で行います。

(4)具体的な実施手順
1)最初に一部の圃場を用いて、水回りの状況などを確認しながら行います。漏水の大きい圃場は不適です。なお、実施に際しては暗渠管の水閘が閉じているかを確認してください。
2)水が停滞すると土壌中の酸素濃度が低下して湿害を生じることもあるので、水が行きわたったら速やかに排水します。粘土質の圃場で畦間潅水を行うと、水口では湿害が発生することがあるので注意が必要です。
3)水量にもよりますが、圃場の区画によっては数日(概ね3日間程度)に分けて徐々に潅水を行う、朝夕の涼しい時間帯に行うこと、などもポイントになります。
4)岩手県農業研究センターホームページの“平成24年試験研究成果 [指導] 4 平成24年岩手県産大豆の生育経過の概要と特徴・特に夏季高温干ばつの影響の解析”の“補足資料”も参考ください。

野菜

1 葉根菜類の播種時、定植時の対策

(1)降雨後または潅がい施設を活用し、土壌が十分水分を含んだ状態で播種・定植を行います。または、播種直前に耕起し、表土が湿っているうちに播種します。マルチ栽培の場合は、降雨または潅水後、直ちにマルチ張りを行い、土壌表面からの水分の蒸散を防止します。
(2)畦づくりは、乾燥害を軽減するため平畦とし、生育中の湿害対策のため、排水溝を設置してください。
(3)ほうれんそうは播種後の鎮圧を十分に行い、下層土からの水分上昇を促します。また、遮光資材等を利用してハウス内気温の低下に努めます。
(4)しゅんぎくなど夏季干ばつで適期播種が不可能な場合には、セル成型育苗やペーパーポット育苗による移植栽培に切り替えるとともに、補植苗も準備します。

2 生育中の対策

(1)果菜類

通路への敷わら等により、土壌水分の保持に努めます。
潅水が可能な圃場では、マルチ内への潅水または畦間潅水を行います。潅水と合わせて液肥等を効果的に使用し追肥を行います。また、尻腐果の発生を防ぐためにカルシウム剤の葉面散布を行います。
摘葉を計画的に行い葉からの蒸散量を抑制するとともに、不良果の摘果や場合によっては果実の若どりを行い着果負担を軽減します。
また、施設果菜類では、サイドビニール及びツマ面を開放し、遮光資材(遮光幕、塗布剤等)を併用するなど、ハウス内気温の上昇を抑制しましょう。特に、植物体の生長点の位置は換気している高さより低くすることが重要です。

(2)露地葉根菜類

畑地潅がいなど潅水が可能な圃場ではスプリンクラー等による潅水を行います。
葉菜類の心腐れの発生を防ぐためにカルシウム剤の葉面散布を行います。

(3)共通

収穫物は速やかに涼しい場所に保管し、鮮度の低下を防ぎます。
雨が少なく乾燥が続くと、害虫の発生が多くなるので、ハダニ類、アザミウマ類、アブラムシ類等の発生状況に注意して、薬剤による防除を徹底します。

花き

りんどう

1 降雨が少なく、圃場が乾燥しています。通路に水を入れ、順調な生育を促します。特に本年定植苗は、極端に乾燥すると生育が著しく悪くなるので、マルチ内が乾燥しないように注意します。
2 雨が少なく乾燥が続くと害虫の発生が多くなるので、ハダニ類、アザミウマ類、アブラムシ類等の発生状況に注意して、薬剤散布による防除を徹底します。
3 乾燥した圃場から収穫した場合には、速やかに水揚げを行い葉のしおれ等を防ぎます。

小ぎく

1 圃場が乾燥している場合は、通路や株元に潅水を行い、生育の促進を図り草丈確保や、蕾の肥大促進を図ります。
2 雨が少なく乾燥が続くと、害虫の発生が多くなるので、ハダニ類、アザミウマ類、アブラムシ類等の発生状況に注意して、薬剤による防除を徹底します。
3 乾燥した圃場から収穫した場合には、速やかに水揚げを行い葉のしおれ等を防ぎます。

施設花き

1 雨が少なく乾燥が続くと害虫の発生が多くなるので、ハダニ類、アザミウマ類、アブラムシ類等の発生状況に注意して、薬剤散布による防除を徹底します。

果樹

果樹共通

今のところ、少雨による目立った影響は出ていませんが、今後も土壌乾燥が続く場合は下記のような対策を検討してください。
まとまった雨(10mm前後の降雨)が1週間以上ない場合には、潅水の実施を検討しましょう。特に幼木は根量が少なく、乾燥の影響を受けやすいため、優先して実施します。
また、養水分の競合を避けるため、樹冠下の草生は短く維持し、刈草やわら等でマルチします。畑地潅がい施設の整備が進められている地域では、適宜潅水を実施します。

ぶどう

ぶどうは、果樹の中でも比較的乾燥に強い樹種ですが、7月に極端な干ばつがあると果実肥大が抑制されてしまいますので、葉色や新梢の生育を観察し、適宜対策を講じましょう。
特に紅伊豆などの大粒種については、果実肥大の促進のため適度な水分が必要です。着色期近くなって、極端な土壌水分の変化があると裂果の原因となりますので、水回り(ベレーゾン)期までは、できるだけ安定した土壌水分の管理に努めます。
また、ハウスや被覆栽培では、日焼け症状の発生が心配されますので、ハウス上部やトンネル内が高温とならないよう、つま面やすそを開けて換気を図ります。

飼料作物

牧草

牧草の生育については、6月中旬の少雨の影響で2番草の再生もやや不良傾向となり、一部ではシロクローバが優占する圃場が散見されています。

1 追肥

2番草については、1番草刈取後40〜55日で刈取り、その直後に追肥を行いますが、収穫時に牧草の生育停滞が著しい場合は、刈取りを延期します。
施肥量は10a当たり窒素成分で3〜5kgとし、刈取り後できるだけ早く追肥を行いましょう。なお、高温小雨下での追肥は草地を痛めますので控えます。
尿素など窒素成分を中心とした肥培管理により、クローバなどマメ科牧草を抑制することが可能です。

2 刈取り

夏の強い日差しを受けると地面の温度が上昇し、根が高温障害を受けやすくなりますので、刈取り高さは10〜15cm程度の高刈りとし、根を直射日光から保護しましょう。

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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