農作物技術情報 号外 台風対策(平成23年9月20日発行)

ページ番号2001993  更新日 平成23年9月20日

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気象庁発表(9月20日10時現在)によると、台風15号が岩手県に最接近するのは9月22日と予想されています。
今後の気象情報に注意するとともに、農作物被害を避けるための防止対策を適切に行いましょう。

水稲

排水路等の点検整備と冠水後の圃場管理・刈り分けを万全に!

事前対策

(1)浸冠水が予想されるような水田では、あらかじめ水尻を開放し排水を促すようにします。
(2)特に、北上川流域等の水害の常襲地帯では、浸冠水した場合でも排水がスムースにできるよう、排水路等にゴミなどが詰まっていないか事前に点検・整備をしてください。

事後対策

(1)圃場管理
ア 倒伏した圃場で稲穂が水に浸かったままの状態にあると、穂発芽の原因となります。水尻等を再度点検して速やかに排水しましょう。
イ 冠水した圃場には、流木、空き缶等のゴミが流入していることが多く、収穫作業中にコンバイン等を損傷する恐れがあるので、事前にこれらのゴミを取り除いておきましょう。
(2)刈り取り作業
ア 倒伏したままの稲の稈は切れやすく、コンバインが詰まりやすくなるので、作業速度はできるだけ遅くしてください。
イ 穂発芽等により品質低下がみられる場合には、刈り分けを行いましょう。
ウ 高水分籾の状態で刈り取り作業を行うと、コンバインの詰まりや収穫ロスにつながります。やむを得ず高水分籾の状態で刈り取り作業を行う場合には以下に留意しましょう。
(ア) 作業速度は第1速とする。
(イ) こぎ胴の回転数は、規定範囲内で高めとする。
(ウ) 吸引ファン、唐箕ファンの回転数は通常より高くする。
(エ) 排塵量調節は、排塵口の穀粒損失を見ながら、可能な限り開く。
(オ) こぎ深さは出来るだけ浅くする。
(3) 乾燥調製
高水分籾を急激に乾燥すると、胴割れ粒の発生により品質の低下につながるので、二段乾燥により水分を調整してから仕上げ乾燥を行いましょう。
(4) 仕分け集荷
冠水により泥が付着した籾は仕分け集荷し、十分な品質チェックを行いましょう。
(5) 農作業安全
ア 浸・冠水した地域では、路肩がゆるんでいたり、ほ場や作業道等がぬかるみ、農業機械等が横転する危険があるので、作業時には十分に注意しましょう。
イ コンバインにワラ等が詰まった場合には、必ずエンジンを止めてからこれらを取り除くようにしましょう。
ウ 夕方の事故が多いので、休息をとりながら焦らず、慎重な作業を心がけましょう。

大豆

排水対策と病害防除を十分に!

事前対策

地表の排水を促進するため、周囲溝や排水口などを点検・補修し、速やかに排水できるようにします。

事後対策

圃場にたまった水は直ちに排水し、長時間滞水しないように努めます。倒伏した株は莢が地面に接しないよう株どうしを重ねて持ち上げておきましょう。

野菜

排水対策と施設の保守点検を十分に!

事前対策

(1)局地的な大雨に備え、排水溝の整備・点検を行いましょう。特に、圃場外からの浸入水を防止するため、圃場やハウスの周囲にあらかじめ排水溝を設けておきます。
(2)強風に備え露地圃場やハウス周囲に防風ネットを設置している場合、緩んでいるワイヤーや針金を張り直し、ネットの破れている部分は補修します。
(3)パイプハウスは、ハウスバンド(マイカー線)が切れていないか、緩んでいないかを点検するとともに、ビニールの破損があれば補修しておきます。筋交いなどの補強を実施して強風に備えます。
(4)風が強い場合は施設を閉め切ることになりますが、湿度が上昇して病害が発生しやすくなるので循環扇等で空気を撹拌して予防に努めます。
(5)強風で支柱が抜けたり、倒伏する恐れがありますので、畦の両端や畦の所々で支柱を補強し、支柱の倒伏・倒壊、株の倒伏を防ぎます。
(6)支柱・ネット等への茎葉の誘引状況を点検し、しっかり固定します。
(7)収穫可能なものはできるだけ事前に収穫を終えます。

事後対策

(1)排水対策等
圃場にたまった水はただちに排水し、長時間滞水しないように努めます。排水後、圃場作業が可能になったら畦間の中耕を行って土壌中に空気を送ります。
(2)殺菌剤散布・葉面散布
台風通過後は、冠水や多湿、茎葉の損傷等により病気にかかりやすくなっていますので、品目ごとの防除基準に従って殺菌剤を散布し、病害の発生を未然に防止します。茎葉に泥土が付着している場合は、動力噴霧機により水をかけて洗い流した後、殺菌剤を散布します。
強風などで傷んだ茎葉や果実は摘除して草勢回復を図ります。必要に応じて液肥を薄い倍率で施用または葉面散布し、草勢回復を促進します。

花き

排水対策と風による倒伏対策を十分に!

事前対策

(1)圃場に水路などからの水が入らないよう土嚢などで対策するとともに、排水路の点検を行い、排水しやすいよう整備してください。
(2)強風による折損や倒伏の恐れがあるので、支柱やネットの強度を確認し、補強してください。また、ネット上げが不十分な場合、茎上部が風で折れることがあるので、適宜引き上げてください。
(3)施設栽培では被覆資材の破損が拡大しないように、ビニールの小さな破れや傷の補修を行います。また、風が強い場合、施設を閉め切ることになりますが、湿度が上昇して灰色かび病などの病害が発生しやすくなるので循環扇等で空気を撹拌して予防に努めます。

事後対策

(1)台風の通過後、滞水している圃場は速やかに排水します。
(2)支柱、ネットの修復も行うとともに、倒れた茎は早めに起こし、曲がりを軽減するように努めます。
(3)風による茎葉の損傷や泥の跳ね上がりから病害の発生が助長されるので、速やかに殺菌剤を散布します。

果樹

りんご 防風対策と被害軽減対策をしっかりと!

事前対策

(1)「つがる」などの早生品種が残っている場合は収穫してください。「黄香」などの9月下旬に収穫する中生品種は、安全使用基準の収穫前日数を確認し、収穫が可能なものは収穫を進めましょう。
(2)防風ネットを設置している園地では、ネットの張りを点検し、緩んでいるワイヤーは張り直し、破れたネットは張り替えるなど十分に効果が現れるよう準備します。
(3)わい性樹は強風で倒状することがあるので、主幹を支柱に2〜3ヵ所結束します。長大な側枝を持つ樹形であれば、一層、バランスを崩しやすいので、丈夫な支柱で支え、はずれないよう縄で縛り固定します。
(4)高接ぎでは大切な更新枝を保護するよう添え木し、幼木も丈夫な支柱を立てておきます。
(5)降雨による表面水を速やかに排水できるよう、予め溝を切るなどして対処してください。

事後対策

(1)落果の処理
品種ごとに分けて拾い集め、傷の程度によって選別します。その内、農薬散布実績を確認し、農薬使用基準の収穫前日数が守られているもので、かつ生食が可能な果実はできるだけ生果として販売しましょう。
(2)倒木の処理
斜めに傾いたり、横になった樹体は、そのまま不用意に引き起こすと、残っていた根も切ることになるので、倒れた側からスコップで少し掘り下げるなど、注意深く戻します。
紫紋羽病の発生園ではリゾレックス水和剤またはフロンサイドSCを潅注処理し、蔓延を予防してください。また衰弱が予想される場合には、堆肥や土壌改良資材を根域に混和し埋め戻します。
なお、使用時期はリゾレックス水和剤が収穫60日前まで、フロンサイドSCが収穫45日前までです。各品種とも処理日と収穫開始可能日を必ず確認し、適正使用を厳守してください。
(3)病害予防
園地が冠水した場合や枝葉や幹に無数の傷が生じている場合、果実腐敗性の病害やふらん病など樹体病害の感染の恐れもあるので、特別散布で殺菌剤を散布し、感染を予防します。また、側枝や大きい結果母枝が折れた場合は傷口をなめらかに切り、塗布剤を塗ります。

ぶどう 棚の補強と排水対策をしっかりと!

(1)「紅伊豆」など収穫が可能な品種は収穫を進めましょう。
(2)防風施設の設置、見直しを行います。(りんごの項事前対策(2)に同じ)
(3)棚が倒壊しないよう、棚内部の力線に補助支柱を配し、周囲柱、隅柱を補強しておきます。
(4)降雨により土壌が軟弱化しアンカー等が浮き上がることを軽減するため、排水溝を切り、速やかに排水できるよう対処します。

畜産

飼料用トウモロコシ

倒伏・折損時は早期に収穫を!

収穫時の作業機の運行速度はやや控えめに!

トウモロコシの流通・利用は、自粛解除後に!

(1)黄熟期に到達している圃場が多いので、倒伏や折損した場合、できるだけ早期に収穫します。なお、原子力発電所事故後に作付けされた飼料用トウモロコシについては、現在市町村単位に実施されている放射性物質の検査で、放射性セシウムが暫定許容値(300 ベクレル/kg)以下の場合、自粛解除となり、利用と流通が可能となります。
(2)収穫にあたっては、ハーベスタの収穫方向をよく考え、作業機の運行速度を控えめにします。また、やや高刈りとするなど収穫時の土壌の混入を避けましょう。
(3)倒伏や折損の場合は、切断長が粗くなりやすいことから詰込み密度を確保するために、十分な踏圧と早期密封に努め、発酵品質低下を抑制しましょう。

注意!
この記事は発行年月日時点の内容のまま公開していますので、ご覧になった時点の法規制(農薬使用基準等)等に適合しなくなった内容を含む可能性がありますから、利用にあたってはご注意下さい。

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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