果樹の凍霜害対策 −農作物技術情報号外−(平成21年4月27日発行)

ページ番号2002030  更新日 平成21年4月27日

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  • 本日(27日)11時時点の盛岡地方気象台の天気予報によると、明朝(28日)〜30日にかけ朝の最低気温が0〜3℃と予想され、内陸部を中心に霜のおりるおそれがあります。
  • 現在県内のりんごの生育ステージは花蕾着色期前後で、低温に対して弱い時期であり、またおうとうについても開花直前の低温に弱い時期となっていますので、毎日の気象情報に注意し、凍霜害に対する事前対策の徹底を図りましょう。

りんご

1 生育ステージと凍霜害発生危険限

界温度 県内各地の「ふじ」の生育ステージ推移予測とその時期の凍霜害発生危険限界温度を示したのが表1で、現在県内全域で花雷着色期(花の蕾が赤く色づく時期)になっていると推察されます。
凍霜害発生温度や被害の様相は品種や部位、生育ステージ、低温遭遇時間などによって異なりますが、一般に展葉期を過ぎて開花期に近づく程凍霜害の危険性が高くなり、現在の生育ステージでは−2℃前後の低温に遭遇すると被害が発生する恐れがあります。
28〜30日の最低気温予想によると山沿いの園地では、この温度まで下がる可能性があります。
ほ場の温度経過に注意し、実施可能な事前対策を行いましょう。

表1

2 凍霜害対策

降霜は、無風、晴天の日で、降雨の1〜2日後は特に危険性が高く、さらに前日夕方18時の気温が6度以下の場合は要注意です。
但し、強い放射冷却現象が起きた場合は、前日夕方が10℃以上でも翌朝の最低気温が2℃以下になる場合もあるので、時期になったら毎日の気象情報に注意しましょう。

(1)凍霜害の防止対策

ア 霜溜まりの解消

傾斜地の場合、園地下方の障害物は、霜溜まりを作りやすいので除去します。
例えば、園地周囲の防風ネットが冷気の流れをせき止めるような場合は、巻き上げておくか除去します。
低温層の発生位置をできるだけ低くするため、マルチを除去し草刈り等で清耕状態にしておきます。

イ 燃焼法による防止

降霜は、数日間連続することが多いので、燃焼法で対応可能な園地では、燃料を十分準備しておきます。
例)市販の防霜資材、灯油、霜カット等
火点数は概ね40カ所/10a以上を確保し、風上側に多く配置します。
着火は気温が0℃になる直前に行いましょう。
なお福島県では、灯油にせん定枝チップを混用した燃焼法が利用されており、灯油をそのまま燃焼させたときと比較し黒煙の発煙量が少なく、燃焼時間も長くなり、点火性も良く、資材費等の面からも有効で、1.5mの高さで2〜4℃の気温上昇が期待できるとされておりますので参考にしてください(表2)。

表2

ウ 防霜ファンの準備

防霜ファンを設置している園地では、動作の確認、始動温度(2℃)の確認をしておきます。

エ 1輪摘花を控える

摘花作業は1花そう1花とする「1輪摘花」を避け、数花そうに1花そうを残す「株摘み」とします。

オ 散水氷結法

畑地かんがい施設が整備されている地域では、スプリンクラーかん水による散水氷結法が可能ですので、防霜ファン同様に始動温度の設定等準備しておきます。

(2)被害発生後の事後対策:被害が発生した場合は次の対策を講じてください

ア 被害状況の確認

凍霜害発生後、被害状況を把握するためにはナイフなどでつぼみや花を割り、内部の状況を肉眼で確認して下さい(図1参照)。確認する内容は、メシベ~胚珠の色が健全か否かです。

そして以下の点を確認し、被害の少ない品種、少ない部位を確実に結実できるように結実対策を実施しましょう。

(1)中心花と側花の被害程度(中心花及び側花は結実可能であるか)

(2)樹上部と目通り高さの被害程度(樹上部の花は結実可能であるか)

(3)傾斜した園地では、園地下部と上部の被害程度

(4)品種毎の被害程度(被害の少ない品種は何か)

図1

イ 人工授粉の徹底
被害を免れた花を確実に結実させるため、徹底して人工授粉を行います。
ウ 摘花・摘果
摘花作業は慎み、摘果剤の散布も控え、荒摘果は正常なガク立ちと果実肥大を確認後、過剰な着果を除く程度に行います。

おうとう

1 凍霜害発生時の事後対策について

おうとうは、りんごに比べ開花期が早いため、凍霜害の発生するリスクが高くなります。不幸にして被害が発生した場合は(図2)、りんごと同様に被害を免れた花へ人工授粉を実施し結実を確保します。なお、凍霜害によりめしべが褐変したり欠落した花でも、その花粉を授粉用に用いることができますが、授粉樹の被害が大きい場合、開花数が不足することがありますので、授粉用の花粉を購入するなどの準備を進めてください。

図2
図2 おうとうの凍霜害の事例めしべの褐変枯死(平成13年)

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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