農作物技術情報 第6号 畜産(令和元年8月29日発行)

ページ番号2001400  更新日 令和1年8月29日

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ヘッダ

  • 飼料用トウモロコシ 収穫機械やサイロの点検、資材の準備を早めに行いましょう。サイレージ調製は十分な踏圧と速やかな密封がポイントです。
  • 牧草 オーチャードグラスは秋の最終番草刈取り後に施肥を行います。
  • 乳用牛・肉用牛 暑さの後遺症による繁殖成績の低下を緩和します。

1 飼料用トウモロコシ

(1)刈取適期の判定方法

飼料用トウモロコシの収穫適期は、「黄熟期」です。これより早いと、でんぷんの蓄積が不十分であったり、栄養が排汁とともに流出したりします。また、黄熟期より遅れると、消化率が低下するほか、水分が下がりすぎて発酵品質が低下しやすくなります。
黄熟期の判定は、「ミルクライン」による方法が簡単です(図1)。
トウモロコシの雌穂(実)の中程を折って子実の断面を見ると、黄色い部分と乳白色の部分に分かれています。この境目を「ミルクライン」と言い、熟度が進むにつれて子実の外側から中心に向かって、黄色い部分が増えていきます。収穫適期である黄熟中期は、ミルクラインが子実の外側から40~50%に達した頃です。
なお、破砕処理を行う場合、消化率の改善が図られるので、収穫期を後にずらすことが可能です。

(2) 乾物率の確保

品種によって子実と茎葉の水分の抜けるスピードに差があることが報告されています。また、収穫前の天候によっても茎葉の水分が変化します。よって、より正確に乾物収量を設定するのであれば、収穫前に子実だけでなく茎葉も含めた状態で乾物率を測定することをおすすめします。最寄の普及センターにご相談下さい。

(3) サイレージ調製

ア 細断
(ア)詰め込み密度、反芻時間、子実の消化性の兼ね合いから、破砕処理を行わない場合で切断長10mm程度、破砕処理を行う場合は、切断長19mm、ローラー幅5mmに調整しましょう。黄熟後期以降は、消化率をあげるためローラー幅を2-3mmに調整します。
(イ)目的のサイズで細断できるよう、ハーベスタの刃の研磨や調整を行いましょう。
イ サイロの大きさ
二次発酵を防ぐために、下表の取り出し幅以上のサイレージを1日で取り出せるよう、サイレージの利用量に応じてサイロの大きさを決めましょう。

図1

表1、図2,3

ウ 詰め込み・踏圧
(ア)十分な踏圧を行うため、踏圧作業のペースに合わせて、詰め込み原料の収穫、運搬ペースを調整します。
(イ)土砂の混入を避けるため、運搬トラックはサイロの奥まで入らず、サイロの手前で詰め込み原料を下ろします。
フロントローダー等を用いて、サイロ全体に薄く広げ、速やかに踏圧を行います。
(ウ)サイロの壁沿いや角などの重機では踏圧できない場所は、人の足で踏圧して下さい。人が歩いても足跡が残らない程度まで十分に踏み込みましょう。
エ 密封
(ア)変敗の原因となる好気性微生物の増殖を抑えるためには、詰め込み作業後速やかにサイロビニールやスタックシートなどで密封し、風でシートが浮かないよう、廃タイヤ等でおもしをします。
(イ)詰め込み作業は1日で終了させるのが理想です。やむを得ず2日に渡る時は、1日目の作業終了時にギ酸を散布して仮被覆します。また、気密性のサイロではガスによる酸欠事故の恐れがありますので、十分に換気してから2日目の作業を始めてください。

写真1

(ウ)セキュアカバー(サイレージ保護シート)の紹介
細かく編みこまれた素材のためカラスによるいたずら防止や風にあおられることなく、サイレージの品質を守ることができます(防鳥ネットはひと冬越すと耐久性が低下してしまうので交換が必要)。ブルーシートは必要なく、スタックシートの上から直接覆います。
(エ)刈り遅れや霜にあたったトウモロコシは、水分が低く、二次発酵しやすくなります。プロピオン酸・ギ酸などの添加剤の使用を検討しましょう。
(オ)適度な休憩
16~17時はオペレーターが最も精神的、体力的にきつくなることです。天候の状況にもよりますが、ここで適度な休憩をいれればその後の仕事の効率がアップします。
(カ)踏圧の重要性
サイレージの出来の良し悪しは踏圧がきちんとできるかできないかにかかってきます。よって踏圧作業の担当者がもっとも権限をもち、時には運搬ダンプを待たせてでもしっかり踏圧を行います。

2 牧草

オーチャードグラス(以下、OG)は前年秋の窒素施肥が重要です。なぜならOGは、最終番草の刈り取り終了後の秋に、新旧分げつの世代交代をおこなうからです。
(1)オーチャードグラス主体草地の収量に寄与する分げつの大部分は、最終番草刈り取り後の秋に発生する新しい分げつに由来しており、この新しい分げつ発生量が翌年1年間分の茎数を決定します。
(2)よって、最終番草刈り取り後の秋に窒素施肥が重要です(2-4kg/10a程度)。なお、初霜の1ヶ月前の刈り取り危険帯時期の窒素施肥は牧草が越冬用の栄養を蓄えることを妨げるため、避けてください。
(3)例えば、OG1番草収量に対する窒素施肥は前年秋と翌年早春に分けて実施するほうが、いずれかに全量施肥するよりも収量が増加します。

図4

3 乳用牛・肉用牛

残暑による影響を緩和する対策を継続する(農作物技術情報第4、5号参照)とともに、夏の暑さの後遺症を抑え繁殖成績の低下を緩和させましょう。

(1)発情発見に全力を

ア 夏の暑さのため、いつもより発情が弱いことが考えられます。いつも以上に時間をとって丁寧に発情兆候を見つけましょう。夜、牛舎から引き上げる前と朝の搾乳前の発情の余韻が強く残っている時間帯は要チェックポイントです。
分娩前後の免疫機能はどんな牛でも必ず低下します。暑熱ストレスが強いときはなおさらです。抗酸化剤やビタミン剤を通常の3~5割増しで給与しましょう。

(2)子宮の速やかな回復を
ア 夏の暑熱ストレスは牛にかなり負担をかけます。普段よりも子宮の回復に時間がかかるものと考えましょう。よって、いつもよりも注意を払って、早めに回復状況を獣医師に診察してもらいましょう。

(3)飼養管理に工夫を
ア 下の表2を参考に牛群で特に暑熱ストレスの影響が大きい牛へ通常の飼養管理にひと工夫くわえてみましょう。

表2

フッタ

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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