農作物技術情報号外 台風対策(令和元年8月9日発行)

ページ番号2001398  更新日 令和1年8月9日

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現在、日本近海には複数の台風が発生してします。台風の進路によっては、岩手県へ接近する恐れもあります。今後の気象情報に注意するとともに、農作物被害を避けるための防止対策を適切に行いましょう。

人命第一の観点から、圃場の見回り等については、気象情報を十分に確認し、大雨や強風が治まるまでは行わないでください。また、大雨等が治まった後の見回りにおいても、増水した水路その他の危険な場所には近づかず、足下等、圃場周辺の安全に十分に注意し、転落、滑落事故に遭わないよう慎重に行動してください。

水稲

速やかな排水と冠水後の圃場管理を適切に!!

 事前対策
(1)現在、穂揃期を迎えているところが多く、浸水や冠水した場合、稔実歩合や登熟歩合の低下等の被害を受けやすい時期となっています。
(2)排水路等にゴミなどが詰まっていると浸水や冠水しやすくなりますので、土地改良区等と連携して排水路のゴミなどを取り除きましょう。
(3)浸水や冠水が予測されるような水田では、あらかじめ水尻を開放し、排水を促しましょう。

事後対策
(1)浸水や冠水した場合には、速やかに排水するように努めてください。特に、長時間冠水すると登熟に影響しますので、少しでも早く排水して水稲の葉先を出すことが重要となります。
(2)台風通過後は、稲体が水分を失いやすい状態にあります。8月中旬以降も高温傾向が続く予報のため(1ヶ月予報、8月8日仙台管区気象台発表)、田面を急激に干さないよう、間断かんがいで対応しましょう。
(3)冠水した水稲は、病害虫に対する抵抗力が低下しています。冠水した場合には、穂いもち予防粒剤を散布した圃場でも、退水後直ちに茎葉散布による薬剤防除を実施しましょう。上位葉に葉いもちの発生が見られる圃場は、特に注意が必要です。

畑作物

大豆排水対策と病害防除を十分に!

事前対策
(1)圃場表面の排水を促進するため周囲溝や排水口などを点検・補修し、速やかに排水できるようにします。

事後対策
(1)台風の通過後は再び周囲溝や排水口の点検・補修を行い、排水を促進しましょう。
(2)現在、開花期を迎えていますが、風雨によって葉や茎がもまれ、生じた傷口から様々な病原菌が侵入し、湿度が高まることによって紫斑病や細菌病等が発生しやすくなります。圃場の様子を観察し、適切な薬剤散布を行いましょう。

野菜

排水対策と施設の保守点検を十分に!

事前対策
(1)パイプハウスの点検・補強
ア被覆資材の破損箇所を補修します。
イパッカーやスプリング等固定部品を点検します。
ウハウスバンドの増し締めや増設により、被覆資材の締め付けを補強します。
エ 骨組みの強度の弱いところは、筋かいを入れて補強します。
オ 飛来物による被覆資材の損傷を防ぐため、ハウス周辺の片付けや清掃を行います。
カ 風が強まってきたら、入口、サイド、天窓、妻窓を完全に閉め、入口は飛ばされないようしっかりと固定します。
キ 施設を閉め切ることで、湿度が上昇して病害が発生しやすくなりますので、循環扇等で空気を撹拌して予防に努めます。
ク 換気扇が設置されている場合は、強風時にハウス内の気圧を下げるために稼動します。風が弱まったら直ちに停止します。
(2)大雨に備え、排水溝の整備・点検を行います。特に、圃場外からの侵入水を防止するため、圃場やハウスの周囲にあらかじめ排水溝を設けておきます。
(3)露地圃場やハウス周囲に防風ネットを設置している場合、緩んでいるワイヤーや針金を張り直し、ネットの破れている部分は補修します。
(4)露地圃場では強風で支柱が抜けたり、倒伏したりする恐れがありますので、畦の両端や畦の所々を補強し、支柱の倒伏・倒壊、株の倒伏を防ぎましょう。
(5)支柱・ネット等への茎や枝の誘引状況を点検し、しっかり固定します。また、品目ごとの農薬の使用基準に従って殺菌剤を予防散布します。特に、現在きゅうりで炭疽病の発生が広く見られており、降雨後の発生増加が懸念されますので、発病葉の摘葉と薬剤散布を行います。
(6)被害が予想される場合、収穫可能なものはできるだけ事前に収穫を終えます。

事後対策
(1)排水対策等
圃場にたまった水はただちに排水し、長時間滞水しないように努めます。排水後、圃場作業が可能になったら畦間の中耕を行って土壌中に空気を送り、根の活性化に努めます。
(2)殺菌剤散布・葉面散布
台風通過後は、冠水や多湿、茎葉の損傷等により病気にかかりやすくなっていますので、品目ごとの農薬の使用基準に従って殺菌剤を散布し、病害の発生を未然に防止します。
茎葉に泥土が付着している場合は、動力噴霧機により水をかけて洗い流した後、殺菌剤を散布します。
強風等で傷んだ茎葉や果実を摘除するとともに、必要に応じて液肥を薄い倍率で施用または葉面散布し、草勢回復を促進します。

花き

写真:横木の設置例。畦の両端だけではなく、内側にも設置すると、支柱・ネットが補強される。

排水対策と風による倒伏対策を十分に!

事前対策
(1)圃場への流入水対策
用水路の点検を行い、ごみの除去や壊れた箇所の補修を行います。増水によっていつも水が溢れる場所は、土嚢等(肥料袋に土を入れたもので代用可能)で補強します。
(2)支柱・ネットの補強
支柱やネットの強度を点検、補強します。ぐらつく支柱は打ち直すか打ち込み、風の影響を受けやすい圃場は支柱を増設します。ネットは適正な位置に調整し、たるみがある場合はネットの両サイドにロープを入れて補強します。また、横木の設置、増設は、支柱・ネットの補強に有効です。
(3)圃場の排水対策
水のたまりやすい場所は、事前に排水溝を設置します。併せて、排水路を点検し、上述した用水路と同様に対策を講じます。
(4)パイプハウスの点検・補強
野菜の項と共通。

事後対策
(1)株の立て起こし、支柱・ネットの修復
強風によって株が倒伏・傾倒した場合は、時間が経過するほど茎の曲がりが戻りにくくなるので、風が弱まったら直ちに株を立て起こします。併せて、支柱・ネットを修復します。
(2)圃場の排水
圃場が冠水した場合は、特にキク類で萎ちょう症状(水焼け)が発生しやすくなるので、速やかに圃場外へ排出します。
(3)病害対策
風による茎葉の折損や泥の跳ね上がりによって病害の発生が助長されるので、殺菌剤を散布します。この際、株に付着した泥を洗い落とすために、動噴の圧力を高めにして十分量を散布します。併せて、施設栽培では換気を徹底し、施設内の湿度の低下を図ります。
(4)被害株及び茎葉の除去
出荷不能となった株や折損した茎葉は、圃場外に持ち出して処分します。

果樹

りんご 暴風対策と被害軽減対策をしっかりと!

事前対策
(1)極早生品種は、果実品質と散布した農薬の安全使用基準(収穫前日数)を確認し、収穫が可能なものは、農作業安全に留意しながら、速やかに収穫を進めましょう。
(2)防風ネットを設置している園地では、ネットの張りを点検し、緩んでいるワイヤーは張り直し、破れたネットは張り替えるなど十分に効果が現れるよう準備します。
(3)わい性樹は強風で倒伏することがあるので、主幹を支柱に2~3ヵ所結束します。長大な側枝を持つ樹形であれば、一層、バランスを崩しやすいので、丈夫な支柱で支え、はずれないよう縄で縛り固定します。
(4)高接ぎ樹では大切な更新枝を保護するよう添え木し、幼木も丈夫な支柱を立てておきます。
(5)降雨による表面水を速やかに排水できるよう、予め排水溝を切るなど対処してください。

事後対策
(1)倒木の処理
斜めに傾いたり、横になった樹体の立て直しは、できるだけ早く行います。ただし、そのまま不用意に引き起こすと、残っていた根も切ることがあるので、倒れた側からスコップで少し掘り下げるなど、注意深く戻します。また、すぐに起せない場合は、露出した根に土をかけるなどして乾かないようにしましょう。
(2)病害予防
園地が冠水した場合や、枝葉や幹に無数の傷が生じている場合には、果実腐敗性の病害やふらん病などの樹体病害感染の恐れがあります。このような場合は、定期防除を早めるか、特別散布で殺菌剤を全面散布し、感染を予防します。また、側枝や大きい結果母枝が折れた場合には、傷口をなめらかに切り、塗布剤を塗布します。

ぶどう 棚の補強と排水対策を十分に!
(1)防風施設の設置、見直しを行います。(りんごの項事前対策(2)に同じ)
(2)棚が倒壊しないよう、棚内部の力線に補助支柱を配し、周囲柱、隅柱を補強しておきます。
また、雨よけハウス等は、ハウスやフィルムが飛ばされないよう、ハウスバンドやフィルム留め具等の点検を行い、ビニールの破損があれば補修しておきます。
(3)降雨により土壌が軟弱化しアンカー等が浮き上がることを軽減するため、排水溝を切り、速やかに排水できるよう対処します。

畜産

飼料畑の排水対策の徹底、停電時対応の確認

事前対策
(1)飼料作物を作付している圃場では、排水溝の点検を行い雨水の排水を促します。特に、とうもろこしは湿害に弱いので排水対策を徹底します。
(2)停電により、搾乳が出来ない場合を想定して、発電機の準備や使用方法を確認しておきます。また、可能であれば貯水タンクに水を確保しておきます。
(3)強風により畜舎や施設の破損が懸念されるので、畜舎周辺を点検し、必要であれば修繕や補強を行います。また、畜舎内に雨水が入らないよう排水溝の点検等を行います。

事後対策
(1)飼料作物を作付している圃場で、滞水している場合は速やかに排水するよう努めます。飼料作物の収穫時には、飛来物が混入しないように注意します。
(2)強風により、とうもろこしの折損や倒伏が懸念されますが、子実の登熟初期までに倒伏した個体は、折損していなければ立ち直る場合があるので、そのままの状態にしておきます(手で直すと茎・根などが折れることが多く、この場合の被害は逆に多くなります)。
(3)(2)の倒伏したとうもろこしの収穫は、ハーベスタの収穫方向をよく考え、作業機の運行速度を控えめにし、高刈りとするなど収穫時の土壌などの混入を避けます。また、切断長が粗くなりやすいことから詰込み密度を確保するために、十分な踏圧と早期密封に努め、発酵品質の低下を防ぎます。
(4)折損等の被害が著しい場合は、圃場準備を急ぎ、エンバク(年内収穫可能)やイタリアンライグラス、ライ麦(翌春収穫可能)を播種して、自給飼料確保を図ります。
(5)畜舎内への浸水や雨漏りがあった場合、高温多湿となり不衛生になりますので、台風通過後は畜舎やその周辺の排水を徹底し、敷料交換、排せつ物の除去、空気の入れ替え等により乾燥を図り、消毒を実施します。

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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