農作物技術情報 第4号 水稲(令和元年6月27日発行)

ページ番号2001361  更新日 令和1年6月27日

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  • 6月25日までの気象経過:気温・日照時間はともに、6月第1半旬まで平年を大きく上回りましたが、第2半旬以降は平年並み~やや低く推移しています。
  • 6月25日現在の生育状況(水稲生育診断予察圃):県全体の生育は、草丈が37.6cm(平年差+0.6cm)でほぼ平年並み、茎数は475本/平方メートル(平年比112%)と平年を上回り、葉色値も40.7(平年差+1.5)とやや高くなっています。葉数は平年より0.2葉進んでいます。
  • 多くのほ場では既に中干しの適期を迎えています。目標茎数(20~30本/株)を確保したら速やかに中干しを行いましょう。
  • 向こう1ヶ月間は曇りや雨の日が多く、気温も平年並~低い予報となっています。今後発令される気象予報に注意し、いもち病の発生動向に注意するとともに、低温が予想される場合は深水管理などの冷害対策を確実に実施しましょう。

1 生育概況

6月25日に各農業改良普及センターが実施した水稲生育診断予察圃の一斉調査結果によると、県全体の平均では、草丈37.6センチメートル(平年差+0.6cm)、茎数は475本/平方メートル(平年比112%)と平年を上回り、葉色値(SPAD-502)も40.7(平年差+1.5)と、やや高くなっています。葉数は8.4葉で平年より0.2葉進んでいます。

表1,2

2 6月下旬からの水管理

(1)気象予報

1か月予報(令和元年6月20日発表,仙台管区気象台)によると、向こう1か月は平年に比べ曇りや雨の日が多い見込みであり、日照時間は平年並か少ない確率がともに40%です。気温は、1週目が平年より高い確率が50%ですが、2~4週目は各週とも低い確率が40%と予報されています。

(2)中干し(幼穂形成期より前の時期:6月下旬~7月上旬)

  • 中干しは、根腐れを抑えて根の伸長を促すとともに、無効分げつを抑制する効果があります。
  • 目標となる茎数(株あたり概ね20~30本)に達したところでは、速やかに中干しを行いましょう。落水は7~10日程度とし、田面に小さな亀裂が生じ、軽く踏んで足跡がつくまでとします(図1)。
  • 期間中、落水を促し中干しの効果を高めるため、溝切りをおこないましょう(図2)。
  • 中干し直後の水管理は間断かんがいを基本とし、その後、下記(3)前歴深水かんがいに備えて常時湛水に移行します。

図1,2

(3)前歴深水かんがい(幼穂形成期前後:出穂の約23日前)

前歴深水かんがいは、低温から幼穂を保護して障害不稔を軽減できる技術です。幼穂形成期の数日前から徐々に水位をあげ、幼穂形成期(図3)には4~6cmの深水にしましょう。

(4)深水かんがい(減数分裂期前後:出穂の約11日前)

幼穂形成期のあと、減数分裂期(図4)に低温が予想される場合はさらに水位を上げ、10センチメートル以上の水深を確保します。
特に17℃以下の強い低温が見込まれる場合は、15センチメートル以上の深水とし、幼穂の保温につとめてください。なお、平年並~高めの気温が予想されるときは間断かんがいにします。

図3,4,5

3 追肥

今後の追肥判断のためにも、葉色の変化に注意が必要です。良食味米生産の観点から、品種、気象・生育状況をみきわめて、適期に適量を施用しましょう。詳しくは各地域で発行される技術情報等を参考にしてください。

4 いもち病防除

(1)葉いもち防除

本年は葉色値が生育量に比してやや高めのところが多く、また、向こう1ヶ月間は曇りや雨の日が多く、気温も平年並~低い予報となっているため、葉いもちの発生に注意が必要です。
いもち病は、気象条件により急激に広まるので、圃場の観察と早期防除を徹底してください。
圃場をよく観察し、発生を確認したら、葉いもち予防粒剤(箱施用剤、水面・投げ込み施用剤)施用の有無にかかわらず、直ちに茎葉散布を実施しましょう。

図6

(2)穂いもち予防粒剤を散布する場合の留意点

ア 水稲の生育状況に注意する(散布時期を逸しない)。
イ 圃場をよく見回り、葉いもちが発生していたら直ちに茎葉散布してから粒剤施用する。

5 斑点米カメムシ類の防除対策

(1)防除のポイント

病害虫防除所が実施した6月中旬の調査では、本年も畦畔や転作牧草のイネ科植物で斑点米カメムシ類が確認されています。斑点米カメムシ類の増殖源となる畦畔等のイネ科植物の管理を徹底してください。
なお、養蜂活動が行われている地域で殺虫剤を散布する計画がある場合は、養蜂家と協議の上、散布時期を事前に通知するなど、ミツバチへの危害防止に努めてください。

(2)耕種的な防除対策

ア 斑点米カメムシ類は、畦畔や転作牧草等のイネ科植物が発生源となるため、水稲出穂の15~10日前までに地域一斉に草刈りを実施しましょう。
イ 水田内の雑草も斑点米カメムシ類の増殖源となります。ノビエ・ホタルイ類・シズイが多発している圃場は、中・後期除草剤の使用等により、増殖源となる雑草の除去に努めましょう。

図7,8

6 直播栽培の本田管理

(1)生育中期の水管理のポイント(図9)

  • 現在、県内の直播栽培の多くは鉄コーティング湛水直播方式ですが、本方式は土壌 表面に播種するため茎数過剰となり易く、また倒伏しやすい弱点があります。
  • 本年は苗立ち期間(5月中旬~下旬)が好天にめぐまれたことから苗立ち本数が多く、茎数過剰が懸念されるほ場もみられます。移植栽培と同様に、ほ場をよく確認し、目標となる茎数(株あたり概ね20~30本)に達したら、直ちに「中干し」を行いましょう。
  • また、倒伏に弱い品種(ひとめぼれ・あきたこまち等)で、穂ばらみ期に低温の恐れが無い場合は、「穂ばらみ期落水」で田面土壌硬度を高め、倒伏を軽減する対策(図10)も検討しましょう。

図9,10

(2)病害虫防除

茎葉散布による防除が基本となります。散布する薬剤の選択は、岩手県農作物病害虫・雑草防除指針(移植栽培)を参考としますが、飼料用米や稲発酵粗飼料(稲WCS)では農薬の使用に制限がありますので、農業改良普及センター等に確認のうえ使用してください。
ア いもち病防除
(ア)葉いもち

コーティング時、または播種同時に殺菌剤を使用した場合であっても、7月20日頃(初発が早い場合や多発年は7月15日頃)から本田を巡回し、発生が無いか確認をしましょう。とくに「ひとめぼれ」などの晩生品種では穂いもち予防剤の散布適期前に発生する場合があるので注意が必要です。発生時は、移植栽培の防除体系に準じて速やかに茎葉散布を実施してください。
(イ)穂いもち
予防粒剤の水面施用(出穂20~10日前頃)または出穂直前と穂揃い期の2回の茎葉散布を基本とします。
イ イネツトムシ(イチモンジセセリ幼虫)
飛来性の害虫で、例年の発生は少ないですが、生育後半に葉色が濃い場合や、出穂が遅いほ場では大きな被害を受ける場合があります(図11)。こまめに観察し被害に備えましょう。
ウ 斑点米カメムシ類
移植栽培と同様に防除しましょう。

図11

(3)追肥

  • 耐倒伏性が弱い「ひとめぼれ」「あきたこまち」「いわてっこ」等では窒素成分量は移植栽培の基準よりやや控えめとし、様子を見ながら加減しましょう。
  • 追肥については、平成28年度岩手県農業研究センター試験研究成果書『「ひとめぼれ」の鉄コーティング湛水直播による良質米安定生産のための生育指標と栽培法』『「つぶゆたか」の鉄コーティング湛水直播による飼料用米安定生産のための生育指標と栽培法』を参考としてください。
  • なお、明らかに生育過剰と判断される場合は、「穂ばらみ期落水」又は倒伏軽減剤の使用も検討しましょう。

図12

フッタ

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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