農作物技術情報 第3号 水稲(令和元年5月30日発行)

ページ番号2001307  更新日 令和1年5月30日

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  • 好天時は浅水管理で水温・地温を高めて分げつの発生を促しましょう。
  • 目標とする茎数を確保したら、すみやかに中干しを実施しましょう。
  • 取置苗はいもち病の伝染源になるので、直ちに処分しましょう。
  • 斑点米カメムシ類のふ化盛期に合わせて地域一斉の草刈を実施しましょう。
  • 除草剤は適期を逃さず処理しましょう。

1 生育概況

本年の育苗期間は、寒暖の変化が大きく、前半の低温の影響で草丈が短い苗もみられましたが、苗質(充実度)は平年並に良好となりました(表1)。(2)田植えは、各地で平年並に盛期となり、概ね適期内に終了する見込みです(表2)。5月は全般に気温が高く好天に恵まれたことから、活着は良好であり、各地の生育も順調に進んでいます。

表1,2

2 水管理(分げつの促進と中干しの実施)

(1)分げつの促進

ア 晴れ~曇天の日、気温の高い日は田面が露出しない程度の浅水 (3~5cm ) とし、分げつの発生を促します(図1上)。
イ 最高気温が概ね15℃以下の低温時には、葉先が出る程度の深水とします(図1下)。特に田植え後間もないところでは、活着や初期生育を促すようきめ細かな水管理をしてください。
ウ 冷水のかかる水田は、アゼ波などを利用して積極的に水温の上昇をはかりましょう(図2)。
エ 以下のような場合は、稲を健全に保つため、水の入れ替えを行いましょう。

  • 藻類が多発する水田
  • 水持ちが良すぎる場合(1回の入水で7日以上持つ水田)
  • 生わら施用田など、早期に還元化が進んでガスが発生する水田(表3)

図1,2

表3

(2)中干しの実施

ア 目標とする茎数が確保されたら中干しを行いましょう。中干しは土壌の還元化を和らげ、根の伸長促進と健全化をはかり、無効分げつの発生を抑制します。
イ 県内の主要うるち品種(ひとめぼれ、あきたこまち、いわてっこ等)の目標茎数は、6月下旬に400~500 本/平方メートル程度(株あたり茎数20~30本程度)を目安とします。
ウ 中干し期間は7~10日程度とし、田面に小さな亀裂が生じ田面を軽く踏んで足跡がつく程度を目安とします。
エ 潅水や排水を容易に行うため、中干しとあわせて作溝を行うとより効果的です。
オ 中干し終了直後は間断潅漑とし、その後常時湛水とします。以後は低温でない限り、幼穂形成期までは間断潅漑とします。

3 効果的な除草剤の使用

ノビエやホタルイなどの水田雑草は、好天の影響で平年よりもやや早い発生となっています。
除草剤を散布する場合は、効果を十分に発揮させるため、下記の点に注意しましょう。

(1)散布時期

雑草の種類や葉齢を良く確認して、散布適期内の早い時期に散布しましょう。
なお、除草剤ラベルに記載された散布晩限のノビエ葉齢(例:~ノビエ2.5葉まで)は、平均葉齢でなく「最大葉齢」ですので、適期を逸しないように散布しましょう(図3、写真1)。

(2)散布後の水管理

十分な湛水深を確保してから除草剤を処理しましょう。散布後3~4日間は水を動かさず、7日間は落水・かけ流しをしない管理としてください(この間、田面を露出させないこと)。

(3)使用する農薬のラベルを必ず確認して、使用基準を遵守しましょう。

図3、写真1

4 病害虫防除対策

(1)葉いもち:補植用取置苗の早期処分対策

ア 水田内や畦畔際に放置された取置苗は、いもち病の伝染源になる恐れがありますので、直ちに処分してください。
取置苗をよく観察し、葉いもち病の発生を確認したときは、水田内の葉いもち病発生状況を観察しましょう。
イ 葉いもち予防の水面施用粒剤施用時期は6月20日~25日が適期です(移植時にいもち病予防箱粒剤を施用した場合は 必要ありません)。例年、葉いもちが早期に発生する地域ではこれより7日程度早めに施用しましょう。
ウ 葉いもち予防水面施用粒剤を施用する前や箱施用剤を使用した場合でも、圃場をよく観察して葉いもちの発生が見られた場合には、直ちに茎葉散布を行いましょう。
エ QoI 剤(嵐、オリブライト、アミスターエイト)は耐性菌の発生リスクが高く、すでに隣県の宮城県で耐性菌の発生が確認されています(平成27年2月18日,宮城県病害虫防除所)。嵐剤を箱施用した場合は、オリブライト剤、アミスターエイト剤の本田使用は避けましょう。防除効果の低下が疑われる場合は、病害虫防除所又は農業改良普及センターに連絡ください。

(2)斑点米カメムシ:発生源対策

ア 斑点米発生の原因となるアカスジカスミカメは、イタリアンライグラス等のイネ科牧草や雑草の穂などで繁殖します(写真3、4)。
イ アカスジカスミカメは卵で越冬しますが、越冬卵のふ化(卵がかえること)盛期の前後5日間に畦畔等の草刈りを行うと、越冬世代幼虫の密度低減に効果的です(平成19年度研究成果)。
ウ アカスジカスミカメ越冬世代幼虫のふ化盛期は、平年より早まっています。ふ化盛期の予測日(表4)を目安に地域全体で草刈りを行い、アカスジカスミカメの密度低減に努めましょう。

写真2

表4

写真3,4

5 直播栽培(鉄コーティング種子による湛水表面播種栽培)の本田管理

(1)本年の出芽状況と本田管理のポイント

ア 本年は、播種後出芽までの気温が平年より高く経過しており、各地とも苗立ちは良好です。
イ 苗立ち後、一発処理除草剤を散布する場合は、稲とノビエの葉齢に注意し、適期を逸しないように散布しましょう(農作物技術情報第1号参照)。
ウ 本田管理は、基本的には移植栽培に準じて行います。なお、出穂は移植栽培に比べ7~10日程度遅くなることから、防除や追肥の計画は熟期差を考慮して見通しをたてましょう。
エ 下位節からも分げつが発生するため、茎数が過剰になりやすく、倒伏の一因になるので、移植栽培より強めの中干しを実施し、地耐力の確保に努めましょう。

(2)中干し

有効茎(穂になる分げつ)が確保されたら、中干しを確実に実施し、地耐力の確保に努めましょう。

(3)病害虫防除

ア 葉いもち病防除
(ア) 種子処理(ルーチンFS)や播種時土中施用による防除が基本になります。移植やカルパー土中播種に比べて生育ステージが遅いので、7月20日頃(初発が早い場合や多発年は7月15日頃)から本田を巡回し、発生が目立つ場合は直ちに茎葉散布を行います。
(イ)種子処理や土中施用による防除を行っていない場合は、茎葉散布による防除が基本となります。イネをよく観察して、葉いもち病の発生状況を見逃さないようにしましょう。なお、予防粒剤の水面施用も可能ですが、落水管理により水持ちが低下している場合は効果が劣る場合があります。
(ウ)散布する薬剤の選択は、岩手県農作物病害虫・雑草防除指針(移植栽培)を参考としますが、飼料用米や稲発酵粗飼料(稲WCS)では農薬の使用に制限がありますので、農業改良普及センター等に確認のうえ使用してください。
イ 初期害虫防除(イネミズゾウムシ、イネドロオイムシ)
(ア)種子処理(キラップシードFS)や土中施用により、防除できます。
(イ)種子処理や土中施用による防除を行っていない場合は、移植栽培では大きな被害に至らない初期害虫ですが、直播栽培では特に出芽直後の食害が大きく影響する場合があります。圃場内をよく観察し、発生が見られる場合は粒剤の水面施用や茎葉散布を行いましょう。
(ウ)散布する薬剤の選択は、岩手県農作物病害虫・雑草防除指針(移植栽培)を参考としますが、飼料用米や稲発酵粗飼料(稲WCS)では農薬の使用に制限がありますので、農業改良普及センター等に確認のうえ使用してください。
ウ 穂いもち病防除
出穂直前と穂揃い期の2回の茎葉散布を基本とします。

図

フッタ

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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