農作物技術情報 第9号 果樹(令和5年11月30日発行)

ページ番号2010363  更新日 令和5年11月30日

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タイトル

  • りんごの貯蔵販売時には、果実の軟化・果肉障害に注意しましょう。
  • 獣害、凍寒害、翌春の凍霜害対策に努めましょう。

1 貯蔵りんごの管理

今年の「ふじ」は、糖度は平年並から高めですが、蜜入りは遅れ気味で、果実ごとのバラつきが見られます。また、デンプン指数は平年よりやや低く、硬度は平年並からやや低めであることから、貯蔵中の軟化が懸念されます。貯蔵中は、随時、果肉の状態を確認し、硬度の低下や果肉の褐変など障害が発生していない果実を販売してください。
なお、「シナノゴールド」は、園地によっては収穫前落果が発生し、落果防止剤を使用しているため、例年より軟化が懸念されます。また、通常年であっても、酸抜けを待って遅めに収穫した果実では、4~5カ月貯蔵すると果肉が褐変することがあります。今年は特に果肉の状況等を確認してから、販売してください。

2 獣害対策

(1)野ネズミ対策
苗木、若樹(特にJM7台木利用樹)は野ネズミの食害を受けやすいため、根雪前に対策を実施します。
園地内に放置された果実は、野ネズミの餌となるため取り除き、各種忌避剤、殺そ剤による対策も合わせて実施します。
(2)電気柵の点検
近年、ニホンジカによる花芽、樹皮などの食害(写真1)を軽減するために、各地でフェンシングワイヤーを利用した電気柵の導入が進んでいます(写真2)。
導入した園地では、根雪前に草や園地周辺の樹木が電線に接触していないか、支柱やガイシに破損はないか、十分な電圧は確保されているか等を点検し、冬季の被害に備えます。
(3)廃棄果実の処分
山選果等で発生した廃棄果実を園地内外にそのまま放置すると、ハクビシンや野ネズミの増殖、クマによる春先の人的被害などを助長することがあります。
廃棄果実は、地中深く埋めるか破砕するなどの処理を実施し、獣害が発生しにくい園地環境をつくります。

写真12

3 樹体の凍寒害防止

写真3

りんごなどの落葉果樹は、落葉後一定期間を低温で経過して休眠に入り、耐凍性を確保します。しかし、近年は冬季の気温が高めに経過するため樹体の休眠は浅く、その結果耐凍性が徐々に低下して、その後の低温遭遇で凍寒害が発生する場合があります。
この凍寒害は、特に若樹(定植年~結実初期、3~4年生)で発生しやすく、また、結実量が多く衰弱した樹や水はけの悪い圃場、肥料が遅くまで効いて新梢の止まりの悪い樹では、樹齢が進んでも凍寒害が出ることがあります。
発生が心配される園地では、若木を中心に地際部から高さ50cm 程度まで、ホワイトンパウダー(写真3)や水性ペンキ(白色)を塗布するか、わらを巻くなどして表面温度の上昇を抑制し、適正な休眠誘導を図って被害の軽減を図ります。

4 令和6年度に向けた凍霜害対策

令和5年度の凍霜被害は、3月から4月中旬までの高温により展葉や開花までの生育が14 日早まったところに、4月下旬の寒気による低温や放射冷却現象による降霜によって発生しました。このため、特に3月の平均気温が平年を上回る場合には、凍霜害回避に向けた早めの準備が必要です。

(1)燃焼法
燃焼法は一定コスト(30,000 円/10a 程度)がかかるため、被害が多かった圃場では低温になりやすい場所など、地形も考慮して設置するなどの配慮が必要です。
(2)防霜ファンや散水氷結法に係る施設の点検整備                                         生育が早まった場合でも稼働できるよう点検整備を早めに行います。
畑かんがいを利用して散水氷結法を行っている地域は、4月から利用できるよう関係機関を含めた検討を行います。
(3)果樹共済、収入保険などへの加入
気象災害は技術的な対策だけでは防ぐことは難しいため、減収を補填する果樹共済や価格低下などの収入の減少を補填する収入保険への加入を検討します。

5 土壌診断のすすめ

近年、高温乾燥やゲリラ豪雨などの気象変動により、土壌の乾燥・湿潤の変動が大きく、樹の衰弱した事例が多く観察されます。
特に、土壌が乾燥している場合は、土壌に十分な養分があっても吸収できず、樹勢が弱ることがあります。この場合、必要以上に施肥を行うと逆に樹勢が強くなったり、土壌養分バランスが崩れて養分欠乏症が発生することがあります。
ここ数年、土壌診断を実施していない園地では、土壌診断を行って適正に施肥してください。

最後

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