農作物技術情報　第8号　野菜（令和5年10月26日発行）

• 共通　栽培跡地では、来年の安定生産に向けた作業（残さの処分、資材消毒、土づくり）を行いましょう。
• 施設野菜　冬期は省エネ対策技術を積極的に実施しましょう。
• 寒じめほうれんそう　適切なハウスの開閉により株の充実を図り、適期に出荷しましょう。
• 促成アスパラガス　低温遭遇時間を考慮して適期に掘り取り、収量を確保しましょう 。

1 生育概況

（1） 果菜類の収穫は終盤となり、出荷量は少なくなっています。
（2）雨よけほうれんそうの生育は概ね良好です。病害虫は、ホウレンソウケナガコナダニの被害が見られます。寒じめほうれんそうの播種は概ね終了しました。
（3）ねぎは順次出荷されています。病害虫は、葉枯病（黄色斑紋病斑）、黒斑病等の発生が一部地域で例年より多く見られます。また、ネギハモグリバエ、ネギアザミウマの発生が多く見られます。

2 技術対策

（1）栽培跡地の整理と来年に向けた準備
栽培終了後の作物残さは、翌年の病害虫発生源にならないよう適切に処分します。

• きゅうりでは、褐斑病が毎年多発する圃場は、支柱や潅水チューブなどの資材に付着した分生子が翌年の発生源になります。残さの後片づけと資材消毒を行い、翌年の発生源を排除します。
• ピーマンでは、根の残さで土壌伝染性ウイルスのPMMoV が越年します。残さのすき込みは土壌中のウイルス密度を高め、抵抗性打破の危険性が高まるので絶対に避けてください。
• なすでは、半身萎凋病の罹病葉に形成された菌核が次年度の発生源となりますので、発生圃場では葉を確実に圃場から持ち出し処分してください。
• 来年の安定生産に向けた土づくりを実践してください（図1）。

（2）野菜畑での施肥管理
県内の野菜畑では、可給態リン酸や交換性カリウムなどが土壌改良目標値を満たした圃場が多く、無施用でも良い水準まで蓄積している事例もあります。
また、カリウム過剰はカルシウムの吸収を阻害し、尻腐果発生の一因にもなります。

• 土壌診断を受診し、適正施肥に努めてください。
• 土壌改良目標値を満たしている圃場では、「土壌から持ち出された肥料成分を施肥で補給する」補給型施肥基準を適用し土壌養分の蓄積を防ぎます。
• 土壌養分が過剰な場合には、減肥基準に基づいた適正な施肥管理に努めてください（図2）。各品目の補給型施肥基準や減肥基準の詳細については、各地域の農業改良普及センターにお問い合わせください。

（3）施設野菜
燃油費や資材費などを含めた冬期における施設野菜の生産コストの増加は、農家経営に大きく影響します。最小限の燃油で高い加温効果が得られるよう、省エネルギー対策を積極的に実施します。
具体的には、
ア 暖房装置の点検・整備、清掃による暖房効率の低下防止
イ 温室の被覆資材の隙間からの放熱防止
ウ 内張資材などの導入による保温性の向上や温室内の温度ムラの解消
エ 作物・品種の特性をふまえた生育ステージ毎の適正な温度管理の実施
などが挙げられます。
（4）寒じめほうれんそう

• ハウスの開閉による適切な温度管理を行い、出荷できる葉長まで生育させます。
• ほぼ出荷できる葉長になった時点で、ハウスの入口やサイドビニールを開け、1週間程度5℃以下の低温に連続して遭遇させる「寒じめ」を行い、糖度の上昇を図ります。本県では、葉柄のBrix 値8％以上を出荷基準としており、この糖度が得られる12 月以降に出荷します。

（5）促成アスパラガス

• 地上部の刈り取りは茎葉が十分に黄化してから行います。
• 十分に低温遭遇した株を利用することで、収量が増加する（図3）ので、5℃以下の積算遭遇時間90 時間以上を目安として、掘り取り時期を決定します（表1）。
• 伏せ込み準備は、ハウス内に温床を設置（図4）し、保温対策を万全にします。
• 伏せ込み後1週間～10 日程度は無加温とし、徐々に地温を16～18℃まで上げるようにします。
• 萌芽開始後は、地温15～16℃、トンネル内気温日中25℃以下、夜間10℃以上を目標にします。