農作物技術情報 第7号 畑作物(令和5年9月28日発行)

ページ番号2007308  更新日 令和5年9月28日

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タイトル

  • 大豆 これまで全般に気温が高く日照時間も多かったことから、生育、子実肥大はともに良好です。ただし、黄化・落葉は昨年よりやや遅れています。今後は、成熟状況の確認、青立ち株や雑草の抜き取り、圃場排水の徹底など、収穫作業に向けた準備を進めましょう。
  • 小麦 小麦の播種適期を迎えています。適期を逃さず作業を行い、生育量の確保に努めましょう。条件が整わず播種が遅れた圃場では、播種量を増やし、目標株立数の確保に努めましょう。

大豆

1 生育概況

8月以降、気温がかなり高く経過したほか、日照時間も多かったことから生育量は平年を上回り、子実肥大は良好です。ただし、黄化・落葉は昨年よりやや遅れています。
今後、スムーズに収穫作業に入れるよう、青立ち株や雑草の抜き取りを行うとともに、今後も台風等の気象災害に備え、排水対策をもう一度確認してください。

2 収穫作業の前に

(1)台風対策
例年10 月は台風の発生が多い時期となりますので、今後とも気象情報を確認し、状況に応じて排水対策など、事前事後対策を徹底してください。なお、技術対策の詳細については9月7日発行の「号外 台風対策」を参照してください。
(2)雑草、青立ち株の抜き取り
アメリカセンダングサ、シロザ、ヨウシュヤマゴボウなどの大型雑草は、収穫時に汚損粒の発生や収穫作業の妨げになるので取り除き、次作の発生源とならないよう種子をつけた雑草は圃場から搬出してください。
また、青立ち株も汚損粒の原因となりますので、雑草と同様に抜き取ってください。
(3)コンバインの清掃・調整
収穫作業の前には必ず清掃点検を実施し、作業に支障が出ないか確認しておきます。
また、土をかみ込んだ時など、収穫作業中でもコンバインの清掃が必要となることがあるので、清掃のポイントを把握し、効率的に行えるようにしておきます。
(4)乾燥・調製施設の確認
乾燥・調製施設を利用する場合には、その稼働計画について確認し、圃場の様子を踏まえた上で、刈取りの順番、収穫機械やオペレーターの確保等、準備をすすめておきます。

3 収穫

(1)成熟期の判断
適期収穫の第一歩は、成熟期を正確に判断することです。莢を振ってカラカラ音がするようになったら、圃場内の数カ所で実際に莢をむいて確認し、次の2つから成熟期を判断します。
ア 圃場のほとんどの株で、大部分の莢が熟色になっている
イ 莢の中の子実が乾燥子実の形になっている
成熟期を確認したら、表1を参考に収穫作業に入ります。

表1

(2)コンバイン収穫のポイント
ア 収穫時の茎水分は50%以下
茎水分が50%を超えると、こぎ胴で茎が揉まれ茎汁が発生し、汚損粒の発生原因となります。
このため、青立ちした株は必ず抜き取ってください。茎水分50%以下の目安は、分枝が手でポキポキと折れるときです。
イ 収穫時の子実水分は18%以下
収穫時の子実水分は18%以下を目標とし、多くとも22%以下で収穫します。なお、子実水分が20%以上と高すぎる場合は、つぶれ粒を主体とする損傷粒が多くなり、15%以下と低すぎる場合は、裂傷や割れ豆などが多くなる傾向があります。
ウ 収穫の時間帯は茎葉がよく乾いた頃
晴れた日の場合、午前10 時過ぎ~午後5時頃までが目安です。茎水分が高いため朝夕は避けてください。

4 乾燥

(1)乾燥
子実水分が高いものを急速に乾燥させると、裂皮粒やしわ粒発生の原因となります。子実水分を均一に低下させるよう、送風温度等に留意します。
(2)被害粒発生のしくみ
被害粒のうち、裂皮粒(皮切れ粒、写真1)は、収穫前に、大豆の生理的な要因で種皮が部分的に裂けて生じるもの(例:莢数不足あるいは刈遅れによる過熟が発生)と、高温通風など乾燥調製時の急激な乾燥によって生じるものに大別されます。
しわ粒は、子実のへその反対側の子葉組織と種皮がギザギザになる「ちりめんじわ(写真2)」と、種皮が吸湿により亀甲状に隆起する「亀甲じわ(写真3)」に大別されます。
「ちりめんじわ」は主に、生育後半の栄養凋落が激しいほど発生しやすく、この時期の栄養状態の改善が対策となります。
「亀甲じわ」は子実形成から収穫期前後までの乾燥・吸湿の過程で、皮と子実の収縮・伸長の繰り返しが原因で生じますので、刈遅れを避けることが対策につながります。

写真1 2 3

5 その他

(1)紫斑病対策
成熟期以降、刈取りが遅れると紫斑粒が増加しますので、刈遅れを避けることが重要です。
また、ビーンカッターや手刈りで収穫した場合、速やかに脱穀・乾燥を行います。島立てやハウス乾燥中の刈株も、朝露や湿気などにより紫斑粒が徐々に増加することが知られています。

小麦

1 播種適期

表2

播種期が遅くなると、年内に確保できる茎数が少なく、穂数不足による減収や、根張りが少ないため、凍上害にあうことが多くなります。
小麦も稲と同様に、主茎の葉齢によって発生する分げつ数が決まっており、越冬前の主茎葉齢は4葉以上、分げつは1~2本を確保することを目標にします。地帯別の播種適期を表2にまとめました。適期を逃さず播種作業を行い、越冬前に生育量を確保してください。


ナンブコムギで発生し減収をもたらす縞萎縮病は、播種後30~40 日間の気温が高く、降水量が多いと翌春の発病程度が高まります。このため、ナンブコムギをやむを得ず連作する場合、播種適期内のできるだけ晩播とすることが被害軽減に有効です。この場合、茎数確保のため播種量は標準の3割増しとします。ただし、適期を過ぎた晩播は根張りが劣り、湿害や干ばつ害を受けやすくなりますので注意してください。

2 もしも適期を逃したら・・・播種時期が遅れたときの考え方

表3

(1)播種適期を守るのが基本ですが、圃場条件が悪い場合、無理に播種しても出芽不良を招きますので、その場合は作業を見合わせます。
(2)適期が過ぎてしまった場合は、各地帯の播種晩限から1週間遅れるごとに10%播種量を増やし、目標株立数を確保できるよう努めます(表3)。

3 基肥

表4

麦類の施肥は、追肥の占める割合が高く、基肥は越冬前の生育量を確保するために施用します。                                          標準的な施肥量を表4に示していますが、土壌改良目標値を満たした圃場での施肥管理は、「補給型施肥基準」を適用することができます。補給型施肥とは、「圃場からの収穫物による肥料分の持ち出し量」と浸透水による「土壌養分の溶脱量」を施肥によって補給する、という考え方を基に作られた施肥基準です。この施肥基準では、堆肥と化学肥料を区別することなく、含まれる肥料成分の合計で施肥設計しますので、堆肥の活用で肥料費を抑えることも可能です。詳しくは最寄りの農業改良普及センターにお問い合わせください。

4 雑草防除

播種後は、必ず土壌処理剤を散布します。もし、降雨などで播種直後に散布できなかった場合は、小麦の出芽後でも使用できる除草剤がありますので、圃場が乾いたら早めに散布を行ってください。

5 排水対策

写真4

圃場内の明渠は、播種後に施工することも可能です。播種前に十分な準備ができない場合、播種後の施工も想定しておいてください。

最後

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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