農作物技術情報 第6号 畜産(令和5年8月29日発行)

ページ番号2007238  更新日 令和6年3月13日

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タイトル

  • 飼料用とうもろこし 収穫機械やサイロの点検、資材の準備を早めに行いましょう。サイレージ調製は十分な踏圧と速やかな密封を行いましょう。
  • とうもろこしとライムギの二毛作 ライムギは極早生か早生品種を9月下旬から10 月初旬までに播種しましょう。
  • 牧草 播種が遅れないように更新や追播の作業を進めましょう。
  • 乳用牛・肉用牛 今後も残暑が続く見込みなので牛舎環境面の暑熱対策を継続して実施し、牛の個体観察や良質飼料給与を徹底して体力の回復に努めましょう。

1 飼料用とうもろこし

写真1

雌穂、雄穂の出穂時期から、黄熟期の到達は平年よりも早いと考えられます。早めに収穫機械やサイロの点検、資材準備を行い、収穫に備えます。

(1)刈取適期の判定方法
収穫適期は、「黄熟期」です。これより早いと、でんぷんの蓄積が不十分であったり、排汁とともに栄養分が流出したりします。また、黄熟期より遅れると、消化率が低下するほか、水分が下がりすぎて踏圧、密封が不十分となりカビの発生や発酵品質が低下しやすくなります。
黄熟期の判定は「ミルクライン」による方法が簡単です(写真1)。
とうもろこしの雌穂(実)の中程を折って先端側の子実を見ると、黄色い部分と乳白色の部分に分かれています。この境目を「ミルクライン」と言い、熟度が進むにつれて子実の外側から中心に向かって、黄色い部分が増えていきます。収穫適期である黄熟中期は、ミルクラインが子実の外側から40~50%に達した頃です。
なお、破砕処理を行う場合、消化率が高まるので、収穫期を黄熟後期まで拡大することが可能です。

(2)乾物率の確保
子実と茎葉の水分が低下するスピードは、品種によって差があります。また、収穫前の天候によっても茎葉の水分が変化します。より正確に乾物収量を設定するのであれば、収穫前に子実だけでなく茎葉も含めた状態で乾物率を測定することをおすすめします。最寄りの普及センターにご相談下さい。
(3)サイレージ調製
ア 細断

(ア)詰め込み密度、反芻時間、子実の消化性の兼ね合いから、破砕処理を行わない場合で切断長10mm
程度、破砕処理を行う場合は、切断長19mm、ローラー幅5mm に調整します。黄熟後期以降は、消
化率をあげるためローラー幅を2-3mm に調整します。                                      
(イ)目的のサイズで細断できるよう、また切断面が鋭利となるよう、ハーベスタの刃の調整と研磨を行います。
イ サイロの大きさ
開封後の好気的変敗を防ぐために、表1の取り出し幅以上のサイレージを1日で取り出せるよう、サイレージの利用量に応じてサイロの大きさを決めます(図1、図2)。

図12

ウ 詰め込み・踏圧
サイレージの出来の良し悪しは、踏圧がきちんとできるかできないかにかかってきます。踏圧をしっかり行うことにより、高水分であっても発酵品質をある程度安定させることが出来ます(図3)。踏圧作業の担当者は、時には運搬ダンプを待たせてでもしっかり踏圧を行うことが大切です
(ア)十分な踏圧を行うため、踏圧作業のペースに合わせて、詰め込み原料の収穫、運搬ペースを調整します。
(イ)土砂の混入を避けるため、運搬トラックはサイロの奥まで入らず、サイロの手前で詰め込み原料を下ろします。フロントローダ等を用いて、サイロ全体に薄く広げ、速やかに踏圧を行います。
(ウ)サイロの壁沿いや角などの重機では踏圧できない場所は、人の足で踏圧します。人が歩いても足跡が残らない程度まで十分に踏み込みます。

図

エ 密封
(ア)変敗の原因となる好気性微生物の増殖を抑えるためには、詰め込み作業後速やかにサイロビニールやスタックシートなどで原料を密封し、風でシートが浮かないよう、廃タイヤ等で重石をします。
(イ)詰め込み作業は1日で終了させるのが理想です。やむを得ず2日に渡る時は、1日目の作業終了時にギ酸やプロピオン酸を散布して仮被覆します。また、気密性のサイロではガスによる窒息、中毒事故の恐れがありますので、十分に換気してから2日目の作業を始めてください。
(ウ)刈り遅れや霜にあたったとうもろこしは、水分が低く、カビの発生や変敗しやすくなります。プロピオン酸・ギ酸などの添加剤の使用を検討します。
(エ)セキュアカバー(サイレージ保護シート)の紹介(写真2)
細かく編みこまれた素材が、カラスによるいたずらを防ぎます。また、風にあおられることがなく耐久性に優れます。(防鳥ネットは耐久性の低下により毎年交換が必要)。ブルーシートは必要なく、スタックシートの上から直接覆います。

写真2

2 とうもろこしとライムギの二毛作

図4

早生系の飼料用とうもろこし(表作)の収穫後にライムギ(裏作)を播種、翌年の5月中旬に収穫、5月下旬にまたとうもろこしを播種する二毛作(図4)は、収穫と圃場準備・播種が連続し労力的に大変な面もありますが、自給牧草が不足しているまたは輸入乾草の使用量が多いケースでは、粗飼料確保の有効な方法の一つです。10a あたりライムギの現物収量は、概ね2トンです。

(1)サイレージの飼料成分など
出穂期に収穫したライムギは、オーチャードグラス一番草の出穂期から開花期の成分に近いです(表2)。また、収穫調製において「適切な水分」「土の混入がない」サイレージは嗜好性が優れます。

表2

表3

(2)ライムギの播種
ア 越冬性に優れるライムギは、播種が遅くなるほど減収します(表3)。9月下旬から10月上旬までに播種します。
イ 翌年の5月中旬までに出穂期に到達させたいので、極早生や早生品種(春一番、キングライ麦など)を播種します。中生以降の品種は、出穂が遅く、とうもろこしの播種が遅れるので避けます。播種量は10a あたり7~8kgとし、どうしても遅播きになる場合は2割増しで播種し、減収を緩和します。
ウ 10a あたり窒素8kg、リン酸10kg、カリ8kg を目安に施肥しますが、堆肥還元量の多い熟畑では土壌中のリン酸とカリ含量が多いと考えられるので、草地化成211 号や210 号などで調整します。
また、生育不良の場合に限り、早春に10a あたり窒素3kg を追肥します。                               エ とうもろこしの収穫から圃場を準備しライムギを播種するまで10 日程度で完了させます。このため、プラウがけが難しい場合は、ディスクハロー等の複数回掛けでトウモロコシ残稈と堆肥を土中にすき込みます。
オ 種子の出芽を安定させるため、播種後はロータリ等を浅くかけ覆土し、ローラーで鎮圧します。

3 牧草

牧草の播種時期ですので、二番草の収穫を完了させ、更新や追播を計画していた圃場については、前号(農作物技術情報第5号)を参考に播種を行います。

4 乳用牛・肉用牛

(1)牛舎内の環境
残暑が続くので、牛舎環境面の暑熱対策を継続します(農作物技術情報第4、5号参考)。
イ ほ乳子牛の適温域は13~25℃であり、盛岡市の過去5年間の気温データを見ると9月上旬から中旬にかけても日中の高温を緩和する対策が必要です。日中に牛舎が高温の場合、小型扇風機を使いますが、風を牛体に直接当て続けると過度に体温が奪われるので、首振りにする、一定時間の送風にとどめる、風の当たらない場所にも子牛が移動できるようにするなどの工夫をします。夜間は換気に留意しつつ、牛舎の窓やカーテンの開閉を調整して牛体に風が直接当たらないようにします。
群飼の場合、休息場所の一画にコンパネ等の風よけを設置することも有効です。

(2)飼養管理
ア 水槽の掃除をこまめに行い、清潔な水をいつも飲める状態に保ちます。
イ 良質粗飼料(食いつきの良い牧草やトウモロコシサイレージ)の給与を継続します。
ウ 気温の低下に伴い飼料摂取量が増加します。ルーメンフィルスコアと残飼を確認し、摂取量が不足しないように給与量を増やします。なお、暑熱により長期間採食量が少なかった牛は、ルーメン内の発酵酸の吸収能力が低下している可能性があり、採食量増加に伴うアシドーシスに注意します。
飼料の食い込みが増え、軟便や糞中の未消化物・粘膜が見える場合は、粗飼料の給与割合を多めにして様子を見ます。糞便の状態が落ち着いてきたら、徐々に配合飼料の給与割合を増やし、栄養を充足させます。
エ 起立時間が増加した、あるいは飼料の選び食いや固め食いが多かった牛では、蹄真皮の圧迫や炎症による蹄病が発生しやすくなります。起立した姿勢、歩行時の状態をよく観察し、問題ある牛は早めに獣医師や削蹄師に処置を依頼します。
暑熱時に分娩を迎えた牛は、分娩と暑熱双方のストレスを受け体調を崩しやすいので、いつもより意識して観察し、異常がある場合はすぐに対処します。これらの牛は、既にまたはこれから泌乳最盛期になるので、良質粗飼料の優先給与、粗濃比に注意しつつエネルギーを充足する、ビタミン剤等の給与量を少し増やすなどの栄養管理を徹底します。また、子宮の回復が通常よりも遅れると考えられるので、子宮の回復状態の確認と必要ならば治療を早めに獣医師に依頼し、初回授精が遅れないようにします。

最後

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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