農作物技術情報 第6号 畑作物(令和5年8月29日発行)

ページ番号2007233  更新日 令和5年8月29日

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タイトル

  • 大豆 開花期は、平年より3日程度早い7月下旬に達しました。生育量は、全般に気温が高く、7月下旬以降の日照時間が多かったことから平年を上回っています。                                        現在、子実肥大期となっており、紫斑病とマメシンクイガの防除時期を迎えています。収量・品質確保のため、必ず薬剤散布を実施しましょう。
  • 小麦 令和6年産小麦の栽培が始まります。収量確保のためには、越冬前に十分な生育量を確保することが必須です。排水対策は早めに実施し、播種は無理せず土壌条件が整ってから適期内に行いましょう。

大豆

1 生育概況

開花期は、平年より3日程度早い7月下旬に達しました。生育量は、全般に気温が高く、7月下旬以降の日照時間が多かったことから平年を上回っています。
現在、子実肥大期となっており、紫斑病とマメシンクイガの防除時期を迎えています。

2 高温(干ばつ)対策

8月下旬~9月上旬(子実肥大初期)の干ばつは、莢数の減少や子実肥大に影響し、収量・品質の低下を招きます。
暗渠が施工されている圃場では、暗渠栓を閉じて地下水位低下を防いでください。また、十分に用水が供給されている地域では、明渠やうね間を利用したかん水を実施してください(詳細は、7月27日発行の「農作物技術情報第5号 畑作物」を参照ください)。

3 病害虫防除

マメシンクイガの防除適期は、県北部で8月第6半旬、県央・県南部で9月第1半旬となっています。なお、紫斑病の防除適期は、若莢期(開花後20 日頃)~子実肥大期(開花後40 日頃)です。薬剤は、莢によく付くように散布(液剤の場合、生育が旺盛な場合は登録の範囲内で散布薬液量を増やす)します。
また、吸実性カメムシ類(写真2)の発生が見られる圃場では、有機リン剤や合成ピレスロイド剤等による防除を実施します。マメシンクイガと同時防除を行う場合には、有機リン剤を選択します。

写真1

写真2

4 手取り除草の実施

雑草は収穫時に汚損粒の原因となりますので、早めに除草します。
シロザやアメリカセンダングサなどの大型雑草のほか、近年拡大傾向にある帰化アサガオ類やアレチウリなど、防除が難しい雑草が発生している圃場では、雑草が種子をつける前に除草を行ってください。

5 台風対策

台風の影響を受けやすい時期になります。土壌表面の排水を促進するため周囲溝や排水口等を点検・補修し、土壌表面水を速やかに排水する等、必要な対策を講じてください。

小麦

1 排水対策

水稲の収穫作業と小麦の播種作業が競合しないよう、計画的に播種準備等を行ってください。
水稲の収穫後、小麦を作付けする圃場については、必要に応じてサブソイラによる弾丸暗渠の施工を行うとともに、地表水の速やかな排水を促すため、できるだけ早く額縁明渠を設置します(写真3)。
額縁明渠は必ず排水路につなげ(写真4)、生育期間を通じてこまめに手入れを行います。

写真3

写真4

明渠のうち圃場内小明渠(写真5)は、播種後に施工が可能です。小麦を潰してしまいますが、収量への影響はほとんどありません。

写真5

2 土壌改良資材・堆肥の施用

(1) 土壌改良資材
県内の水田転換畑は土壌の酸性化が進んでいる圃場が多く、低収の一因となっています。土壌診断を実施し、石灰資材の投入を行ってください。なお、石灰資材投入の効果は施用後直ちに現れるものではありませんが、計画的な圃場利用の中で、積極的に施用することが重要です。
(2) 堆肥
堆肥等の有機物には土を膨軟にする、根張りをよくする、施肥の効果を高める、などの利点があり、継続して施用すると化学肥料のみを使用した圃場より収量・品質が向上します。石灰資材と同様、計画的な圃場利用の中で積極的に施用してください。

3 プラウ耕

水稲栽培では一般的にロータリ耕が行われますが、小麦栽培では深耕のためにプラウ耕が望ましいケースもあります。プラウ耕等を行う場合は、作土や耕盤の深さなどを調査し、不良な重粘土、やせた下層土が作土に混入することを避けるなど、土壌タイプを考慮し、事前に十分に検討してください。

4 砕土・整地

大きな土塊が圃場にある場合は、砕土・整地作業を十分に行う必要があります。土塊が多いと播種精度が落ち、発芽が劣るなどの問題が発生しますので、水稲から転換後1~2年は砕土・整地をできるだけ丁寧に行います
特に砕土の良否は発芽に大きく影響するため、一般的に地表部10cm 層の砕土率(粒径2cm 以下の土塊の割合)を70%以上にする必要があるとされています。
砕土作業は、ハロー耕(ツースハロー、ドライブハロー、バーチカルハロー)やロータリ耕が効率よく行えますが、作業時の土壌水分によっては砕土性が劣る場合があります。また、プラウ耕を行った場合、砕土作業はプラウ耕の方向に対して直角か45゜の角度で行い、砕土後は圃場を均平にするため整地します。
一般にロータリ耕のあとは土壌が水分を含みやすく、降雨があると乾きにくくなるため、播種直前に行うようにします。アップカットロータリ(逆転耕)を用いると、表層の砕土率が高く、下層は粗い二層構造の土壌を形成し、有機物の埋め込み性にも優れるため、その後の播種作業も楽に行うことができます。

5 播種

表1

(1) 適期播種
播種期が遅くなると、年内に確保できる茎数が少なく、穂数不足による減収や、根張りが少ないため凍上害にあうことが多くなります。
また、播種晩限を過ぎるほど分げつが確保できず減収程度が大きくなるので、適期播種に努めてください(表1)。

表2

(2) 施肥
麦類の施肥は、越冬後の追肥の占める割合が高く、基肥は越冬前の生育量を確保するために施用します。                             標準的な基肥量を表2に示していますが、土壌改良目標値を満たした圃場での施肥管理は、「補給型施肥基準」を適用することができます。
補給型施肥とは、「圃場からの収穫物による肥料分の持ち出し量」と浸透水による「土壌養分の溶脱量」を施肥によって補給する、という考え方で作られた施肥基準です。この施肥基準では、堆肥と化学肥料を区別することなく、含まれる肥料成分の合計で施肥設計しますので、堆肥の活用で肥料費を抑えることも可能です。詳しくは最寄りの農業改良普及センターにお問い合わせください。

表3

(3) 播種量と播種方法
ア 播種量
品種別の播種量・目標株立数は表3を基本とします。ただし、圃場条件が整わず、やむを得ず播種が遅れた場合には、播種晩限から1週間遅れるごとに播種量を1割ずつ増やしください。
なお、砕土が粗い、土壌が湿っているなどの条件下では苗立ち率が低下します。このような条件下で播種する場合、播種量を1割程度増やすなどの対策を行います。
また、ナンブコムギでは、前作で縞萎縮病が発生した圃場での作付けはできるだけ回避しますが、やむを得ず連作する場合には、播種量は標準の3割増とし、100~120 株/平方メートル程度の株立数を目指し、茎数確保を図ります。
イ 播種方法
ドリル播きでの播種深度は3cm 程度を目標とし、全面全層播きでは、均一に散播のうえハローなどで浅く(5cm 深程度)攪拌し覆土します。播種深度が深すぎると、出芽のバラツキや出芽率の低下、生育の遅れが問題になり、浅すぎると、凍上害や鳥害、干ばつ害、除草剤の薬害などが生じやすくなります。

6 雑草防除

輪作や圃場周囲の草刈りなどによる耕種的な防除と併せ、除草剤を効果的に活用して総合的に雑草防除を実施してください。
(1) 非選択性除草剤
特に連作では、前年に発生した雑草が播種前に出芽し、耕起で十分に埋没できない場合があります。
このような場合、耕起前または播種前に非選択性除草剤を利用し、雑草の出芽個体を防除します。なお、難防除雑草のネズミムギ(イタリアンライグラス)に対しては、耕起前に(イタリアンライグラス出芽後)に非選択性除草剤を散布し、播種後の土壌処理剤散布までできるだけ早く(10 日以内)行うと効果的です。
(2) 土壌処理剤
初期に発生した雑草ほど生育期間が長くなり、大きな害を及ぼしますので、播種後に出芽する雑草を土壌処理剤によって確実に防除します。
耕起から播種、土壌処理剤散布までは、間隔を開けずに実施します。また、高い効果を得るため、(1)砕土・整地を丁寧に行う、(2)散布のタイミングを逃さない、(3)適湿条件で散布することが重要です。

最後

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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