農作物技術情報 第5号 果樹(令和5年7月27日発行)

ページ番号2007138  更新日 令和6年3月13日

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タイトル

  • りんごは、凍霜害による着果不足により、樹勢が強くなっている樹があります。誘引や支柱立てなどの夏季管理を行い、樹幹内部の受光体制の改善に努めましょう。
  • りんごの果実生育は平年を上回っていますが、着果数の多い部分や病害虫による被害果などの見直し摘果を進め、適正な着果数にしましょう。
  • ぶどうは、凍霜害や樹勢などの影響により、結実や新梢生育は圃場や品種によって異なることから、引き続き、生育状況に応じた着果管理と新梢管理に努めましょう。

りんご

1 生育概況

生育診断圃の果実生育(横径)は、本年の開花が平年よりも大幅に早まったこと等により、7月1日時点の県平均は、平年比117~118%、前年比112%となっております。
しかし、凍霜害の影響でサビ果や変形果が発生し、良質な果実を見極めるために摘果が遅れている園地があります。花芽形成を促すため、早期に適正着果数になるよう見直し摘果を進めます。

表1

2 栽培管理のポイント

りんごは、できるだけ早く適正着果数になるよう摘果を進めます。また、現在、来年の花芽を形成する時期に入っているため、誘引や支柱立て、徒長枝の整理を行い、受光体制を改善します。これら作業により、病害虫防除時の薬剤は樹冠内部まで到達しやすくなります。
りんごの早生品種の収穫では、果実の着色と内部品質が一致しないまま収穫期を迎える場合があります。果肉の硬度や地色の抜けに注意して、収穫が遅れないよう適期収穫に努めてください。

(1)摘果の見直し、誘引、徒長枝の整理について
仕上げ摘果がほぼ終了し、これから見直し摘果になります。着果数の多い部分や病虫害果などを摘果します。「ふじ」では、生育不良果、つる割れ果が見えてきますので、随時摘果します。
樹体管理では、枝の誘引や支柱立て、徒長枝の間引きなどを行い、樹冠内部への日光や薬剤の通りを良くします。また、台風などに備えて支柱との結束を確認し、園地の排水対策も行います。
(2)早生種の着色管理
ア 早生種の葉摘み開始時期は、収穫予定の10~20 日前です。
イ 果そう葉を中心に、最初は軽く2~3枚程度摘みます。
ウ 陽光面の着色が進んだら、葉や枝カゲをつくらないように玉回しを行うとともに、適当な強さに葉を摘みます。必要以上の葉摘みは、逆に着色が進まないので避けます。
エ 着色適温は10~20℃です。残暑で最低気温が20℃を超える日が続く場合は、いくら葉を摘んでも着色が進まないので注意してください。
オ 「紅ロマン」での1回目の葉摘みは、収穫予定の10日前頃に果実に触れている葉を軽く摘み、2回目の葉摘みでは1回目の1週間後を目安に、玉回しと併せて行います。
着色が容易な品種なので、最小限の葉摘みを心掛けます。早すぎる・強すぎる葉摘みは糖度が上がらない原因や日焼けの原因にもなるため注意してください。なお、例年この管理で日焼けが起きる場合には、無理に葉摘みは行わないようにします。
(3)落果防止剤の散布
収穫前に落果しやすい「つがる」や「きおう」には、落果防止剤を上手に使用して落果を抑えます。使用の際は、必ずラベルの登録内容を確認してください。特に「きおう」の内部裂果で早めに熟す果実の取り扱いは、農薬の使用基準に違反しないよう厳重に注意してください。
(4)早生種の収穫
ア 一般に、りんごは満開後一定の日数で成熟する傾向があり、この日数は品種によってほぼ定まっています。今年の満開日から見た収穫期の目安は表2のとおりですが、これは北上市成田の満開日より算出しており、県南の平場ではこの予想日より早まることが予想されます。
また、現時点での1ヶ月予報(7/20 発表)による天候の見通しは、気温は高く、降水量は平年並、日照時間は平年並の見込みです。高温により着色しにくくなる可能性もあるため、過度な着色は期待せず、食味・硬度等を確認の上、適期収穫を心がけてください。
イ すぐりもぎが基本です。特に熟期が不揃いな「つがる」や「きおう」は徹底します。
ウ 「紅ロマン」は、着色が先行するため、食味を確かめ、香りや果汁が十分に出てから収穫してください。地色は、いくらか青みが残る程度を目安とし、果肉が白いうちに収穫します。また、果実品質を保持するため、収穫期が高温で経過する場合は、果実温度が低い朝に収穫し、できるだけ早く出荷(予冷)してください。
エ 「きおう」は、ツル浮き(内部裂果)が発生しやすい品種で、特に降水量が多い8月に入ってから発生します。裂果したものは正常果よりも早く熟すので、特に収穫前半はツル浮き果が混入しないよう注意してください。
オ 「つがる」は、収穫後の果肉の軟化が早く、収穫が遅れると果面に油上がりが発生しやすいので、地色に注意して遅取りを避け、収穫後はできるだけ早めに予冷してください。

表2

(5)「紅いわて」の収穫前管理
「紅いわて」は着色の非常に良好な品種であるため、軽い葉摘み作業でも十分に着色します。陽光面が着色した時点で果面に付着している葉を取り除き、枝カゲをつくらないよう軽く玉まわしを行います。「紅いわて」はつるが短い傾向にあるため、玉まわしは慎重に行ってください。
(6)夏季せん定(わい性樹)
ア 樹勢の強い樹を対象に、8月下旬~9月上旬にかけて行います。
イ 側枝の上面から発生している30cm以上の直上枝を間引くほか、30cm以下の新梢でも枝量と混み具合を見ながら、日光、薬剤が通る程度に適宜間引きます。
ウ なお、過大な夏季せん定は樹勢を弱めるため、紫紋羽病の発病誘因となることがありますので、発病の恐れのあるところでの夏季せん定は最小限にとどめてください。

3 病害虫防除

(1)褐斑病と斑点落葉病の発生が平年より早まっているため、多発が懸念される場合は、速やかに特別散布を実施します。
(2)ハダニ類については、主幹近くの新梢葉(普通樹では主幹や主枝の徒長枝葉)をよく観察し、要防除水準に達した場合は直ちに防除を実施してください。
(3)果樹カメムシ類については、園地をよく観察し、大量の飛来が確認された場合は、効果の高い薬剤により速やかに防除を実施してください。
(4)その他の病害虫についても、病害虫防除所の発生予察情報や防除情報を参照し、園地の発生状況をよく観察して、適期防除に努めてください。
(5)早生品種の収穫が近づいています。薬剤散布は、農薬の使用基準(特に収穫前日数)をよく確認して、誤使用のないよう注意してください。除草剤についても同様です。

ぶどう

1 生育概況

生育診断圃(紫波町)の「キャンベルアーリー」は、5月9日の降霜の影響により、結実率は平年より低く、新梢の伸長は平年より長くなっています。ただし、本診断圃以外の参考地点での「紅伊豆」、「サニールージュ」、「シャインマスカット」は、概ね平年並の生育となっています。このため、ぶどうの結実や新梢生育は、凍霜害の有無や樹勢の強弱等の影響により、圃場や品種によって異なります。
現時点での1ヶ月予報(7/20 発表)では、気温は高い予報になっていますので、日焼けの発生に留意し必要に応じてカサかけを行います。

表3

2 栽培管理のポイント

(1)摘粒の見直し
果房の形を整え、品質を向上させるため、着粒の多い密着房、裂果粒、病害虫果粒を中心に摘粒を実施します。1房当たり粒数の目安は、「キャンベルアーリー」、「ナイアガラ」が70 粒程度、「サニールージュ」が50 粒程度、「シャインマスカット」が40~50 粒、「紅伊豆」が30~40 粒、となりますので、見直しを行ってください。

(2)摘房
果実の糖度や着色など品質を向上させ、同時に樹体の養分の消耗を防いで翌年の花芽の充実を図るため、適正着房数を目標に摘房を実施します(表4参照)。
しかし、「キャンベルアーリー」で樹勢が弱い場合は、表4によらず1房当たりに必要な葉数(概ね15~24 枚で1房、25 枚以上で2房)で着房数を制限してください。
「紅伊豆」などの大粒種で、樹勢をコントロールする目的で1新梢2房としている場合でも、着色や糖度の上昇の遅れ、樹体の凍寒害発生を防ぐために、着色開始を目途に最終房数とします。
なお、日照不足などで着色遅延となり収穫が遅れると、果実品質の低下や樹体の耐凍性の低下が懸念されます。場合によっては、着房数を基準より減らして着色促進を図ることも必要です。

表4

(3)新梢管理
棚面を明るくして果房の着色を向上させ、樹勢をコントロールして養分の浪費を防ぐため、勢力の強い新梢を中心に間引きや摘心を行います。硬核期以降(7月下旬以降)に実施しますが、(1)赤色系品種、(2)紫黒色系品種、(3)白色系品種の順に棚面を明るくします。
短梢栽培では、葉数確保のため副梢についても基部から2~3枚の葉を残して摘心していきます。しかし、混み合っている場合は適宜間引いてください。
(4)収穫
今年の収穫は、若干早まることが予想されます。着色だけではなく、糖度などの食味に留意しながら(表5)、適期収穫に努めます。収穫に当たっては、農薬使用基準の使用時期(収穫前日数)には十分に注意してください。
収穫は、果実温度が低い早朝から午前中に行います。降雨後は、糖度も下がり、輸送中の腐敗も多くなるので避けてください。
選果・調整は、果粉を落とさないように穂柄を持ち、未熟果、腐敗果、裂果等を除き、出荷形態に即して房形を整え出荷してください。

表5

写真1

(5)裂果対策
収穫直前の急激な土壌水分の変化は、裂果の発生を助長します(写真1)。土壌が乾燥し過ぎないよう、土壌水分を収奪する雑草の刈り取り、樹冠下への敷きワラ等を実施します。また、降雨があった場合には、過剰な水分を早期に排水できるよう、根域周辺にビニール等を敷く、溝掘り(明渠)するなどの対策を実施します。
「紅伊豆」などの雨よけハウス栽培では、温度が高くなりやすいハウス中央部などで、果実の着色不良や果肉の軟化が裂果や脱粒を誘発することがあります。気温が高くなると予想される日は、サイドのビニールを巻き上げる、換気扇を利用する等温度が上がりすぎないよう努めます。

3 病害虫防除

病害虫の発生状況に応じて防除を実施しますが、収穫が間近になっているため、農薬の使用基準(収穫前日数、散布濃度、使用回数)や今年度の散布履歴を十分確認した上で防除を行ってください。
薬剤によっては、果粉の溶脱、果面の汚れなど品質を損ねることがありますので、薬剤を選択する際は注意してください。

最後

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