農作物技術情報 第4号 果樹(令和5年6月29日発行)

ページ番号2007051  更新日 令和5年6月29日

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タイトル

  • りんごの生育は平年より進んでいます。4月の低温の影響により、奇形果、サビ果の発生や着果不足となる園地も見られています。仕上げ摘果は慎重に果実を見定めて行いますが、隔年結果防止のため早期適正着果に努めましょう。
  • ぶどうの生育は平年より進んでいます。結実の状況を確認のうえ、適切な摘房、摘粒を進めましょう。

りんご

1 生育概況

(1)結実の状況
県内生育診断圃の結実調査結果(表1、表2、図1、図2)によると、花そう結実率は、概ね平年並ですが、凍霜害の発生により、中心花結実率や花数結実率が平年を大きく下回る地点も見られました。特に、二戸では、中心花結実率が15%(平年差-52%)で、側果の利用が必須となります。
また、開花期間中の天候(図3)は、4月25 日に降霜があったほか、4月22 日から27 日は日平均気温が低く、4月26 日及び30 日は降雨となり、訪花昆虫の活動など受粉にとってマイナス要因となりました。
各普及センターでは、JA 等関係機関・団体と連携し、生育診断圃以外の園地における結実率や果実の外観等を調査していますが、同じ管内でも園地や品種によってその差が大きく、また、生育診断圃よりも低い値をとる場合もあるため、本年の作柄については果実の量や品質を継続的に調査・確認して行く必要があります。

表12

図1,2,3,

(2)果実の生育状況
6月1日時点における果実生育(横径)の平年比は、県平均で「ジョナゴールド」が142%、「ふじ」が160%でした(表3)。これは、本年は開花が早まり、5月の気温も平年並~高く日照も十分にあったため、果実は平年より生育(肥大)が進みました。ただし、凍霜害や風雨の影響がみられたところでは、中心果の代わりに側果を利用していることから、地域や品種によっては平年に比べてバラつきがあります。
今後は、良質な果実を見極めつつ、花芽形成と果実肥大を促すため、適正着果量となるよう摘果に努めてください。

表3

2 栽培管理

7月に入ると新梢の伸びはほぼ停止し、翌年の花芽分化が始まります。着果過多や日照不足、高温乾燥などが花芽形成を阻害する要因になりますので、(1)早期の適正着果数への摘果、(2)徒長枝の整理などによる日照条件の改善、(3)病害虫防除による健全な葉の維持、(4)適正な土壌水分管理に努めます。
ただし、本年は4月の低温の影響により、奇形果、サビ果の発生や着果不足となる園地も見られることから、仕上げ摘果や夏季管理は、園地の状況に応じて作業を進めてください。

(1)仕上げ摘果(凍霜害が著しい場合)
ア 着果量が少ないと樹の成長とのバランスが崩れるため、良果のみで適正着果量を確保できない場合は、奇形果やサビ果、長果枝の果実も着果させます。また、頂芽果のみで適正着果量を確保できない場合は、腋芽果も利用します。なお、腋芽果の使用は、次年度以降の花芽の充実に悪影響を及ぼす可能性があるため、腋芽果が着生している枝に1果とします。
イ 樹冠上部の枝の着果量が多く、下部の枝の着果量が少ない場合、下部の枝には奇形果やサビ果、長果枝の果実、腋芽果も着果させ、樹体とのバランスの維持を図ります。なお、樹全体の着果量は適正着果量の範囲内とします。
ウ なお、着果調整のために結実させていた果実については、樹体生育の影響が少なくなる8月下旬~9月上旬に摘果します。
(2)仕上げ摘果(凍霜害がない場合)
ア 摘果作業が遅れると小玉果となる可能性が高まるため、表4の摘果強度を参考に、仕上げ摘果および着果量の見直しを進めてください。
イ 三角実や扁平果など果形の悪い果実、病虫害果、サビ果などの傷害果は摘果します。傷害果が多発し、正常果で適正着果量を確保できない場合は、傷害果もある程度残します。
ウ 「ふじ」で果台が極端に長いもの(25mm以上)や短いもの(10mm以下)は、斜形果の発生割合が高くなるので、できるだけ摘果します(図4)。
エ 「ふじ」では、途中で肥大の止まる果実が出てくるので、随時見直しを行います。
オ 本県育成のりんご「紅いわて」は、摘果程度を1果/5頂芽とすることで、1果重300~350gの果実が多くなり、花芽が安定して確保できます。なお、あら摘果が遅れると翌年の花芽に影響が出る可能性があるため遅れずに実施し、また、若木では果実が大きくなる傾向が見られるため摘果時期を遅らせるなど調整してください。

図4、表4

(3)夏季管理
ア 徒長枝のせん除
8月下旬~9月上旬にかけて実施します。
ただし、凍霜害による着果不良のため、樹体生育のバランスが崩れて枝が繁茂している場合は、樹冠内部に日光や薬剤が透過するよう6月中・下旬にも実施します。
(ア)6月中・下旬(凍霜害が著しい場合)
主幹に近い側枝の背面、太枝の切除部、樹冠上部などから発生した30cm を超える新梢(以下、徒長枝)をせん除します。
この時期の徒長枝のせん除はできるだけ基部から行います。基部を残して切ると、残った部分から新たに多数の徒長枝が発生するので、切り残しが無いように注意します。
(イ)8月下旬~9月上旬(共通)
6月にせん除した部分から発生した徒長枝に加え、側枝の背面から発生した徒長枝を適宜間引きます。加えて30cm 以下の新梢でも混みあっている場合は適宜間引きます。
一方、徒長枝の発生が多く、これらを切ることによって葉枚数が不足する場合は、葉を十数枚残してせん除し、冬季剪定で整理します。
過剰な夏季せん定は樹勢を弱めるため、紫紋羽病の発病要因となることも多いので、発病の恐れのあるところでの夏季せん定は最小限にとどめます。
イ 支柱立て、枝吊り(共通)
次年度の花芽の充実を図るため、支柱を入れたり、ひもなどを用いて枝吊りを行い、枝に日が当たるようにします。
春に良好な樹形をしていた樹でも、凍霜害による着果不足で新梢伸長が旺盛になると、夏以降は重なる枝が多くなります。このような枝は、はじめから水平もしくは下がり気味の枝が多く、かなり太い枝でも下垂します。枝の重なりは、葉の同化作用や果実の着色に悪影響を及ぼします。
ウ 誘引(共通)
側枝の誘引は、わい性樹の樹幹内部への日光透過のために必要な作業で、2年枝でも3年枝でも必要に応じて行います。また、樹形によっては上下の誘引にとどまらず、枝のない部分に左右に誘引することも必要です。

3 土壌水分管理

りんごにとって、土壌水分を適正に管理することは、果実肥大、花芽の確保など健全な樹体の維持に有効です。
(1)乾燥対策
今後、高温、干ばつで経過する場合は、養水分の競合を避けるため草生を短く維持し、樹冠下に刈草やわら等でマルチします。また、畑地かんがい施設の整備が進められている地域では、適宜かん水を実施します。特に、今年定植した苗木や幼木は根量が少なく、乾燥の影響を受けやすいため、優先してかん水を実施してください。                  (2)排水対策
降雨が続き、園地内が過湿となる場合、根部が障害を受けて樹勢が衰弱することがありますので、園地内に滞水しないよう、溝を掘るなど排水対策を講じます。

4 病害虫防除

(1)本年は、りんごの生育が平年より進んでいることから、収穫期の前進化が想定されます。7月以降の農薬の使用にあたっては、収穫前日数に注意します。
(2)梅雨に入って降雨が続くようになると、斑点落葉病や褐斑病、輪紋病、炭疽病等の感染が増えてきます。また、気温も高くなりハダニ類などの害虫も発生してきます。週間天気予報などを活用して降雨の合間を捉え、散布間隔が空き過ぎないように防除を実施してください。
(3)本年は、褐斑病の発生が例年になく早く、5月に確認された圃場もあります。昨年、県中南部を中心に発生が見られたため、前年多発園では、防除速報や予察情報を参考に防除を徹底します 。
(4)黒星病は、重点防除時期を過ぎましたが、他病害との同時防除を兼ねて、本病に効果のある予防剤を定期的に散布してください。発病葉や発病果は摘み取り、土中に埋めるなど適正に処分します。苗木など未結果樹での発生も注意し、成木と同様に薬剤防除を徹底します。落花10 日後以降のEBI 剤の散布は、耐性菌が発現する恐れがあるので行わないでください。

ぶどう

1 生育概況

定点観測地点(紫波町)の「キャンベルアーリー」の調査結果では(表5)、開花始は6月7日、満開期は6月9日で平年より6~7日早まりました。
なお、一部園地では、4月25 日や5月9日などの低温により凍霜害が発生しています。

表5

2 栽培管理

(1)摘粒(詳細は5月25 日発行の「農作物技術情報第3号 果樹」を参照)
ア 果粒肥大を促すとともに、裂果や病害の誘発防止、着色向上といった品質確保に必要不可欠な作業です。
満開後30 日以内の終了を目標としますので、今年は7月上旬までに実施します。
(2)袋掛け
ア 時期は7月上旬以降できるだけ早い時期が良く、摘粒などが遅れる場合には、晩腐病の一次感染期を逃さずに防除し、その後、袋かけを行うことが大切です。
(3)摘房
ア 凍霜害が著しい園地では、果房はできるだけ残し、樹勢調整に利用するとともに収量を確保する必要があります。なお、薬剤防除や結果母枝の確保など、来年の生産に向けてできる限り通常の管理を実施してください。
イ 「キャンベルアーリー」では、表6を参考とし、葉数に応じて着房数を決定してください。
最終的には一坪(3.3 平方メートル)当たり、新梢数20 本、着房数27~30 房が基準となります。樹勢が弱い場合は、1房当たりに必要な葉数を参考に、葉数に応じて着房数を制限してください。
ウ 「紅伊豆」「シャインマスカット」などの大粒種では、1新梢1房以下が基本です。ただし、種あり栽培とする場合は、一気に摘房せず、強い新梢は、1新梢2房着果させておき、着色期前までに1房に摘房していきます。弱い新梢は、早期に1新梢1房とし、同様に着色期をめどに、伸長の程度に合わせて2~3新梢1房に調整していきます(表7、図5)。
エ 着色期以降も着果が多いままだと、着色や糖度上昇が遅れ収穫自体も遅れるなど、樹体の凍寒害の危険につながりますので十分に注意してください。

表6

表7 図

(4)土壌水分管理
ぶどうの果粒が柔らかくなってきた時期以降に、まとまった降雨や急激なかん水を実施すると裂果が助長されることがあります。
こうした園地では、点滴かん水等により少量の水を定期的にかん水することで裂果の発生を軽減できるといった報告がありますので、必要に応じて実施を検討してください。
かん水が実施できない園地では、稲わらなどを用いて、マルチを行います。
降雨が続く場合、雨よけハウスでは雨樋等を点検し、園地内に水が停滞しないよう、溝を掘るなど排水対策を行ってください。

3 病害虫防除について

(1)病害虫の発生状況に合わせて適期防除に努めてください。
(2)薬剤によっては、果粉の溶脱、果面の汚れなど品質を損ねることがありますので、使用方法・時期などに注意してください。

最後

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