農作物技術情報 第4号 野菜(令和5年6月29日発行)

ページ番号2007049  更新日 令和6年3月13日

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タイトル

  • 全般 降雨への事前対策として排水対策を徹底しましょう。
  • 施設果菜類 梅雨時期の草勢維持対策と病害虫防除を実施しましょう。
  • 露地果菜類 生育に応じた整枝管理と病害虫防除を実施しましょう。
  • 葉茎菜類 雨よけほうれんそうは、天候の変化に応じた適切な管理と病害虫防除を徹底しましょう。露地葉菜類は、病害虫防除の徹底と計画的な作業により良品出荷に努めましょう。

1 生育概況

(1)施設果菜類は順次収穫が行われています。一部で4月下旬から5月上旬に低温障害が見られましたが、生育は回復し概ね順調です。病害虫では、アザミウマ類やアブラムシ類の発生が目立ちます。
(2)露地果菜類の定植は平年並みの6月上旬までに終了し、生育は順調です。病害虫では、アザミウマ類、ヨトウムシの発生が見られます。
(3)雨よけほうれんそうの生育は概ね順調です。ホウレンソウケナガコナダニの被害は減少傾向ですが、アブラムシ類、ネギアザミウマの被害が見られます。
(4)高冷地キャベツの生育は平年より遅く、7月上旬から出荷開始の見込みです。コナガやタマナギンウワバ、ヨトウムシの発生が見られます。高冷地レタスの生育は概ね順調ですが、菌核病や斑点細菌病の発生が見られます。ねぎの生育は概ね平年並みで、土寄せ等の作業も順調に行われています。ネギアザミウマ、ハモグリバエの被害が散見され、べと病が広く発生しています。

2 技術対策

(1)梅雨期の降雨への対応

  • 明渠や暗渠の末端部分の詰まりなど排水対策の再確認を行います。
  • 集中豪雨などで圃場に滞水した場合は、速やかに排水を促し、通路の中耕等により根に酸素を供給するなどして草勢の回復を図ります。
  • 降雨によって泥はねが発生した場合は、天候回復後に殺菌剤の予防散布を行います。

(2)施設果菜類の管理

図1

ア 夏期高温期の昇温抑制対策
天窓や肩換気が有効ですが、それらが無い場合は、ハウスのツマ面の開放を行います(図1)。ただし、ハウスの肩より上部での換気は、強風により破損する恐れがあるので、注意してください。
遮光幕や塗布型遮光剤を利用する場合には、資材の種類や使用濃度により効果や持続性に差が出ますので、事前に資材の特徴や使用方法を十分確認してから使用してください。
梅雨明け後は、通路への散水や敷きわら等を行い、地温やハウス内気温の上昇を抑制します。また、近年ではハウス内の乾燥対策、高温抑制を目的にミストの活用も始まっていますので、興味のある方は農業改良普及センターにご相談ください。

イ きゅうり
半促成・早熟栽培とも上位葉が繁茂すると、群落内の採光性・通風性が悪化するため、45~50日経過した葉を中心に積極的に摘葉を行います。草勢維持のため、株当たり一度に2~3枚以内を原則としますが、主枝葉が25 枚程度展開した後であれば、一度に5枚程度摘葉しても問題ありません。特に伸ばす枝がある場合は、周囲の葉を先に摘葉します。
病害虫防除では、べと病、灰色かび病、アザミウマ類、アブラムシ類等の防除を基本とした薬剤を選定します。土壌病害であるキュウリホモプシス根腐病と疑われる症状が見られる場合は、最寄りのJA または農業改良普及センターへお問い合わせください(露地作型も同様)。

図2

ウ トマト
例年、着果負担から草勢低下を引き起こす事例が見受けられます。適正な摘果管理(図2)を行うとともに、生長点付近の状態(葉の巻き具合、茎の太さ等)を確認し、適切な養水分管理により草勢を維持します。
梅雨時期は、一時的な晴天による萎れ、落花等が発生しますので、適切な換気、遮光資材(遮光幕、塗布型遮光剤)の活用による強日射(高温)対策を実施します。
病害虫防除では、灰色かび病等の発生が多くなるため、換気を行い、防除に努めます。かいよう病や青枯病等の土壌病害は、発病株は速やかに抜き取り処分し、ハサミや手袋などをこまめに消毒しながら作業し、圃場内での二次伝染を防ぎます。

エ ピーマン
4本仕立ての整枝法は、「京ゆたか」では主枝第10 分枝まで側枝3~4節摘心、主枝第11 分枝以降は側枝2節摘心が基本です。「京鈴」「さらら」等の草勢が弱い品種は、下段側枝を2節程度で摘心し着果数を制限するとともに、かん水と追肥は少量多回数とし、草勢を低下させないよう管理します。曇雨天の継続や、着果負担が多く草勢が低下する場合は、ふところ枝の摘除や側枝の着果数を減らすなどして、主枝の伸長を促進します。
また、圃場への浸水により株元が過湿になると疫病が発生しやすく、逆に乾燥してくると尻腐果が発生しやすくなります。pF メーターを目安とした水分管理(目安:2.0 程度)を行うとともに、株元を乾かすような管理を心がけます。
病害虫防除では、灰色かび病、アザミウマ類等の防除を中心に行います。

(3)露地果菜類の管理

ア きゅうり
収穫量が増加してくる時期のため、追肥とかん水、摘果で草勢維持を図ります。特に乾燥気味の圃場では、かん水や敷きわらなどで土壌水分の保持を図ります。
1本仕立ての場合の生育中期~盛期における基本的な整枝、摘葉管理は表1のとおりです。なお側枝の発生が鈍い場合は強剪定を避け、根の発生を促すように管理します。
病害防除では、べと病や褐斑病、炭そ病等の斑点性病害の薬剤散布に重点をおき、疑わしい病斑が見られたら積極的に摘葉し、圃場外へ持ち出します。
害虫防除では、定植時に施用した粒剤の効果が切れてくる時期ですので、アブラムシ類を対象に、早めに薬剤散布を行います。

表1

図3

イ ピーマン
整枝は、ふところ枝と徒長枝を間引きます。降雨が少なく土壌が乾燥している時はかん水チューブなどによるかん水や、通路かん水などを実施します。近年では露地栽培でも点滴かん水装置などによるかん水が行われるようになり、尻腐果(図3)の被害軽減などに効果を上げています。
なお、尻腐果の混入低減対策については、令和4年度の試験研究成果を参考にして下さい( ホームページアドレスhttps://www.pref.iwate.jp/agri/nouken/seika/bunya/yasai.html)
梅雨時は灰色かび病に注意が必要です。また、定植時に施用した殺虫剤の効果が切れる時期になるので、アブラムシ類やアザミウマ類の防除を行います。さらに、7月下旬にはタバコガに注意します。

(4)葉茎菜類の管理

ア 雨よけほうれんそう
梅雨時期は、低温・日照不足から高温・多照へと急変することがあるので、換気や遮光をタイミングよく行い、萎れや徒長を防ぎます。病害防除では、べと病が発生しやすいので、ハウスの換気に努めるとともに、株間を広くして風通しを良くし、被害株は随時抜き取り処分します。例年発病の多い圃場では、予防散布を徹底します。
梅雨明け後は、ほうれんそうの生育には厳しい時期になるので、各産地で選定している夏播き用の品種を利用し、生育中のかん水を積極的に行います。かん水の目安は、土壌10cm 深のpF 値で、水田では2.3~2.5、畑では2.4~2.7 になった時です。この時期に発生する生育初期の立枯症状の多くは、土壌病害や高温障害、タネバエ等が原因です。見分け方は図1を参照してください。土壌病害の発生が多い圃場では、計画的に土壌消毒を実施します。害虫防除では、アブラムシ類等の発生に注意し、粒剤等による予防防除や発生した場合は直ちに薬剤散布を行います。

図4

イ キャベツ
コナガやタマナギンウワバ等の害虫の発生が増える時期を迎えています。定植時の薬剤の利用を徹底し、防除が遅れないように注意します。コナガは薬剤抵抗性が発達しやすいため系統の異なる薬剤をローテーション散布し、1系統1作型1回の使用にとどめます。
収穫が終了した圃場は、害虫の発生源になりますので、収穫後は早めに圃場を整理します。
結球期に降雨が続くと株腐病の発生が多くなります。結球開始期から株元にも十分薬液がかかるように薬剤散布を行い、圃場の排水対策についても確認します。
ウ レタス
すそ枯病、軟腐病、腐敗病等の腐敗性病害や灰色かび病の発生が多くなります。特に、大雨により病害が多発する場合がありますので、降雨の前後に重点を置いた防除とします。また、これから定植する作型では、排水の良い圃場を選んで作付けし、前作残渣の圃場外持ち出し、地温上昇を抑制するマルチの利用、適湿時にマルチを張る等の対策を心がけます。
高温期の過剰施肥は、変形球や腐敗の発生を招きやすいので、品種に応じた施肥量にするとともに、適期に収穫して品質の向上に努めます。
エ ねぎ
生育に応じた追肥、土寄せにより葉鞘の肥大伸長を促します。特に、早出しを狙う作型では、無理に土寄せを行って葉鞘が細くならないように注意します。また、大雨前後に土寄せを行うと軟腐病等の土壌病害の発生を助長しますので、作業のタイミングを計り、状況に応じて薬剤散布を行います。
べと病が発生しやすい時期ですが、べと病等の病害発生圃場では秋にかけて葉枯病(黄色斑紋病斑)が発生する傾向にありますので、秋までの計画的な薬剤散布を実施します。
害虫では、ネギアザミウマの被害が多くなる時期ですので、随時防除を実施します。

最後

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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