農作物技術情報 第4号 水稲(令和5年6月29日発行)

ページ番号2007047  更新日 令和5年6月29日

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タイトル

  • 多くの圃場で中干しの適期を迎えています。目標茎数を確保したら、直ちに中干しを始めるともに、溝切りを実施しましょう。
  • 今後の気象予報や生育ステージの動向をみながら、計画的な水管理に努めるとともに、いもち病・紋枯病、カメムシ類の発生動向に関する情報にも注意しましょう。

1 生育概況

生育診断予察圃における6月26日現在の生育(県平均)は、草丈が46.3センチメートル(平年差+8.6cm)、茎数は446本/平方メートル(平年比105%)、葉数は8.5葉(平年比+0.3葉)、葉色値は42.5(平年差+1.8)と、いずれも平年を上回っています(表1)。

表1 2

図1

2 6月下旬からの水管理

(1)中干し

中干

ア 中干し時期 (6月下旬~7月上旬)
茎数が目標穂数の8~9割に達したら、直ちに中干しを行ってください。
茎数は平年に比べ多い傾向にあり、十分に茎数が確保される見込みです。極端な生育不足がない限り確実に中干しを行います。

〔参考〕平方メートルあたり茎数の目安(目標穂数の8~9割)

  • 「ひとめぼれ」420本前後
  • 「金色の風」「銀河のしずく」350本前後
  • 「いわてっこ」内陸:390本前後、県北・沿岸:370本前後

イ 中干しの程度

  • 細かい亀裂が生じ、軽く踏んで足跡が付く程度まで乾燥する(図2)。
  • 落水を促し、中干しの効果を高めるため、溝切りをおこなう(図3)。
  • 十分乾いたら、1日湛水→2日落水 ⇒ 2日湛水 → 1日落水 と落水間隔を徐々に短くし、幼穂形成期頃には湛水管理とする。

根腐れ防止のため、中干し後の急な湛水は厳禁

表3

図23

(2)幼穂形成期~減数分裂期の水管理
特に低温時には、大量の用水を必要とするので、計画的な水位管理(図4)を心掛けます。
ア 前歴深水かんがい

  • 前歴深水かんがいは、低温から幼穂を保護して障害不稔を軽減できる技術です。
  • 幼穂形成期(図5)の数日前から徐々に水位を上げ、幼穂形成期に水深4~6cmとします。

イ 深水かんがい

  • 減数分裂期(図6)に低温が予想される場合は、水深10センチメートル以上を確保します。
  • 17℃以下の強い低温が見込まれる場合は水深15センチメートル以上とし、幼穂の保温を図ります。
  • なお、平年並~高めの気温が予想されるときは間断かんがいとします。

図4

図56

3 追肥

今後の追肥判断のためにも、葉色の変化に注意が必要です。良食味米生産の観点から、品種、気象・生育状況を見極めて、適期に適量を施用します。
詳しくは各地域で発行される技術情報等を参考にしてください。

4 いもち病対策

(1)葉いもち防除

図7

葉いもち(図7)は、気象条件により急激に広まるので、圃場の観察と早期防除を徹底します。
圃場をよく観察し、発生を確認したら、葉いもち予防粒剤(箱施用剤、水面・投げ込み施用剤)施用の有無にかかわらず、茎葉散布を実施します。

(2)穂いもち予防粒剤を散布する場合の留意点

  •  生育ステージをよく確認し、ラベル記載の散布時期を逸しないよう注意します。                               (生育ステージ…幼穂形成期:出穂23日前、減数分裂期:出穂11日前)
  • 圃場をよく見回り、葉いもちが発生している場合は茎葉散布してから粒剤施用します。

5 紋枯病対策

図8

  • 茎葉散布による防除は、穂ばらみ末期(7月末~8月上旬)に、畦畔際の発病株の割合(発病株率)が、早生品種で15%以上、晩生品種20%以上の場合におこないます。
  • 前年発生が多かった圃場では、予防粒剤による防除を実施します。

6 斑点米カメムシ類の防除対策

(1)防除のポイント

  • 斑点米カメムシ類の増殖源となる畦畔、牧草地、雑草地、農道などでは、イネ科植物が出穂しないよう管理を徹底します。
  • なお、養蜂活動が行われている地域で殺虫剤を散布する計画がある場合は、養蜂家と協議のうえ、散布時期を事前に通知するなど、ミツバチへの危害防止に努めてください。

(2)耕種的な防除対策

  • 斑点米カメムシ類は、畦畔や転作牧草等のイネ科植物が発生源となるため、水稲出穂の15~10日前までに地域一斉に草刈りを実施します(図9)。
  • 水田内の雑草も斑点米カメムシ類の増殖源となります(図10)。ノビエ・ホタルイ類・シズイが多発している圃場は、中・後期除草剤の使用等により、増殖源となる雑草の除去に努めてください。

図9,10

7 直播栽培の本田管理

(1)生育中期の水管理のポイント(図11)

  • 現在、県内の直播栽培の多くは鉄コーティング湛水直播方式ですが、本方式は茎数過剰となりやすく、また倒伏しやすい弱点があります。
  • ほ場をよく確認し、目標となる茎数(点播で60株/坪の場合は概ね20~30本/株)に達したら、直ちに「中干し」をおこないます。
  • また、倒伏に弱い品種(ひとめぼれ・あきたこまち等)で、穂ばらみ期に17℃以下の低温の恐れが無い場合は、「穂ばらみ期落水」で田面土壌硬度を高め、倒伏を軽減する対策(図12)も検討します。

図11,12

(2)病害虫防除

ア いもち病防除
(ア)葉いもち
コーティング時、または播種同時に殺菌剤を使用した場合であっても、7月20日頃(初発が早い場合や多発年は7月15日頃)から本田を巡回し、発生が無いか確認をします。
特に「ひとめぼれ」などの晩生品種では穂いもち予防剤の散布適期前に発生する場合があるので注意が必要です。発生時は、移植栽培の防除体系に準じて速やかに茎葉散布を実施します。
(イ)穂いもち
予防粒剤の水面施用(出穂20~10日前頃)、または出穂直前と穂揃い期の2回の茎葉散布を基本とします。

図13

イ イチモンジセセリ(イネツトムシ)
飛来性の害虫で、例年の発生は少ないですが、生育後半に葉色が濃い場合や、出穂が遅いほ場では大きな被害を受ける場合があります(図13)。こまめに観察し発生に備えます。

ウ 斑点米カメムシ類
畦畔の草刈りや除草剤の使用等による水田内の雑草の除去など、移植栽培と同様に防除を実施します。

(3)追肥

  • 耐倒伏性が弱い「ひとめぼれ」「あきたこまち」「いわてっこ」等では窒素成分量は移植栽培の基準よりやや控えめとし、様子を見ながら加減します。
  • なお、明らかに生育過剰と判断される場合や、中干しが十分できなかった場合は、「穂ばらみ期落水」又は倒伏軽減剤の使用も検討します。

最後

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