農作物技術情報 第3号 果樹(令和5年5月25日発行)

ページ番号2006979  更新日 令和5年5月25日

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タイトル

  • りんごの開花は、3~4月の気温が高く推移したことから、満開期で平年より13 日程度早くなりました。また、4月25 日の低温降霜による凍霜害が見られ、被害の大きい園地では着果不足、また、多くの園地で果実品質の低下が懸念されます。結実の状況を慎重に見極め、できるだけ良質果を残すよう摘果を進めましょう。
  • ぶどうの発芽及び展葉は、3~4月の気温が高く推移したことから、平年より10~12日早まりました。今後の気温の推移により生育の進みは変動しますので、開花期前後の管理を計画的に進めましょう。

りんご

1 生育概況

(1)開花期
生育診断圃の調査結果(表1)から、「ふじ」の開花始期は県平均で4月21 日(平年差-14 日、前年差-7日)、満開期は4月26 日(平年差-13 日、前年差-8日)、落花期は5月1日(平年差-12日、前年差-7日)となりました。
本年は、3月から4月の気温が高く推移し、発芽、展葉、開花期のいずれも平年より14 日早まりました。一方、開花期間前半の4月22 日から27 日には、日平均気温が平年を下回ったため(図1)、満開期及び落花期の平年差は、開花始期(-14 日)に比べ数日短くなる傾向が見られました。
なお、4月25 日に最低気温が凍霜害発生の安全限界温度(-1.5℃)を下回る地域がありました。雌しべの褐変など凍霜害の症状(図2~4)が確認され、一部地域では側花や腋芽花にも被害が見られています。作柄への影響については花芽の量や結実状況を考慮して確認する必要がありますが、果実品質の低下も懸念されています。

表1

(2)結実
開花期間中の4月22 日から27 日には日平均気温が低く(図1)、4月25 日の凍霜害、4月26日や30 日の降雨など(図1)、開花期間中の気象条件が結実に大きく影響すると考えられます。
県農業研究センターにおける結実率は表2のとおりですが、本年は、結実してもサビ果や奇形果の発生が懸念されるので、各地においても結実状況及び果実の外観については慎重に経過を観察し、良質果を収穫するために摘果の吟味が重要です。
 

図

図2

図34

表2

2 摘果

(1)通常時の摘果
ア 凍霜害が発生していない園地では、最初に1果そう1果とする予備摘果(あら摘果)を実施します。その際、不要な果そうの果実を積極的に除いていきます。その後、果実肥大や品質を確認しながら仕上げ摘果を進めます。
イ 摘果終了の目安は表3のとおりで、年により早期落果が多いデリシャス系品種は後期に作業を行います。なお、今年の落花期は平年より12 日程度早く(表1)、落花30 日後は5月31 日前後になります。作業を計画的に進め、早期摘果を心がけてください。
ウ 三角実や扁平果など、果形の悪い果実、病虫害果、傷果を中心に摘果していきます。
エ 果実は横の発育が良く、果硬が太くて長い正形果を残します。
オ 果台が極端に長いもの(25mm 以上)や短いもの(10mm 以下)は、斜形果の発生割合が高くなるので、できるだけ摘果します。

表3

(2)凍霜害発生園地における摘果の要点
凍霜害の発生した園地では、さび果、奇形果などの障害果の発生が懸念されます。摘果作業は被害様相が明らかになり、結実を確認してから行います。また、結実しても、サビ果や不正形果が多いので、予備摘果は多めに残し、仕上げ摘果でよい果形のものを残すように吟味してください。また、中心果が被害を受けた場合は、果形、肥大が良好で障害が少ない側果を利用します。
なお、仕上げ摘果の終了時期は、翌年の花芽確保のため、過度に遅れないよう注意します。

3 病害虫防除

(1)病害虫防除所が発行する発生予察情報を参考に防除を進めてください。昨年来、発生が目立っている黒星病やリンゴハダニ、キンモンホソガにおいては注意報が出されています。今後これらの発生動向には十分注意が必要です。
(2)6月は斑点落葉病など様々な病害の感染時期です。梅雨期は週間天気予報などを活用し、降雨の合間を捉えて、散布間隔が空き過ぎないように防除を実施してください。
(3)黒星病については、他病害との同時防除を兼ねて、本病に効果のある予防剤を定期的に散布してください。その際には散布ムラがないように丁寧に散布します。また、降雨が予想される場合は、降雨前に散布を行ってください。なお、落花10 日後以降のEBI剤の散布は、耐性菌が発現する恐れがあるので行わないでください。
さらに、園地を見回り発生が確認された場合は見つけ次第、発病葉(図5)や発病果(図6)を摘み取り、土中に埋めるなど適正に処分してください。苗木など未結果樹での発生にも注意し、成木と同様に薬剤防除を徹底します。
(4)ハダニ類は、気温の上昇とともに増える可能性があります。新梢葉で寄生葉率が30%に達したら、速やかに防除を行ってください。

図5

ぶどう

1 生育概況

紫波町の生育診断圃調査結果によると(表4)、3月から4月の気温が高く推移したため、発芽期は4月20 日と平年より12 日、前年より6日早くなり、展葉期も平年より10 日、前年より5日早くなりました。
4月25 日には、最低気温が展葉期の凍霜害発生限界温度(一葉~三葉期-2.0℃、表5)を下回る地域がありました。また、5月9日は最低気温が0℃前後となったことから、園地によっては凍霜害発生限界温度を下回った可能性があるため、今後は慎重に経過を観察する必要があります。
なお、5月18 日発表の一か月予報によると「気温は高い」との予報です。これから開花期にかけては管理作業が重なり忙しくなりますので、生育状況や気象情報をしっかり確認し、計画的に作業を進めて開花前の管理が遅れないよう注意します。

表4

表5

2 凍霜害の事後対策

(1)被害程度別の対応
ア 一部の葉(1~2枚程度)が褐変枯死した場合
対策の必要はありません。ただし、葉が少なくなることで果房への養分が不足し、花振るいを起こしたり、熟期遅延となる場合もあるため、慎重に経過を観察してください。
イ 新梢先端を含む葉が枯死した場合(花房への影響なし)
枯死部を取り除き、着房させ、房の良否が確認でき次第、摘房します。なお、摘房時期が遅くなった場合は着房数は制限します。その後、発生した副梢は以下のように扱います。
(ア)新梢先端のみが枯死した場合は先端付近から出た副梢を利用する。
(イ)花房周辺の葉が枯死した場合は、周辺の副梢葉を残し代用する。
(ウ)副梢の発生が多い場合は葉を2枚程度残して摘心する。
ウ 基部数節を残して、その先全体が枯死した場合
基部1節を残して枯死部は除去します。1節目の副梢または基底芽の新梢を養成し、次年に備えます。着房した場合は樹勢調整に利用します。
エ 新梢全体が枯死した場合
基部付近の基底芽(不定芽)から発芽した新梢を養成し、次年に備えます。着房した場合は樹勢調整に利用します。
(2)その他
ア 被害程度を問わず病害虫防除は通常どおり実施する。
イ 枯死した新梢は切り取り処分する。
ウ 被害程度の激しい園地でも、次年度に備え最低限の管理は実施する。

2 開花期前後の栽培管理

(1)新梢の誘引
展葉7~8枚頃に、2回目の芽かき作業に合わせて良く伸びた新梢から誘引します。
(2)花穂の整理
ア 「キャンベルアーリー」は、開花前に3穂着生している新梢については、1穂落として2穂とし、全体で目標着房数の1~2割増の着生数とします。
イ 「紅伊豆」は、最終房数は1新梢1房とします。摘房の時期は、新梢の強弱を判断して強勢のものほど摘房を遅らせ、着色期を目途に最終着房数とします。
ウ 無核化する品種では、花穂の整形と併せて摘穂を行います。摘穂の目安は、ジベレリン処理により着粒が安定するため、最終着房数の1.5 倍程度とします。
(3)花振るい防止
ア 「キャンベルアーリー」は、強めの新梢を開花7~4日前に房先5~7枚の葉を残して摘心します。
イ 大粒種で花振るいが強い品種や園地では、植調剤を使用することにより花振るいを軽減(着粒増加)できます。使用する際は、品種毎の登録内容を十分に確認し、使用時期や希釈倍率に注意して使用してください。
(4)花穂の整形(図7)
ア 「キャンベルアーリー」では、摘心作業と同時に花穂の副穂を切除し、下端を切り詰めます(尻止め)。また、主穂が長すぎる場合は上段の枝梗を1~2段切除します。
イ 「紅伊豆」などの大粒種は、1~2輪開花し始めた頃から先端部を切り詰めます。「紅伊豆」では副穂を切除し、主穂の基部から4~6段を切除して10~13 段程度を残すように整形します。
ウ 「サニールージュ」では開花初期(副穂の開花が始まった頃)に副穂を除去し(長い花穂は上部支梗を1~3段除去)、花穂の長さを概ね7~8cm とします。なお、花穂の先端は切りつめません。
エ 「シャインマスカット」では開花初期(副穂の開花が始まった頃)に副穂と上部支梗を切除し、花穂の長さを概ね4cm とします。花穂の先端は切りつめません。また、花穂先端が2つに分かれ使えない場合は、第1枝梗を利用します。

図7

(5)無核化処理
無種子化のため、「安芸クイーン」などの「巨峰系4倍体品種」、「サニールージュ」、「シャインマスカット」に対して遅れずに処理を行います。
なお、植調剤を使用する際は、品種毎の登録内容を十分に確認してください。
(6)摘粒
ア 果粒肥大を促し裂果や病害の誘発を防ぎ、着色向上など品質確保に不可欠な作業です。果粒の大きさが小豆から大豆くらいの大きさとなる満開後30 日以内に終了するのが目標です。
イ 1果房当たり「キャンベルアーリー」、「ナイアガラ」は70 粒程度、「サニールージュ」は50粒程度とし、二つ折りになる状態を目安に行いますが、縦に1~2列(2列の場合は表側1列と裏側1列)摘粒する方法や段抜きなどの簡便法もあります(図8)。
ウ 「紅伊豆」、「ハニーブラック」は1果房当たり30~40 粒、「安芸クイーン」は25~30 粒、「シャインマスカット」は40~50 粒程度とします。最上位に4粒程度着粒させ、下部に行くほど徐々に着粒数を減らし、下端は1粒となるようにします(図9)。

図8

3 病害虫防除

(1)ぶどうの開花期前後は、灰色かび病の発生時期です。生育ステージに合わせて、適期防除に努めてください。なお、灰色かび病等の薬剤抵抗性回避のため、同一系統薬剤の連用はしないよう注意してください。
(2)露地栽培で有袋栽培をする場合、防除後、薬剤が乾いたら速やかに袋かけをしてください。

最後

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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