農作物技術情報 第3号 野菜(令和5年5月25日発行)

ページ番号2006977  更新日 令和6年3月13日

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タイトル

  • 全般 排水対策の実施、かん水設備の導入について検討しましょう。
  • 施設果菜類 温度管理の徹底、草勢維持、病害虫防除に努めましょう。
  • 露地果菜類 土壌水分と地温を確保し、活着促進に努めましょう。
  • 葉茎菜類 雨よけほうれんそうは、ハウスの換気を徹底し、適切なかん水を心がけましょう。露地葉菜類は、害虫の発生状況に応じた早めの防除を行いましょう。

1 生育概況

(1)施設果菜類は、きゅうり、トマト、ピーマンとも収穫が始まっており、生育は概ね平年並みですが、一部地域で定植後の低温により生育がやや遅れています。病害虫では、アブラムシ類、アザミウマ類の発生が見られています。
(2)露地きゅうり、露地ピーマンとも定植が始まっており、例年並みの5月下旬~6月上旬頃が定植のピークとなる見込みです。
(3)雨よけほうれんそうは、概ね良好な生育となっています。病害虫では、ホウレンソウケナガコナダニの被害が広く見られています。
(4)ねぎ、高冷地のレタス・キャベツは順次定植され、生育は概ね順調です。

2 技術対策

(1)圃場の排水対策とかん水(共通)
例年、施設・露地共に排水不良が原因と思われる生育不良が見受けられます。水田転作の場合は、水路等の点検整備を行い、圃場外からの水の浸入防止に努めるとともに、降雨後の排水を促すための明渠・排水溝の設置、高うね栽培とします。排水不良が十分改善されない場合は、耕盤破砕や補助暗渠の設置も検討してください。

写真1 左:ハウス周囲の明渠設置状況、右: 降雨時の排水路への排水状況

排水良好な圃場では、かん水を行うことにより生育促進、収量向上、施肥効率の改善などの効果が現れます。近年、定植直後や夏期などは高温による乾燥気象となる傾向にありますので、露地果菜類においても簡易点滴かん水装置などのかん水設備の設置・導入を検討してください。

(2)施設果菜類の管理
日中の最高気温が30℃を越えないよう、こまめな換気を行うなど、温度管理の徹底に努めます。果菜類全般に、気温の上昇とともに収穫量が増加し、逆に草勢は低下してきますので、長期安定生産に向けて追肥やかん水、整枝、誘引などの作業を遅れないように実施し、草勢の維持に努めます。
ア きゅうり
草勢が低下している場合は、雌花を摘花します。また、側枝の発生が弱い場合は枝整理を遅らせる等、草勢の確保に努めます。
定植時期が早い半促成作型等では群落内への採光・通風を改善するため、展葉してから45~50 日経過した葉を中心に積極的に摘葉を行います。草勢維持のため、株当たり一度に2~3枚以内を原則としますが、主枝葉が25 枚程度展開したあとであれば、一度に5枚程度摘葉しても問題ありません。
イ トマト
第5~6段花房開花以降、急激に草勢が低下するケースが多いことから、第1~3段花房において適切に着果制限を行うともに、生長点が細くなる等の草勢低下の兆候が見える前から、(1)基肥の肥効を維持させながら早めの追肥を実施する、(2)適正着果数に調整し追肥を行ってからホルモン処理をするなどの草勢維持管理を徹底します。
かん水は、第3花房の開花期から、1~2日に1回の割合で1株あたり1L程度を目安とし、生育に合わせてかん水量を徐々に増やしていきます。ただし、降雨や曇天の日はかん水量を晴天時の半分から1/3 とし、梅雨等で降雨が続く場合はかん水量をさらに減らします。
6月は好天時に尻腐れ果の多発や急激な気象変動による生長点の萎れが発生する傾向にあります。
今後の生育や天候に留意し、それに見合ったかん水を行います。また、畝を黒マルチで被覆している場合は、根の活性適温(地温15~22℃)を維持するため、通路と畝の肩まで白黒ダブルマルチで被覆し、地温上昇を防止します。
ウ ピーマン
他の果菜類より根域が浅く狭い傾向があるので、着果数や葉数が増加する時期は土壌水分が不足しないようにかん水量や回数を増やします。
初期はV字型(直立ぎみ)、主枝が伸びてきたらU 字型(開帳ぎみ)に誘引しますが、品種によって草勢が異なるため、生育を見ながら調節し、生長点が上向きになり主枝が優先するように誘引します。草勢が弱い場合は、側枝を2~3節で摘心して主枝を強く伸ばし、過着果にならないよう摘果します。
エ 病害虫管理
病害では、低温時にハウスを密閉すると湿度が一層高まり、灰色かび病の発生が助長されることから、殺菌剤の予防散布を行います。また、細菌病や、ウイルス病の感染拡大を防ぐため、わき芽取り、整枝及び摘葉は傷口が乾きやすい晴天時に行います。
害虫では、アブラムシ類、アザミウマ類及びコナジラミ類などの発生が今後目立ってきますので、ウイルス病の感染防止の観点からも発生初期の防除やハウス内外の除草をしっかり行います。

写真2:排水の違いによるきゅうりの根の状態(左:排水良好、右:排水不良)

(3)露地果菜類の定植と定植後の管理
ア きゅうり
生育初期に十分に根群を発達させることが、長期安定生産を実現する重要なポイントです。これは、キュウリホモプシス根腐病対策としても非常に重要な基本事項ですので、以下のとおり定植から定植後1ヶ月間の初期管理をしっかり行い、根群発達を促します。
初期生育を良好にするため、防風対策をしっかり行うとともに土壌水分が適湿な状態でマルチを張り、15℃以上の地温を確保してから定植します。
定植作業は晴天日を選んで行い、根鉢の部分が乾いたら株元にかん水するなど活着を促します。また、定植直後の防風保温対策として、ポリキャップなどの利用が効果的です。
定植後、本葉10 枚ころまでに主枝の7節以下の雌花と5節以下の側枝は早めに除去し、着果させる節位は必ず30cm 以上で8~10 節からとします。ただし、節間が短い場合や生長点が小さい場合は着果させる節位を2~3節上げ、草勢の確保に努めます。6~8節から発生した側枝は1節摘心、それ以上から発生した側枝は2節摘心、孫枝は1節摘心を基本とします。
病害では、梅雨時期は、「黒星病」「斑点細菌病」「べと病」を重点とした薬剤を選択し予防散布に努めます。なお、最近、一部地域で黒星病対象薬剤の耐性菌が発生している事例が見られますので、薬剤散布の効果が見られない場合は最寄りの農業改良普及センターに相談してください。

イ ピーマン
ここ数年、収穫初期からの尻腐果の発生が問題となっています。尻腐果は石灰欠乏が要因で、土壌の乾燥や過湿など根の活力低下が発生を助長します。そのため根量が少ない生育初期は、地温18℃以上の確保や適切な土壌水分を維持するため、マルチの設置は適切な土壌水分の時に行い、定植まで1 週間以上を確保します。
トンネル栽培は、日中にトンネル内が高温になりやすく、生育障害(葉焼け、落花等)が発生しやすいため、被覆資材を開放して換気を行います。有孔フィルムは、最低気温が17℃を超える頃を目安に除去しますが、低温が予想される場合は被覆期間を延長します。かん水設備がない圃場では尻腐れ果の発生が懸念されますので、カルシウム資材の葉面散布を行います。
露地栽培では、定植後は株元かん水により活着と生育の促進を図るとともに、仮支柱に固定し風による倒伏を回避します。
露地およびトンネル栽培の整枝は主枝4本仕立てで側枝は放任とします。3本分枝は過繁茂の原因となりやすいので、誘引開始時までに整理します。第1分枝の下部より発生するわき芽は随時かきとり、誘引後はふところ枝が過繁茂にならないように適宜剪除します。
誘引は、うねの両側に支柱を立てマイカー線やフラワーネットなどを高さ50~60cm で水平に1~2段張り、枝が垂れ下がらないようにします。

写真3:ホウレンソウケナガコナダニの被害状況(芯止まり、葉の奇形)

(4)葉茎菜類の栽培管理
ア 雨よけほうれんそう
これからは日長が長くなり、抽だいしやすい条件になるので、抽だいしにくい品種を用いることを基本とします。
近年、6月でも高温になることが多く見られるので、換気を徹底しハウス内の温度が上がりすぎないように注意します。また、生育が停滞しないよう播種時のかん水は十分行い、本葉3~4枚以降は圃場の乾燥状態に応じて生育中のかん水を行ってください。
高温傾向になると、萎凋病を中心とした土壌病害が早くから発生することがあるので、例年土壌病害の発生が多い圃場では、計画的に土壌消毒を実施してください。
最近は、べと病レース7までの抵抗性を持った品種の作付けが多くなっていますが、抵抗性を打ち破るべと病が発生する可能性があります。梅雨入りの平年値は6月15 日頃で、ハウス内の湿度が高まりやすくなるので、ハウスの換気とともに、適用のある殺菌剤の予防散布を心がけてください。
現在、ホウレンソウケナガコナダニの被害が広く見られているので、次の防除対策を徹底してください。

  • 未熟な有機物(ワラ、モミガラ、堆肥等)を施用しない。
  • 被害の見られる株や残さはハウス外に持ち出し処分する。
  • 生育中のかん水を行い、収穫直前まで圃場の表面が湿った状態を保つ。
  • 農薬による防除は、農薬使用基準を遵守し、土壌処理剤と茎葉散布剤を併用する。茎葉散布剤は、ムラなくかかるように必要な量を丁寧に散布する。

また、アブラムシ類の発生が見られる場合は、適用のある殺虫剤で防除します。ホウレンソウケナガコナダニに適用のある殺虫剤は、アブラムシ類に効果のないものが多いので、注意が必要です。

イ キャベツ
既にコナガ、タマナギンウワバ、ヨトウガの成虫の発生を確認しています。
これからコナガの重点防除時期になるので、幼虫の発生を確認したら早めに防除を行います。また、これから定植する作型では、必ず育苗期後半~定植時に殺虫剤を施用します。
ヨトウガは、今後の発生予察情報に留意し、適期防除に努めます。なお、同系統の薬剤の連用とならないように注意して防除します。

写真:幼虫の食入痕と成虫による吸汁・産卵痕

ウ レタス
ナモグリバエの重点防除時期である5月中旬~7月中旬は、定植直後から加害が始まるので、育苗期~定植時のセルトレイ施用剤が効果的です。散布剤による防除は、葉の被害を観察して実施してください。
【散布剤による防除適期の判断方法】(写真参照)
最上位葉から数えて、2~4枚目の葉を観察し、幼虫の食入痕が見られた場合(写真の2、4葉にみられる被害程度)が、茎葉散布による防除適期です。

エ アスパラガス
普通作型のアスパラガスでは、L品の割合が20%以下になった頃が収穫終了の目安です。立茎栽培(二季どり栽培)を行う場合には、さらに早く春芽(立茎前の萌芽)の収穫を終了します。
春の収穫が終了した後、茎葉が繁茂する前から、斑点病、茎枯病を対象とした殺菌剤を予防散布します。なお、近年多発傾向にある茎枯病は、萌芽直後2週間以内の茎で特に感染しやすいため、立茎開始直後が最重点防除時期になります。倒伏防止用のフラワーネット等の利用や雑草防除により、通風や日当たりを良くするように心がけます。薬剤のローテーション散布、ひこばえや実こぼれ苗の除去、適正な立茎本数と下枝除去による過繁茂防止、降雨による泥はね防止対策も併せて実施します。
また、アザミウマ類が発生し始める時期ですので、発生を確認したら速やかに防除を行います。
オ ねぎ
定植後1ヶ月程度たってから培土を開始し、その後も生育状況を見ながら追肥、培土を行います。
生育が遅れている圃場は、無理な培土を行わず、生育に合わせた作業を心がけます。
アザミウマ類やネギコガ、ヨトウムシ類の発生が見え始める時期ですので、初期防除に努めてください。

最後

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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