農作物技術情報 第1号 果樹(令和5年3月23日発行)

ページ番号2006824  更新日 令和5年4月5日

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タイトル

  • 令和5年産の花芽数は平年並みに確保されていますが、弱小花芽はやや多いため、人工授粉による結実確保と摘花による着果負担の軽減に努めましょう
  • 3月の気温が高く推移すると発芽やその後の生育は早まります。凍霜害など気象災害発生のリスクも高まるので、今後の気象情報には十分注意し、管理作業や災害対策が遅れないようにしましょう。

りんご

1 花芽の状況

(1)令和5年産のりんご花芽率を県平均の平年と比較すると、「ジョナゴールド」は高く、「ふじ」
は平年並みであり、弱小花芽率はいずれの品種も高め(表省略)となっています。
(2)また、前年(令和4年産)の花芽率と比較すると、「ジョナゴールド」、「ふじ」ともに低く(表1)、弱小花芽は、「ジョナゴールド」は前年並み、「ふじ」はやや高めとなっています。
(3)花芽調査の結果から、今年の結実率が平年並みを確保できれば、平年並み以上の作柄は期待できると推察されます。
なお、「ふじ」の花芽率は概ね平年並みですが、弱小花芽もやや多いので、果実肥大の促進や隔年結果を防止するため、早期の摘花果による着果負担の軽減が重要です。剪定にあたっては、それぞれの花芽の状況を観察し、管理作業の効率化、受光体制の改善、農薬の到達性などに留意しながら実施します。

表1

2 発芽予測

(1)発芽が記録的に早まった令和3年や一昨年と同様に本年の3月の気温は高く推移しています(図1)。

図1

(2)3月10 日時点の「ふじ」の発芽予測では(表2)、予測日以降の気温が平年並で推移した場合、県平均で平年の発芽日より5日早い4月2日に発芽すると予測されます。
(3)また、3月9日仙台管区気象台発表の1カ月予報では、向こう1カ月の平均気温は高いと予報されています。よって、表2の「2.0℃高い」の予測結果で経過する可能性もあると考えられ、その場合は平年より10 日程度早まり令和3年並みとなる可能性があります。
(4)今後も気象予報には十分に注意し、発芽が早まる可能性が高いことを念頭におきながら、管理作業や防除、気象災害対策が遅れないように注意してください。

3 作業の留意点(凍霜害対策)

(1)整枝剪定
発芽時期や防除開始時期が早まることも予想されますので、整枝剪定作業や片付けは早めに終了させ、今後の作業の遅れが生じないようにします。
(2)凍霜害防止対策
りんごの花器は、開花期に近づくにつれ、低温耐性が下がってきます(図2)。
令和3年度の凍霜被害は、3月までの高温により展葉までの生育が10 日以上早まったところに、4月の寒気による低温や放射冷却現象による降霜によって発生し、大きな被害となりました。このため、特に3月の平均気温が平年を上回る場合には、凍霜害回避に向けた早めの対策が必要です。

図2

ア 燃焼法
令和3年の実施時期は、最も早くて4月6日、回数は低温降霜が少なかった地域でも2~3回は実施する必要がありました。燃焼法は一定のコスト(30,000 円/10a 程度)がかかるため、被害が多かった圃場では、低温になりやすい場所など地形も考慮して設置するなどの配慮が必要です。
イ 防霜ファンや散水氷結法に係る設備の点検整備
生育が早まった場合でも稼働できるよう点検整備を早めに行います。
畑かんがいを利用して散水氷結法を行っている地域は、4月から利用できるよう関係機関を含めた検討を行います。
ウ 霜溜まりの解消
傾斜地の場合、園地下方の障害物は、霜溜まりを作りやすいので除去します。例えば、園地周囲の防風ネットが冷気の流れをせき止めるような場合は、巻き上げておくか除去します。
低温層の発生位置をできるだけ低くするため、マルチを除去し草刈り等で清耕状態にしておきます。

4 病害虫防除

(1)生育は平年並みの見込みですが、休眠期や発芽期の防除タイミングを逃さないよう、生育状況をよく確認するとともに、薬剤や用水の確保を進めます。
(2)生育が進むと病害虫の早期発生も懸念されるため、それぞれの園地の発生状況や、病害虫防除所が発表する発生予察情報等を参考に、適時適切な防除に努めます。
(3)県内では黒星病が広く発生しております。その被害を防ぐためには、春先の防除対策が最も重要です。具体的な防除対策は、令和5年3月1 日発行の令和5年度農作物病害虫発生予察情報発生予報第1号を参考としてください。
主な黒星病対策として、被害落葉は芽出前までに処分します。重点防除時期である花蕾着色期及び開花直前に、効果の高い薬剤を散布します。改植等で苗木を定植する際は、菌が苗木先端の頂芽にりん片越冬している可能性があるため、定植後は必ず頂部先端を切り返します。そして、苗木および未結果樹についても、成木と同様に春先から薬剤防除を徹底してください。

5 肥料コスト低減に向けて

肥料・燃油価格の高騰が進む昨今ですが、必要な資材までも安易に使用を控えると収量や品質に悪影響を与えてしまいます。このため、肥料については、土壌診断に基づく適正施肥、たい肥等有機物の活用、施肥量低減技術の導入、肥料銘柄の見直しや調達方式の改善等によりコスト低減に努めます。
岩手県では、肥料コスト低減に向けて下記のマニュアルを発行し、岩手県ホームページに掲載しています。是非一度、お手持ちのパソコンやスマートフォンから確認してください。
岩手県肥料コスト低減対策マニュアル(令和4年1月)
https://www.pref.iwate.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/049/686/hiryoukoutoumanyuaru0406.pdf

最後

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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