農作物技術情報 第9号 畜産(令和4年11月24日発行)

ページ番号2006080  更新日 令和4年11月24日

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タイトル

  • 牧草・飼料作物 施用した肥料が確実に牧草や飼料作物に効くように、土壌診断に基づきpH 矯正等を検討し、来年の収量や品質アップにつなげましょう。
  • 子牛の飼養管理 子牛は、被毛や皮下脂肪が少ないため、寒さの影響を強く受けます。休息場所は、風が直接牛体に当たらないようにするとともに、牛床を乾いた状態に保ちましょう。また、換気にも気を配りましょう。晩秋期から冬季にかけて、体温維持に多くのエネルギーが必要になるので、代用乳の給与量や濃度等を検討するとともに、水とスタータをしっかり摂取させましょう。
  • 作業事故防止 冬期は転倒事故が起きやすいため、危険個所の点検、改善に努め事故を防止しましょう。

1 牧草・飼料作物

(1)施肥の効果を高めるために
土壌の肥料成分に過不足が生じると、欠乏症による作物の収量低下や、過剰な栄養素の飼料への蓄積による家畜の疾病を招きます。次年度の肥料効率を高めるために、土壌診断を実施する分析機関の指示に従って、収穫終了後から次作耕起前までに土壌診断を行います。                                                                                (2)肥料成分の吸収を左右する土壌pH の改善
pH は、7付近が中性、7から小さくなるほど酸性、7より大きくなるほどアルカリ性が強くなります。土壌pH の一般的な適正値は6.5 程度です。土壌pHが低くなると、作物の生育に必要な窒素、リン酸や微量要素が吸収し難くなります(図1)。
土壌診断の結果は、最初に土壌pH が適正か否かを確認してください。牧草・飼料作物の最適pH は、6.0~6.5 です。                                                     

図1

(3)土壌診断に基づいた施肥設計
土壌診断結果と土壌改良目標値(表1)を照し合せ、土壌化学性(肥料成分)の過不足を確認します。不足している肥料成分は充足させ、そのうえで、土壌に過剰蓄積している肥料成分を、次作の化学肥料から減らします。堆肥を散布する場合は、堆肥に含まれる肥料成分も加味して化学肥料を減らすことができます。詳細な設計は、最寄りの分析機関や指導機関にお尋ねください。

表

2 子牛の飼養管理

(1)体熱の確保                                                        ア 出生子牛のケア
出生直後は、体が濡れた状態であり体熱が著しく奪われます。放し飼いなど母牛が子牛を舐めることができる環境であれば舐めさせ、子牛の体を乾燥させるとともに血流循環を高めます。つなぎ飼いなどで母牛が子牛を舐めることができない場合は、人が清潔なタオルや稲わら等で子牛の体を拭きます。特に和牛子牛は、乳牛の子牛よりも寒さに弱く疾病をおこしやすいので留意します。保育器(カーフウォーマー 写真1、2)を使って、出生子牛を素早く乾燥することも有効です。保育器利用の場合は、子牛のへその緒を消毒してから利用し、利用後は次の子牛の病原菌感染を防ぐため、洗浄・乾燥してください。

写真12

イ 休息場所
子牛の休息場所では、すき間風が子牛に当たらないようにすき間を板やシートで塞ぎます。
休息場所がコンクリート床で冷えが伝わりやすい場合は、断熱のために牛床マットを敷くまたは敷料を厚めに敷き、体熱の損失を緩和します。敷料は、こまめに交換し牛床が乾燥した状態を保ちます。
舎外のカーフハッチは、風がハッチの後部から当たるように向きを変え、盛土や砂などで地面よりも高く設置するなど位置を調整することで、風の吹き込みと雨水の侵入を防ぎ、ハッチ内が乾燥した状態を保ちます。
ウ 保温ジャケットや加温器
カーフジャケットやネックウォーマーの着用(写真3)、カーボンヒーター(写真4)など加温器の活用も効果的です。ジャケットやネックウォーマーは定期的に洗い、衛生的に保ちます。

写真34

(2)換気
牛舎の中で子牛を飼養する場合、保温のため牛舎を密閉するとアンモニアがこもり、湿度も高くなります。このような環境では、病原菌が増殖しやすく、肺炎や下痢が多発します。牛舎に入った時、目がチカチカするような場合は、アンモニアがこもっている可能性がありますので、子牛の体に直接風が当たらないように、入り口や窓を開放したり換気扇を作動させたりして換気を行います。なお、アンモニアは空気より比重が軽いので牛舎上方に、湿気や二酸化炭素は牛舎下方に溜まりやすいので、換気する際は、牛舎上方・下方の両方の空気を入れ替えるようにしてください。
(3)エネルギーの補給
寒冷時は、特に出生から3週齢までの子牛でエネルギー要求量が増加します。代用乳は、給与回数を増やすなどして給与量を1~2割増やす、または脂肪含量の高いものを用いる、濃度を指標の範囲内で濃くする、などでエネルギー給与量を増やします。また、外気温が低いので、代用乳給与時の温度が39~40℃となるようにお湯の温度をやや高めにし、ほ乳ロボットではミキサの保温温度を少し上げ飲み残し排出時間を短めに設定します。
また、スタータをしっかり採食させることも大切なので、十分に飲水できるようにします。水飲みバケツの場合、ほ乳後20~30 分位したらぬるま湯を与えます。集団飼育では、熱帯魚用のヒーターを使用するなど水槽の凍結防止を工夫し、水槽の水を1日1回以上交換します。
(4)踏み込み消毒槽の凍結対策
消毒液の汚れや凍結に留意します。厳冬期には消毒液のかわりに消石灰を利用することも検討ください。

3 作業中の事故防止

冬期間は濡れや凍結箇所で足を滑らせることによる転倒事故が増えます。危険箇所の点検を行い、濡れや凍結箇所の改善、滑り止め材や凍結防止剤の散布等により対策を講じます。牛舎内では整理整頓や照明器具の掃除・点検により、明るさを確保することも事故防止に有効です。

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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