農作物技術情報 第8号 畜産(令和4年10月27日発行)

ページ番号2005756  更新日 令和6年3月13日

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タイトル

  • 牧草地 晩秋の堆肥散布で、翌春の化学肥料を低減しましょう。併せて、土壌pH の改良も行いましょう。
  • 子牛 外気温が下がってきました。防寒対策の準備をし、発育の維持を図るとともに、呼吸器疾病の発生を防止しましょう。

1 牧草地管理

(1)早春代替施肥としての堆肥散布

堆肥散布は、早春の萌芽期に行うのが効果的ですが、晩秋でも翌春の化学肥料を代替する力があります。堆肥に含まれる成分、特に窒素は、全量を化学肥料として計算することはできません。肥効率は畜種によって異なり、牛ふん堆肥であれば、堆肥中の窒素含量の1~2割が肥料分として翌年の牧草生産に利用されます。土壌分析値を考慮し、窒素に加え、リン酸、カリの各成分で余剰施用がないように堆肥の散布量を決定します。翌春は不足した成分のみを施肥してください。
堆肥散布後、堆肥の塊がある場合は、裸地化を回避するため、「パスチャーハロー」などで堆肥の塊を砕いてください。

(2)石灰資材の施用

牧草地の土壌pH の目標は、6.0~6.5 です。牧草地は、化学肥料の連用や降雨によって、経年的に酸性化していきます。石灰資材を施用すると、土壌pH が上がり、化学肥料の肥効を良くし、土壌微生物の活動を活性化する働きがありますので、土壌pH の改良は優先的に行ってください。酸性化を抑制する等のために必要な石灰量は、年間約100kg/10a です。

2 子牛の防寒対策

子牛は、その体重に比べて表面積が大きいため熱が奪われやすく、体脂肪の蓄積が少なく、ルーメンでの飼料の発酵熱が少ないため、寒さに弱いという特徴があります。乳用子牛では、生後3週齢までは気温が15℃以下で、3週齢以降の子牛では5℃以下で寒冷ストレスを受けるとされています。牛体に風が当たる環境、牛体が濡れた状態であれば、5℃より高い気温でも寒さの影響が強く現れます。
防寒対策が不十分だと、「体温維持のため体を震わせ、被毛を伸ばすことでエネルギーを余計に消費する」、「抵抗力が落ちるうえに冬場の乾燥とあいまって肺炎や風邪などの呼吸器系疾患にかかりやすくなる」などの状況に陥ります。このため、子牛の防寒対策である保温と清潔、換気の3つの重要なポイントにしっかりと対処します。

(1)保温と清潔

ア シートやコンパネ等を用いて、子牛の飼養場所のすき間風を防ぎ熱が奪われないようにします。
イ 子牛の休息場所に牛床マットを設置することや、休息場所の敷料を厚めに敷くことで、床からの冷えの伝わりを防ぎます。腹部の毛の伸びが目立つようであれば、腹が冷えていると思われるので、敷料の厚さや交換頻度を見直します。
ウ 牛体が糞尿で濡れた状態は、不衛生なうえ寒さの影響が大きくなり、下痢や肺炎の発生が懸念されます。敷料はこまめに交換し牛体の濡れを防ぎます。子牛の休息スペースは、水槽や飼槽から少し離れた位置に設置し、厚めに敷料を敷きます。
エ 保温ジャケットやネックウォーマーを用いたり、休息場所でカーボンヒーターなどの加温器を利用したりするのも牛体の保温に効果的です。保温ジャケットやネックウォーマーは定期的に洗い、衛生的に保ちます。

写真1

写真2

写真3

(2)換気
寒冷対策のため牛舎を閉めきり、換気が不十分になると、湿気やアンモニア、二酸化炭素が牛舎内に溜まり、風邪や肺炎などの呼吸器病にかかりやすくなります。朝方や暖かい時間帯をねらって一定時間換気を行います。また、換気扇を低速で回転させることも有効です。
(3)代用乳とスターター、水
寒冷時は、子牛が必要とするエネルギーが増加するため、エネルギーを補給しなければなりません。
適温域内の15℃で得られる日増体率と比べて、10℃では1割弱、0~5℃では1割強~2割程度、日増体率が減少します(図)。飼養環境の温度と防寒対策の程度にもよりますが、下痢や肺炎の発生はないのに冬季の発育が良くない場合は、代用乳の給与量を1割~1割強増やします。
また、代用乳の調製から給与までに温度が下がることを考慮して、少し温度の高い湯で代用乳を調製します。
人工乳(スターター)をしっかり採食させることがエネルギー補給と発育確保のために大切です。水とスターターは離して置くか仕切りを付けることで、水とスターターが汚れにくくなり、両方の摂取量が増加します。なお、水の代わりにぬるま湯を給与できれば、飲水量がより増えます。

図

(4)観察→異常発見→対処を速やかに
一旦呼吸器病が発生すると、瞬く間に同居牛に感染していきます。感染が広がると、治療の日々が続き、管理者の時間的、経済的、精神的な負担が増えるだけでなく、増体が滞るなど、悪影響を及ぼします。早めの異常発見と治療がカギです。次のような子牛がいないか、しっかりと観察します。

  • エサを食べに来ない
  • 元気がない、耳が垂れている
  • 鼻水をたらしている、鼻が乾いている、咳をしている

もし、異常な牛を発見したら、できるだけその牛を隔離し、「熱を測る」「獣医師を呼ぶ」などの対応をとります。また、子牛が共用している餌槽、給水槽の清掃は1 日1 回行い、踏み込み消毒槽を活用するなど、消毒を徹底します。

3 本格的な寒さの前に、牛舎消毒で病気知らずに

牛舎には色々な病原体が潜んでいます。特に集合施設等では、各所から子牛が集まるため、牛舎の消毒を行うことで、病原体をできるだけ少なくして感染の機会を減らすことが必要です。

(1)牛舎洗浄
埃や蜘蛛の巣には病原体が付着しています。また、牛舎が糞などで汚れていると消毒薬の効果が低下しますので、取り除きます。発泡消毒は汚れを浮かせることができて、乾燥も速いのでおすすめです。
(2)石灰消毒
作業は大変ですが、「アルカリ消毒」と同時に病原体の「封じ込め」を行えるため、消毒薬に強い病原体にも有効な消毒方法です。塗る場所の汚れを落としてから、ドロマイト石灰を水に溶かして、牛舎全体に塗り付けます。
石灰を塗布した後は良く乾いたことを確認してから牛を移します。
(3)消毒のポイント
ア 定期的な消毒
牛舎消毒は一度で終わりではありません。定期的に行うことで予防効果が高くなります。病気が蔓延しやすい時期の前を中心に、年2回は実施してください。
イ 部分的な消毒の実施
牛舎全体の消毒の他にも1週間に1~2回程度飼槽、水槽、哺乳柵等を消毒します。人畜に比較的安全な逆性石鹸薬剤がおすすめです。

最後

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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