農作物技術情報 第7号 野菜(令和4年9月29日発行)

ページ番号2005679  更新日 令和4年9月29日

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タイトル

  • 台風対策 排水対策と施設の保守点検を万全に。
  • 施設果菜類 トマトでは保温等による裂果防止、早朝換気によるゴーストスポット発生防止に努めましょう。
  • 露地果菜類 キュウリホモプシス根腐病等の重要病害の発生状況の確認(残渣診断)や振返りを行い、次年度へ向けた対策を検討しましょう。
  • 葉茎菜類 雨よけほうれんそうは適切な温度管理と病害虫防除を徹底しましょう。
  • 冬春野菜 寒じめほうれんそうは、適期播種と適切な温度管理を徹底し、大雪への備えを万全にしましょう。促成アスパラガスは、5℃以下の低温遭遇時間を参考にしながら適期に掘り取りを行いましょう。

1 生育概況

(1)露地きゅうりは、成り疲れや気温低下による影響と、べと病や炭疽病、褐斑病などの病害の発生により、収穫終了となる圃場が増えています。
(2)雨よけトマトは、裂果が発生しはじめています。病害虫ではうどんこ病、灰色かび病、葉かび病やオオタバコガなどが発生し、果実表面に発生するゴーストスポットも散見されています。
(3)ピーマンは、赤果やひび割れ果が発生していますが、生育はおおむね順調です。病害虫では、斑点病が多く発生しており、灰色かび病、うどんこ病も見られます。
(4)雨よけほうれんそうは、日照不足の影響により徒長ぎみの生育となっています。害虫ではアブラムシ類、シロオビノメイガ、ホウレンソウケナガコナダニなどの被害が見られます。
(5)ねぎは、生育は順調で順次収穫が進んでいますが、地域により土寄せ作業の遅れが見られます。
病害虫では、降雨の影響により軟腐病の発生が多く、葉枯病、黒斑病の発生が見られます。
(6)キャベツ・レタスは、8月の連続した降雨等の影響により病害や湿害が多発し、出荷量の少ない状況が続いています。病害としては、キャベツでは黒斑細菌病、レタスでは腐敗病、斑点細菌病の発生が多く見られます。

2 技術対策

(1)台風対策
例年10 月は台風の発生が多い時期となりますので、今後とも気象情報を確認し状況に応じて排水対策、施設の保守点検など、事前事後対策を徹底してください。技術対策の詳細については9月16 日発行の「号外 台風対策」を参照してください。
(2)施設果菜類の管理
ア トマト
これからの時期は裂果が増加してきますので、(1)夜間の保温により急激な気温低下及び14℃以下の低温を防ぐ、(2)定期的なかん水により急激な吸水を防ぐ(早朝に葉露がついている場合はかん水不要)等の対策を実施してください。また、果実表面の結露はゴーストスポットや裂果の発生を助長するため、早朝にハウスサイドを開放し、外気と施設内の気温差がなくなるように管理し、果実表面への結露を防止します。
病害では草勢低下や湿度上昇により、葉かび病や灰色かび病が発生しやすくなるので、防除を徹底してください。
イ ピーマン
雨よけ栽培では、夜間の保温により生育温度の確保に努めますが、夜間湿度の上昇に伴い灰色かび病の発生が懸念されるので、防除を徹底します。
全体的に赤果や黒変果、ひび割れ果の発生が増えています。特に、下垂している枝に着生している果実は早めに除去し、草勢維持に努めてください。

(3)露地果菜類の管理
ア きゅうり
気温が低下していることから強い摘芯は控え、アーチから飛び出した弱い芯を指先で摘む程度に止めます。摘葉は病葉・古葉・黄化葉等を中心に行い、草勢維持を図ってください。
毎年10 月以降、べと病や炭疽病、褐斑病等の蔓延により枯れ上がる圃場が見られています。多発圃場では、収穫残さや支柱、番線、潅水チューブなどに付着した病原菌が翌年の発生源となりますので、栽培終了後は速やかに残さの片づけや資材の消毒を実施します。
また、本年度に株が急に萎れる症状が見られた圃場では、収穫終了後速やかに根を掘り上げて、キュウリホモプシス根腐病の感染がないか確認してください(写真1)。疑わしい症状が見られた場合や、次年度の作付けに不安がある場合は、最寄りの農業改良普及センター等に連絡し、残さ診断を受けることをお勧めします。
今年萎れが見られていない圃場においても、被害リスクの早期把握のため、残さ診断を積極的に行い次作に備えます。

写真1

イ ピーマン
露地栽培では、斑点病の発生と腐敗果が増加する恐れがありますので、降雨前後に殺菌剤を散布して発生低減を図ります。腐敗果は、収穫作業やタバコガ、強風などにより傷つき、その傷口が腐敗すると考えられます。雨天時の収穫作業は控えること、出荷時の果実は乾いた状態とし、腐敗がないか選別を徹底してください。

(4)葉茎菜類の管理
ア 雨よけほうれんそう
年内収穫に向け、もう1作播種することを検討します。低温伸長性の良い品種を選択し、ハウスのこまめな開閉等による温度管理を適切に行い、確実に年内に収穫できるようにします。
ハウスを閉める時間が長くなると、べと病の発生が多くなります。べと病抵抗性品種を利用している場合でも、日中は積極的に換気を行い、べと病を発生させない環境にするとともに、農薬使用基準に従い、効果のある殺菌剤の予防散布を行ってください。
また、ホウレンソウケナガコナダニによる被害が多くなる時期です。今年作で被害のあった圃場では、農薬使用基準に従い、土壌施用剤と茎葉散布剤を併用します。茎葉散布剤は薬液が芯葉まで届くように丁寧に散布してください。
アブラムシ類の発生やシロオビノメイガの食害が見られます。アブラムシ類は効果のある殺虫剤で防除します。
シロオビノメイガの幼虫は、始め芯葉の隙間に入り込んで見つけにくいので、注意して観察し、防除が遅れない
ようにしてください(写真2)。

写真2

萎凋病等の土壌病害の発生が多かった圃場では、次年度の対策を実施します。初夏に土壌消毒を行う従来の方法以外に、作付終了後の晩秋に土壌消毒を行う方法や、転炉スラグの施用による土壌管理技術があります。具体的な方法については、最寄りの普及センター等に御相談ください。
作付け終了後は、来年の施肥管理を適正に行うため、土壌診断を受けてください。
イ ねぎ
最終土寄せから収穫までの日数が長くなると、品質低下につながります。10 月収穫の土寄せ作業は、収穫の30 日前を目安に、軟白部の伸長肥大を確認しながら、気象情報等を参考にして計画的に作業を行います。
また、収穫間際の病害虫発生も、品質低下につながります。定期的な防除を心がけ、農薬散布は収穫前日数に注意して適正に行います。
ウ キャベツ・レタス
県北高冷地の収穫は終盤です。作付け終了後のマルチ、残さの処理を適切に行います。病害により収穫できなかったものは早めに処理して、被害が蔓延しないように注意します。
また、来年に向けて土壌診断の実施や堆肥の施用等による土づくりを行ってください。

(5)冬春野菜
ア 寒じめほうれんそう
ハウス栽培では、9月下旬から10 月中旬までが播種時期です。地域により気象条件が異なるので、品種特性に合わせて適期に播種します。
播種後の温度管理は、過剰に保温すると生育が進みすぎ、寒じめを行う(寒気にさらす)前に収穫サイズに達してしまうことがある一方、温度が低すぎると生育が大幅に遅れてしまいます。
本県の寒じめほうれんそうの出荷期間は12 月~翌2月が基本ですので、ほうれんそうの生育ステージに応じた適切な温度管理を行ってください(岩手県農業研究センター平成17 年度試験研究成果「寒締めほうれんそうの作期判定と生育調節技術」

(https://www.pref.iwate.jp/agri/_res/projects/project_agri/_page_/002/004/810/h17shidou_31.pdf))。
冬期間は、大雪の影響でパイプハウスが倒壊することがあります。寒じめほうれんそうを作付けするハウスは1棟おきにして、作付けしないハウスはビニールを外すほか、除雪しやすい環境を整えておくとともに、雪の重みに耐えられるよう補強用支柱や番線、筋交いを設置する等の対策を講じ、ハウスを守ります。
イ 促成アスパラガス
気温の低下とともに、地下部への養分転流が進む時期です。台風による倒伏等で、茎葉が傷まないようにします。
また、根株の極端な早掘りは収量の低下につながるので、低温遭遇時間(5℃以下の積算遭遇時間で90 時間以上)を目安に、適期の掘り取りを心がけてください(岩手県農業研究センター平成18 年度試験研究成果「アスパラガス年内どり作型における1年養成根株の掘り取り時期」

(https://www.pref.iwate.jp/agri/_res/projects/project_agri/_page_/002/004/809/h18shidou_36.pdf))。

最後

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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