農作物技術情報 第6号 水稲(令和4年8月25日発行)

ページ番号2005529  更新日 令和6年3月13日

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タイトル

本年は、圃場による出穂の早晩差が大きく、圃場毎の刈取り適期の見極めが大切です。
圃場観察に努めるとともに、適期に収穫できるよう、早めの準備を心がけましょう。

  • 黄化籾80~90%に達したらテスト籾摺りを行い、刈取りの可否を判断しましょう。
  • コンバインや乾燥調製施設の点検、整備は早めに行いましょう。
  • 籾の乾燥は二段乾燥を心がけ、玄米水分15%以下に仕上げましょう。
  • 異品種混入(コンタミ)対策を徹底しましょう。

1 出穂状況

出穂盛期(50%)は県全体で平年並の8月5日頃となりましたが、6月上旬の低温による生育停滞が顕著であった圃場においては出穂がやや遅れる傾向がみられ、北上川下流では終期(90%)が平年より2日程度遅くなりました(表1)

表1

2 気象経過

(1)概況
水稲の穂ばらみ期にあたる7月第6半旬は高気圧に覆われて晴れる日が多く、気温・日照時間は平年を上回りました。続く8月上中旬の気温は概ね平年並で経過しましたが、前線と湿った空気の影響で曇りや雨の日が多くなりました。特に8月3日、13~15日は大気の状態が不安定であったことから各地で大雨となり、8月3日は北部で100mmを超える降水量も観測されました(図1)。
(2)今後の見通し
東北地方の1ヶ月予報(仙台管区気象台8月18日発表)では、平年に比べ曇りや雨の日が多く、平均気温は高い確率50%、日照時間は平年並または少ない確率ともに40%と予想されています。

図1

3 玄米品質を低下させない水管理

(1)登熟期の水管理

  • 間断かんがいを基本とし、徐々に落水期間を長くしていく管理とします。中干しが十分でない圃場落水期間を長めにとり、機械収穫に必要な地耐力の確保を図ります。
  • 完全落水は排水不良田で出穂後30~35日、排水のよい水田で出穂後35~40日頃を目安とします。                                  ⇒ 乾かしすぎ(表土の白化・亀裂)は収量や品質低下につながるので注意
  • 遅植えや直播栽培などの出穂が遅い圃場において、登熟の早い段階で用水が利用できなくなる場合も、排水口を閉じるなどして、乾かし過ぎない管理とします。

(2)台風や大雨時の水管理

  • 台風、大雨等で浸水や冠水の恐れがあるときは、排水口を開けて排水を促します。
  • 浸水や冠水した圃場では、速やかな排水に努めます。長時間の冠水は登熟に悪影響を及ぼすため、少しでも早く排水し、水稲の葉先を出すことが重要です。
  • 台風通過後は稲体が水分を失いやすいため、田面が急激に乾かないよう間断かんがいとします。

4 適期刈取りの励行

(1)刈取り適期の予測

  • 刈始めの目安となる出穂後の積算気温950℃到達日は、8月19日現在の予測で表3、図2のとおりですが、8月に入ってからの日照時間は平年比40~50%程度となっており、日照不足が続いた場合、実際の刈取り適期が予測日より大きく遅れることも予想されます。
  • 登熟の進み具合は気温・日照時間だけでなく、栽培管理も影響します。積算気温の予測のみに頼らず、実際の籾の黄化をよく観察した上で刈取りの可否を判断することが大切です。
  • 共同乾燥調製施設を利用する場合は、施設の稼働時期を確認し、作業計画を立てます。

表2

表3

図2

(2)刈取り適期の判断
積算気温による予測は、栽培条件や日照の多少によってずれる場合があるため、最終的な刈取りの判断は次の手順により、実際の登熟状態を確認しておこないます。特に本年は、個体や圃場によって出穂の早晩差が大きいため、圃場毎の登熟状況をよく観察したうえで判断します。
ア 黄化籾割合のチェック
平均的な大きさの穂を観察し、黄化した籾が1穂籾数に占める割合を確認します。
刈取り適期は「黄化籾割合80~90%」(参考:図3)です。

図3

イ テスト籾すりによるチェック
黄化籾割合が80~90%に達したら、数穂を採取しテスト籾すりします(図4)。

図4

(3)収穫作業の留意点

  • コンバイン収穫では、作業開始前に籾水分が20~25%の範囲であることを確認します。
  • 収穫後は生籾のまま放置せず、速やかに乾燥調製施設へ搬入します。
  • 水口付近などで登熟が大幅に遅れている部分や、倒伏した部分は可能な限り刈分けを行い、青未熟粒等の混入を避けます。

5 乾燥・調製の留意点

仕上げ水分は15.0%以下を徹底!!

(1)胴割れ粒の発生防止

  • 火力乾燥においては、1時間あたりの水分減少率(毎時乾減率)を0.8%以下とします。          ⇒ 乾燥速度を上げすぎると胴割れ粒が発生するため、急激な乾燥・過乾燥に注意します。
  • 4%以上の水分差がある籾を一緒に張り込むことは避けます。                      ⇒ 籾水分18%の時に一旦乾燥機を止めて放冷・循環常温通風し、その後仕上げ乾燥して籾水分の均質化を図ります(二段乾燥)。
  • 自然乾燥(ハセ・棒がけ)は2週間以内を目安とし、時々掛け替えして乾燥を促します。

(2)籾すり時の肌ずれ、脱ぷの防止

  • 肌ずれを防止するため、玄米水分15.0%以下の適正水分で籾すりを行います。
  • ゴムロールのすき間は、籾の厚さの約1/2(0.5~1.2mm)が標準です。
  • 脱ぷ率は条件により変化するので、85%程度になるようロール間隔を調整します。

(3)ライスグレーダー
出荷製品用は、LL(1.9mm)の篩い目使用を基本とし、整粒歩合80%以上を目指します。

6 異品種混入の防止

  • 産地から出荷する米穀は「表示銘柄以外の混入のない米」であることが必須です。
  • 異品種混入(コンタミ)が発生すると、品種名の表示ができなくなることに加え、産地全体のイメージダウンとなります。
  • コンバイン、運搬機、乾燥機や籾摺機など収穫・乾燥・調製機械や施設内には、前年の籾等が残留している可能性があるので、これらの機械や施設の点検・清掃を十分に行います。

7 農作業安全

収穫時期は日没が早まり、例年農作業事故の発生が多くなります。余裕をもった作業計画をたてるとともに、作業機に反射シールを貼る等、交通事故防止対策を講じます。

最後

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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