農作物技術情報 第5号 野菜(令和4年7月28日発行)

ページ番号2005478  更新日 令和4年7月28日

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タイトル

  • 全般 高温対策としてこまめなかん水管理を行うとともに、作業者も水分補給と休憩をとり熱中症にならないよう気をつけましょう。
  • 施設果菜類 高温対策、草勢維持、病害虫防除を徹底しましょう。
  • 露地果菜類 適切な整枝・摘葉と重要病害に対する初期防除を徹底しましょう。
  • 葉茎菜類 雨よけほうれんそうは、天候の変化に対応した遮光管理と適切なかん水管理を徹底しましょう。露地葉茎菜類は、適期作業・病害虫防除を徹底しましょう。

1 生育概況

(1)雨よけトマトは、夏秋栽培では7月から収穫が始まっていますが、高温による落花、萎れが散見されています。病害虫では灰色かび病、うどんこ病、アザミウマ類の発生が見られています。
(2)ピーマンはハウス・露地ともに生育は概ね順調ですが、一部で尻腐果の発生が継続しています。病害虫では灰色かび病、斑点病、アブラムシ類、アザミウマ類、タバコガ類の発生が見られています。
(3)ハウスの半促成・早熟作型のきゅうりは、県南部では概ね収穫終了となり、抑制作型への切り替えや定植準備が行われています。露地きゅうりは炭疽病、べと病、アブラムシ類、アザミウマ類等の病害虫の発生が見られるものの、生育は概ね順調に推移しています。
(4)雨よけほうれんそうの生育は概ね順調です。病害虫では、萎凋病等の土壌病害、べと病、ヨトウムシの被害が発生しています。
(5)キャベツやレタスの生育は概ね順調です。病害虫の発生は、キャベツはコナガやヨトウムシなどが、レタスはべと病、斑点細菌病、腐敗病などの発生が見られているほか、軟腐病の発生が増えています。
(6)ねぎの生育は概ね順調で、早い作型では出荷が始まりました。病害虫では、べと病、アザミウマ類、ネギハモグリバエの発生が見られています。

2 技術対策

(1)全般
施設野菜では換気や遮光・遮熱等の高温対策を徹底するとともに、少量多回数のかん水と通路散水を行い、葉の蒸散による気化潜熱でハウス内気温の上昇を抑制します。
露地野菜でも、乾燥が続いた場合はかん水チューブやスプリンクラー等を利用し、積極的なかん水を行うことにより草勢維持を図ります。ただし、うね間等を利用してほ場に水を入れる場合、滞水により根腐れや病害が発生する場合がありますので、涼しい時間帯に実施し、水が行き渡ったら速やかに排水します。
また、作業者も適宜休憩をとり水分補給も十分に行うなど、熱中症にかからないよう気をつけてください。

(2)施設果菜類の管理
ア 果菜類全般
例年8月はトマト、ピーマンなどのハウス果菜類で収穫最盛期を迎えるため、管理作業が遅れる場合があります。そのため、整枝や摘葉、誘引作業を遅れないように実施し、良好な受光態勢を維持するとともに、風通しを改善し、群落内の炭酸ガスの濃度低下や病害の発生を抑えます。病害虫防除では、定期的な病害防除に加え、タバコガ類の発生が多くなってきますので、病害虫防除所で発行する予察情報等を参考に適切な薬剤の選択を行います。
高温対策としては、ハウスサイド、肩、妻面、天窓等の換気を積極的に行い、光合成や転流の適温を超えないようハウス内気温の低下に努めます。日中の過剰な直射日光により葉焼けや萎れ症状の発生が懸念される場合には、遮光・遮熱効果のある被覆や塗布用資材、ミスト等を活用し、高温を抑制します。また、少量多回数のかん水や通路散水を実施し葉面積の拡大を促すことで、蒸散が活発となり気化潜熱で高温が抑制されます。特に、植物体の葉面積が確保されないために、通路に日光が多く当たる条件では、夜間に地中から放熱しハウス内気温が十分に下がらず、夜間の呼吸消耗により草勢低下が助長されますので、暑さが続く場合は上記の高温対策をしっかり行います。
なお、収穫量、気象条件などを考慮した追肥方法を選択し、草勢の維持・回復を図り、収穫最盛期を乗り切ります(図1、図2 参照)。

図1 2

イ トマト
桃太郎系品種は、第5~6花房の着果期以降に草勢が低下しやすく、草勢が低下すると回復が難しくなるので、こまめな追肥とかん水で草勢の維持を図ります。この時期は、すじ腐れ果、空洞果などの発生が多くなりますので、窒素過多にならないように適正な肥培管理を実施するとともに、30℃以上の高温を防ぎ、花粉の稔性低下を防ぎます。また、収穫後の花房下の葉は摘葉し、通風を良好にします。また、30℃以上の高温になる場合には、通常のかん水方法では水分不足になりやすいため、午後にも1回かん水します。
なお、葉かび病抵抗性遺伝子Cf-9 を有する品種(桃太郎セレクト、CF 桃太郎はるかなど)であっても、定期的に防除を行うようにしてください。
また、萎凋性病害も増加傾向です。萎れが発生した場合は最寄りの指導機関に診断を依頼し、原因を特定したうえで対策を講じるとともに、次年度に向けて感染源に対応した防除対策を年内のうちから検討します。
ウ ピーマン
茎葉が混み合い光不足になる場合は、収穫の終わった枝や混み合った部分の不要な枝を摘み内側に光が当たるようにします。生育量や温度に応じてかん水量を増やすとともに、こまめな追肥を行い草勢維持を図ります。
果肉の薄い品種では特に急激な高温になると尻腐果が発生しやすくなるので、ハウスの換気効率を高めるとともに通路やマルチ上にワラを敷いたりかん水を積極的に行うなど、地温を低下させ根からの水分吸収を促進します。
尻腐果はカルシウム不足が原因ですが、窒素やカリウム等の肥料成分が濃くなると相対的にカルシウムの吸収が阻害されますので、暑い時期の追肥は通常よりやや薄い濃度で行うこと、予防的対応としてカルシウム剤の葉面散布等も効果的です。

(3)露地果菜類の管理
ア きゅうり
収穫量の増加に伴い、草勢維持と病害虫の蔓延防止が重要な管理となります。摘葉を基本に整枝は控え目とし、曲がり果や尻太り果などを摘果しつつ、図1 を参考にしながら追肥を実施して草勢の維持・回復を図ります。側枝の発生が鈍い場合は、不良果を早めに摘果するとともに強めの整枝を控え、生長点を残して根張りを促進してください。
また、高温乾燥が続くと草勢低下につながりますので、かん水装置を備えている圃場では少量多回数のかん水を基本に、土壌水分の変動を少なくするかん水管理に心がけます。かん水装置がない圃場では敷きわら等で土壌水分の保持を図ります。
摘葉は、主枝葉を中心に病葉、老化葉のほかに新しい側枝を覆っている葉を中心に行い、側枝の発生を促します。整枝は、それぞれの仕立て法に応じて行いますが、草勢低下時は半放任または放任管理とします。
薬剤防除は、褐斑病、炭そ病、べと病を重点とし、これら病害に効果のある薬剤を選択して予防散布に努めます。なお、褐斑病や炭そ病の発病が見られた場合は、速やかに病葉を摘葉した後で効果の高い薬剤を選択して散布します。
また、収穫最盛期を迎え曇雨天後に急激な晴天になると「しおれ」症状が発生することが予想されます。病害(キュウリホモプシス根腐病(写真1)、つる枯病等)による場合と生理的な原因による場合がありますので、「しお
れ」症状が発生した場合は最寄りの指導機関に診断を依頼してください。

写真1

イ ピーマン
茎葉が込み合う場合は、白果の発生が見られるようになるので、早いうちに適度に枝を間引くなどして対策します。高温対策として、通路に敷わらを実施します。降雨が少なく土壌が乾燥している時は、かん水チューブなどによるかん水や、通路かん水などを積極的に実施します。緩効性肥料を使っていないほ場では、定期的な追肥を継続し草勢を維持してください。
高温が続くと尻腐果の発生が増加することがあります。土壌水分を適正に保ち、定期的にカルシウム資材の葉面散布を行い、被害軽減に努めます。
タバコガの発生が始まっています。茎葉の被害が少ないために被害の確認が遅れることがあるので、防除が遅れないよう注意します。草勢が低下すると斑点病が発生しやすいので、被害葉を早期に摘除し薬剤散布を実施してください。
(4)葉茎菜類の管理
ア 雨よけほうれんそう
曇雨天後の強い日差しにより葉がしおれたり、葉焼けを生じたりする場合があります。特に、生育初期は、地温の上昇により地際部からくびれて倒れる高温障害が発生しやすいので、遮光資材等を活用してください。
また、土壌が乾燥すると、ほうれんそうの生育が停滞するため、播種時のかん水はムラなく十分に行い、生育中は圃場の乾燥状態に応じてかん水を行います。
生育中のかん水は、本葉3~4枚以降とし、涼しい時間帯にかん水します(写真2)。ただし、まとまった量のかん水(5~10mm)は収穫3~4日前までとし、その後は土壌表面が湿る(葉水)程度とします。過度のかん水はトロケやべと病の発生を助長するので、注意します。
例年、萎凋病等の土壌病害により減収する圃場では、土壌消毒を実施し、生産の安定化を図ります。また、萎凋病対策として、耐病性品種や転炉スラグ技術の導入、適正な施肥や良質な有機物の施用、残さの適正処理等の総合的な対策を実施してください。
アブラムシ類やアザミウマ類等の害虫が発生している場合は、効果の高い薬剤で防除を実施してください。

写真2

イ キャベツ・レタス
気温の上昇に伴い、株腐病や軟腐病等の腐敗性病害の発生に注意が必要です。株元まで十分薬液が届くように防除します。
害虫の発生にも注意し、定植時から防除を行います。キャベツは、コナガやタマナギンウワバが継続して発生するので、圃場をよく観察し、効果の高い薬剤を選択して防除してください。レタスでは、オオタバコガの発生初期ならびに結球始期からの防除を徹底し、また、8月のヨトウガが発生する時期に同時防除ができるよう、計画的な薬剤の選択を心がけてください。
多雨等により圃場が滞水した場合は、乾燥後にうね間の中耕を行って土壌中に空気を送り、根の活性化に努め、必要に応じて液肥を潅注または葉面散布し、草勢回復を促します。
これから収穫する作型では、天候の変動により裂球や生理障害の発生が多くなりますので、適期収穫に努め、収穫率の低下を防ぎます。収穫終了後の圃場はできるだけ速やかに整理し、病害虫の発生源とならないように注意してください。
ウ ねぎ
軟腐病、黒斑病等の重点防除時期になります。また、葉枯病(黄色斑紋病斑)を同時防除できるよう薬剤を選択し、収穫前日数に注意しながら定期的に防除を実施してください。
土寄せは、生育状況や天候を見ながら行います。生育を確保できていない状態で土寄せをすると、葉鞘径の肥大が悪くなりますので、過度に早い土寄せは行わないでください。
なお、作型や品種によっては、最終土寄せを行う時期となりますが、最終土寄せ時に土入れを丁寧に行わないと軟白部と葉の色の境が不鮮明な「ボケ」となりますので、計画的な作業、適期収穫を心がけます。
エ アスパラガス
茎枯病や斑点病等の病害やアザミウマ類の発生が懸念されますので、定期的に薬剤防除を行うとともに、立茎栽培では、株の消耗や茎葉の過繁茂を防ぐため、萌芽してくる若茎は弱小茎や曲がった茎も含めて刈り取ります。
促成アスパラガスの伏せ込み用根株では、生育後半まで肥料が効いている状態では、円滑な養分転流が妨げられる恐れがありますので、追肥は、8月上旬までには終了させます。また、病害虫の発生には十分注意し、必要に応じて防除してください。

最後

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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