農作物技術情報 第4号 畜産(令和4年6月23日発行)

ページ番号2005380  更新日 令和4年6月23日

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タイトル

  • チモシー一番草後の追肥を忘れずに行いましょう。二番草の収穫は適期に行いましょう。
  • 飼料用とうもろこしの生育期処理除草剤を遅れずに散布しましょう。
  • 新鮮な十分量の水、食いつきの良い粗飼料、ミネラル等の補給など飼料給与面からの暑熱対策も行いましょう。
  • 牛床を清潔かつ乾燥した状態に保つとともに、搾乳時に乳頭口からの乳房炎原因菌の侵入を防ぎましょう。

1 牧草

(1)天候不良による一番草刈取り作業の遅れ
5月終盤から晴天が続かず、一番草の刈取り作業が遅れています。刈遅れて倒伏した場合は、原料草の水分調整に留意しつつ、添加剤を使用してサイレージの不良発酵を防ぎます。原料草の水分が多い場合はギ酸、発酵に必要な栄養素不足が懸念される場合は糖蜜や酵素入りの乳酸菌を用いるなど、状態によって添加剤を使い分けます。
(2)チモシー草地は、一番草刈取り後の追肥が重要
チモシーは、一番草刈取り後の新しい分げつが二番草や翌年の一番草を構成するので、一番草刈取り後の追肥は草地を維持するうえで重要です。オーチャードグラスの場合は収穫直後に追肥しますが、チモシーは少し間を空けて、刈取り後10 日目ごろに追肥します。
(3)二番草の収穫
二番草の収穫時期は、一番草収穫後から40~55 日が目安です。土壌及び牧草の水分が高く気温の高いこの時期は、牧草が蒸れ上がり易いので刈遅れないようにします。オーチャードグラスは早めに収穫すると、比較的栄養価が高い二番草となります。また、極端な低刈りは夏枯れを招く原因となりますので、刈取り高さを10~15cm(握りこぶし一つ分ぐらい)とします。

2 飼料用とうもろこし

(1)生育不良
ここしばらくは晴天が続かなかったことなどから、水はけが悪いほ場では湿害が懸念されます。
葉の黄化が顕著な場合は根いたみによる施肥窒素の吸収不良が考えられますので、7 葉期頃までに窒素成分で1~2kg/10a 追肥します。
(2)雑草防除
除草剤の茎葉処理は、雑草に薬液がかからないと効果がないので、雑草の発生を確認してから散布します。その際、発生している雑草種を特定して、効果のある除草剤を選択します。除草剤によって散布できる時期が異なりますので、使用基準を確認して防除してください。
(3)獣害対策
クマの食害を防ぐため、電気柵は7 月下旬までに設置します。また、飼料用とうもろこし播種後にイノシシの被害が確認されたほ場では、早めに設置して終日通電させ、電気柵に触れると痛いことを学習させます。
電牧器は、通電時に最低5,000 ボルトの電圧が確保できるものを選択します。電圧は定期的にチェックし、電圧が維持されているか確かめます。電気柵は下草に触れると漏電し、侵入防止効果が劣りますので、下草刈りはこまめに行うようにして下さい。また、アースの電圧も測定し、アースがしっかりと利いているか確認します。0.5kV よりも高ければ、アース本数の追加を検討してください。
電気柵の設置段数と高さは、クマ、イノシシ共通で三段張り、地上から20cm、40cm、60~70cmが目安になります。地面が盛り上がったところやくぼ地には支柱を追加し、電気柵の高さが均一になるよう調整して、漏電や隙間からの侵入を防ぎます。(図1)。

図1

ほ場周辺の竹やぶやススキは刈り倒し、見通しをよくします(写真1)。軽トラ1 台分のスペースが確保できると最良です。見回りがしやすくなるとともに、加害獣に電気柵を視覚的にアピールする効果が生まれます。

写真1

3 夏季の飼養管理(乳牛)

(1)暑熱の影響の緩和
まずは、輻射熱や直射日光の遮断、送風量の確保など環境面の対策(農作物技術情報第3 号を参照)を行い、次に飼料給与面からの対策も併せて行うことで、乳量、乳成分と種どまりを維持し、乳房炎と蹄の故障を予防します。栄養の充足、ルーメンアシド-シスの予防・緩和のため、飼料給与では以下に留意します。
ア 水
泌乳牛、乾乳牛ともに気温の上昇に伴い飲水量が増加するので、清潔な水をいつも飲める環境が重要です。水槽やウオータカップの掃除をいつもよりこまめに行います。
イ 粗飼料
食いつきの良い牧草(例えば適期に刈取り、発酵品質抜群の一番草)やトウモロコシサイレ-ジの在庫量のやり繰りが可能であれば、これらを通常よりやや多めに給餌します。消化性の良い繊維の摂取は、夏季に起こりやすいルーメンアシドーシスの予防・緩和とエネルギー確保に有効です。特に食いつきの良い牧草は、乾乳後期から泌乳最盛期の牛に重点的に給与します。
ウ 重曹、ミネラル、ビタミン等
乳量の多い泌乳牛では、粗飼料摂取量、反芻回数、唾液分泌量が減少し、ルーメン内pH の低い時間が長く続くので、重曹を給与(100~200g/日・頭)します。
放し飼いであれば自由採食も有効です(写真2)。また、発汗等によりカルシウム、リン、マグネシウムの要求量も増加するので乾乳後期牛を除き、通常の1から2割増で与えます。さらに、暑熱時の体温上昇で酸化ストレスが増加すると言われており、ビタミンE やセレンなどの抗酸化添加剤の補強も検討します。

写真2

エ 給餌方法
(ア)涼しい時間帯(朝、夕方から夜間)の給餌量を増やします。
(イ)分離給与では、粗飼料を食い切るのを確認してから配合飼料を給与します。給餌回数を増やし、1回の配合飼料の給餌量を減らします。牧草の摂取量を増やすため、牧草を細断して給与できれば理想です。
(ウ)TMR給与では、選び食い防止のため、粒度が粗くないこと、水分を含んでいること(50%前後)を確認します。必要に応じて二次発酵を緩和する添加剤を使用します。また、エサ押し回数を増やすことで、採食量を維持するとともに固め食いを緩和します。

(2)夏季の搾乳衛生
夏季は、乳房や大腿部などの汚れが増えやすく、これにより大腸菌性乳房炎が増加しやすくなります。暑熱対策で牛のストレスを緩和するとともに、牛床を清潔に乾燥した状態に保つことと乳頭口からの乳房炎原因菌の侵入を防ぐことがより重要と考えられます。
ア 牛床の管理など
(ア)除糞と敷料の交換を普段よりこまめに行います。牛が横臥した時、乳房の下になる部分を中心に敷料を入
れます。敷料が無い場合、滑り止めと除湿効果のあるケイ酸カルシウム資材を少量ずつ散布するのも有効です。
(イ)牛床に糞が落ちやすい場合は、ません棒が低すぎる(写真3)、隔柵がない、カウトレーナーの位置が適切
でないなどの理由が考えられるので、調整できるところは調整して、ふん尿が尿溝に落ちるようにします。

写真3

(ウ)乳房の毛が長いとふん尿などの汚れが付着しやすくなるので、乳房の毛刈りや毛焼きを行います。また、尻尾に糞尿が付着し、牛体後躯の汚れが目立つ場合は、尻尾吊り(写真4)が有効です。

写真4

イ 搾乳作業
(ア)ミルカー装着前の乳頭清拭で「乳頭口のふき取り」を意識して丁寧に行います。また、ミルカー離脱後のデイッピングは、乳頭表面全体のミルク成分を洗い落とすため、ノンリターン式のデイッパ-で乳頭の根本まで浸漬します。
(イ)ミルカー装着(前搾りから90 秒後が目安)と離脱(ミルカー装着から5~6 分が目安)を適切なタイミングで行い、過搾乳やライナースリップを避けます。
ウ 搾乳機器
搾乳機器の洗浄が基本通りに行えているか、搾乳ユニットやバルククーラーのゴムやパッキン等を定期的に交換しているか・劣化がないか、あらためて確認します。

最後

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