農作物技術情報 第4号 果樹(令和4年6月23日発行)

ページ番号2005379  更新日 令和4年6月23日

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タイトル

  • りんごの結実は、概ね平年並みとなっています。良質な果実を見極めつつ、花芽形成と果実肥大を促すため、適正着果数となるよう摘果に努めましょう。
  • ぶどうの生育は平年より進んでいます。結実を確認のうえ、状況に応じた適切な摘房、摘粒を進めましょう。

りんご

1 生育概況

(1)結実の状況
県内生育診断圃の結実調査結果によると、花数、花そう、中心花結実率は「ふじ」、「ジョナゴールド」ともに概ね平年並となりました。一方、低温降霜の被害が大きかった昨年と比較するといずれの結実率も昨年より高くなりました。なお、開花始期が早かった沿岸・県北地域は低温と降雨の影響により中心花結実率がやや低い状況です。
4月17 日、20 日、5月10 日には寒気や放射冷却現象により弱い降霜が、4月29~30 日には一部地域で降雪が認められました。県北部や山沿いで結実が悪い園地もみられますが、昨年のような県全域での甚大な被害はないと考えられます。

表1

表2

(2)果実の生育状況
果実生育(横径)は、6月1日時点では平年比130~140%、昨年比110~120%であり、開花期以降気温が高く推移したことにより順調に生育しています(表3)。なお、5月21 日と6月3日に一部地域で降雹が確認されています。良質な果実を見極めつつ、花芽形成と果実肥大を促すため、適正着果数となるよう摘果に努めてください。

表3

2 栽培管理

7月に入ると、りんごは翌年の花芽分化が始まります。着果過多や日照不足、高温乾燥などが花芽形成を阻害する要因になりますので、(1)早期の適正着果数への摘果、(2)徒長枝の整理などによる日照条件の改善、(3)防除による健全な葉の維持、(4)適正な土壌水分管理に努めます。

(1)早期摘果
りんごの果実は、摘果作業が遅れると小玉果となる可能性が高まります。表4の摘果強度を参考に、仕上げ摘果および着果量の見直しを進めてください。地域により結実量にばらつきはみられますが、次年度のためにも計画的に摘果を進めます。
(2)摘果のポイント
ア 三角実や扁平果など果形の悪い果実、病虫害果、サビなどの傷害果は摘果します。傷害果が多発し、正常果で適正着果数を確保できない場合は、傷害果もある程度残します。
イ 「ふじ」で果台が極端に長いもの(25mm以上)や短いもの(10mm以下)は、斜形果の発生割合が高くなるので、できるだけ摘果します(図1)。
ウ 「ふじ」では、途中で肥大の止まる果実が出てくるので、随時見直しを行います。
エ 本県育成のりんご「紅いわて」は、摘果程度を1果/5頂芽とすることで、1果重300~350gの果実が多くなり、花芽が安定して確保できます。なお、あら摘果が遅れると翌年の花芽に影響が出る可能性があるため、あら摘果は遅れずに実施し、若木では果実が大きくなる傾向が見られるため、摘果時期を遅らせるなど調整してください。

ず1

表4

3 土壌水分管理

りんごにとって、土壌水分を適正に管理することは、果実肥大、花芽の確保など健全な樹体の維持に有効です。
(1)乾燥対策
今後、高温、干ばつで経過する場合は、養水分の競合を避けるため草生を短く維持し、樹冠下に刈草やわら等でマルチします。また、畑地かんがい施設の整備が進められている地域では、適宜かん水を実施します。特に、今年定植した苗木や幼木は根量が少なく、乾燥の影響を受けやすいため、優先してかん水を実施してください。
(2)排水対策
降雨が続き、園地内が過湿となる場合、根部が障害を受けて樹勢が衰弱することがありますので、園地内に滞水しないよう、溝を掘るなど排水対策を講じます。

4 病害虫防除

(1)梅雨に入って降雨が続くようになると、斑点落葉病や褐斑病、輪紋病、炭疽病等の感染が増えてきます。また、気温も高くなりハダニ類などの害虫も発生してきます。週間天気予報などを活用して降雨の合間を捉え、散布間隔が空き過ぎないように防除を実施してください。
(2)これまで褐斑病の発生は確認されていませんが、昨年も県南部を中心に発生が見られています。特にも前年多発園では、防除速報や予察情報を参考に防除を徹底します 。
(3)黒星病については、他病害との同時防除を兼ねて、本病に効果のある予防剤を定期的に散布してください。その際には散布ムラがないように十分量を丁寧に散布します。また、降雨が予想される場合は、降雨前に散布を行ってください。さらに、園地を見回り、発生が確認された場合は見つけ次第、発病葉や発病果を摘み取り、土中に埋めるなど適正に処分してください。苗木など未結果樹での発生にも注意し、成木と同様に薬剤防除を徹底します。なお、落花10 日後以降のEBI剤の散布は、耐性菌が発現する恐れがあるので行わないでください。

ぶどう

1 生育概況

定点観測地点(紫波町)の「キャンベルアーリー」の調査結果では(表5)、開花始は6月9日、満開期は6月11 日で平年より5~6日早く、概ね昨年並みとなっています。4~5月の気温が高く、日照もあったため、新梢の伸長も含め生育が進んだものと推察されます。

表5

2 栽培管理

(1)摘粒(詳細は5月28 日発行の「農作物技術情報第3号 果樹」を参照)
ア 果粒肥大を促すとともに、裂果や病害の誘発防止、着色向上といった品質確保に必要不可欠な作業です。
満開後30 日以内の終了を目標としますので、今年は7月中旬までに実施します。
(2)袋掛け
ア 時期は7月上旬以降できるだけ早い時期が良く、摘粒などが遅れる場合には、晩腐病の一次感染期を逃さずに防除し、その後、袋かけを行うことが大切です。
(3)摘房
ア 「キャンベルアーリー」では、表6を参考とし、葉数に応じて着房数を決定してください。
最終的には一坪(3.3 平方メートル)当たり、新梢数20 本、着房数27~30 房が基準となります。樹勢が弱い場合は、1房当たりに必要な葉数を参考に、葉数に応じて着房数を制限してください。
イ 「紅伊豆」「シャインマスカット」などの大粒種では、1新梢1房以下が基本です。ただし、種あり栽培とする場合は、一気に摘房せず、強い新梢は、1新梢2房着果させておき、着色期前までに1房に摘房していきます。弱い新梢は、早期に1新梢1房とし、同様に着色期をめどに、伸長の程度に合わせて2~3新梢1房に調整していきます(表7、図2)。
ウ 着色期以降も着果が多いままだと、着色や糖度上昇が遅れ収穫自体も遅れるなど、樹体の凍寒害の危険につながりますので十分に注意してください。

表6

表7

図2

(4)土壌水分管理
ぶどうの果粒が柔らかくなってきた時期以降に、まとまった降雨や急激なかん水を実施すると裂果が助長されることがあります。
こうした園地では、点滴かん水等により少量の水を定期的にかん水することで裂果の発生を軽減できるといった報告がありますので、必要に応じて実施を検討してください。
かん水が実施できない園地では、稲わらなどを用いて、マルチを行います。
降雨が続く場合、雨よけハウスでは雨樋等を点検し、園地内に水が停滞しないよう、溝を掘るなど排水対策を行ってください。

3 病害虫防除について

(1)病害虫の発生状況に合わせて適期防除に努めてください。
(2)薬剤によっては、果粉の溶脱、果面の汚れなど品質を損ねることがありますので、使用方法・時期などに注意してください。
 

最後

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