農作物技術情報 第4号 野菜(令和4年6月23日発行)

ページ番号2005377  更新日 令和4年6月23日

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タイトル

  • 全 般   降雨への事前対策として排水対策を徹底しましょう。
  • 施設果菜類 梅雨時期の草勢維持対策と病害虫防除を実施しましょう。
  • 施設果菜類 生育に応じた整枝管理と病害虫防除を実施しましょう。
  • 葉茎菜類  雨よけほうれんそうは、天候の変化に応じた適切な管理と病害虫防除を徹底しましょう。露地葉菜類は、病害虫防除の徹底と計画的な作業により良品出荷に努めましょう。

1 生育概況

(1)施設果菜類は順次収穫が行われています。生育は概ね順調ですが、きゅうりでは6月上旬の日照不足や成り疲れによる曲がり果の発生や草勢の低下が見られます。トマト、ピーマンでは6月上旬からの低温の影響により、果実の肥大・成熟がやや緩慢となっています。病害虫では、アザミウマ類やアブラムシ類の発生が目立ちます。
(2)露地果菜類の定植は6月上旬までに終了しましたが、5月下旬の強風による苗の損傷や6月上旬の低温による生育停滞が散見され、ピーマンでは、一部の圃場で葉に低温障害(葉の褐点症状)が発生しています。病害虫では、アブラムシ類、アザミウマ類の発生が見られます。
(3)雨よけほうれんそうの生育は概ね順調です。病害虫では、ホウレンソウケナガコナダニ、べと病の発生が見られます。
(4)高冷地キャベツは、平年並みの6月下旬から出荷開始の見込みです。コナガやタマナギンウワバ、ヨトウムシの発生が見られます。高冷地レタスの生育は概ね順調ですが、菌核病やすそ枯病、灰色かび病の発生が見られます。ねぎの生育は概ね順調で、順次秋どり作型の定植が進められています。ネギアザミウマの被害が見られ、一部地域ではべと病が発生しています。

2 技術対策

(1)梅雨期の降雨、降雹への対応

降雨によって泥はねが発生すると病害の感染源となりますので、天候回復後に殺菌剤の予防散布を行います。集中豪雨などで圃場に滞水した場合は、速やかに排水を促し、通路の中耕等により根に酸素を供給するなどして草勢の回復を図ります。また、局地的な豪雨に備え、明渠や暗渠の末端部分の詰まりなど排水対策の再確認を行います。降雹被害のあった圃場では、殺菌剤や液肥の葉面散布、果菜類では主枝更新(側枝利用)を行います。

(2)施設果菜類の管理

ア きゅうり
半促成栽培、早熟栽培とも上位葉が繁茂すると、群落内の採光性・通風性が悪化し、光合成量が減少するため、45~50 日経過した葉を中心に積極的に摘葉を行います。草勢維持のため、株当たり一度に2~3枚以内を原則としますが、主枝葉が25 枚程度展開したあとであれば、一度に5枚程度摘葉しても問題ありません。特に伸ばす枝がある場合は、周囲の葉を先に摘葉します。
病害虫防除では、べと病、灰色かび病、アザミウマ類、アブラムシ類等の防除を基本とした薬剤を選定し、適期防除に努めます。梅雨時期はべと病等の発生が多くなるため、換気を行い湿度を下げますが、極端な低湿度は光合成抑制及び茎葉伸長抑制につながります。そのため、病害虫防除を徹底しながら、適正なかん水管理やミスト散布を行い、適度な湿度の維持に留意します。
また、土壌病害であるキュウリホモプシス根腐病は、気づかないうちに根が感染している場合があります。今年度も既に発生している圃場が見受けられますので、生育中に萎れが発生していないかどうかを観察し、疑わしい症状が見られる場合は、最寄りのJA または農業改良普及センターへお問い合わせください。
イ トマト
雨よけ栽培では収穫が始まり、草勢のバランスを崩しやすい時期に入ります。例年、着果負担から草勢低下を引き起こしている事例が見受けられますので、適正な摘果管理を行うとともに、着果量や生長点付近の状態(生長点の大きさ、葉色、葉の巻き具合、茎の太さ)を確認しながら、適切な養水分管理、葉面散布により草勢を維持します。つる下げ作業も、一気に下げると極端に草勢を落としますので、こまめに作業を行います。また、梅雨時期は日射量の低下により草勢が低下しやすく、一時的な晴天時に強日射(高温)による萎れ、葉焼け、落花が発生しますので、適切な換気管理、遮光資材(遮光幕、塗布型遮光資材)の活用による強日射(高温)対策を実施します。
病害虫防除では、灰色かび病、アザミウマ類、アブラムシ類等の防除を基本とした薬剤を選定し、適期防除に努めます。梅雨時期は灰色かび病等の発生が多くなるため、換気を行い湿度を下げますが、極端な低湿度は光合成抑制及び茎葉伸長抑制につながります。そのため、病害虫防除を徹底しながら、適正なかん水管理やミスト散布を行い、適度な湿度の維持に留意します。
土壌病害の発病株は速やかに抜き取り処分するとともに、かいよう病や青枯病等の汁液伝染する病害についてはハサミや手袋などをこまめに消毒しながら作業し、圃場内での二次伝染を最小限に抑えます。特に曇雨天時のわき芽かき作業は、病気を伝染させる場合がありますので、晴天時に作業します。
ウ ピーマン
4本仕立ての整枝法は、「京ゆたか」では主枝第10 分枝まで側枝3~4節摘心、主枝第11 分枝以降は側枝2節摘心が基本です。「京鈴」「さらら」等の草勢が弱い品種は、下段側枝を2節程度で摘心し着果数を制限するとともに、潅水と追肥は少量多回数とし、草勢を低下させないよう管理します。曇雨天の継続や、着果負担が多く草勢が低下する場合は、ふところ枝の摘除や側枝の着果数を減らすなどして、主枝の伸長を促進します。
また、圃場への浸水や多潅水により株元が過湿になると疫病が発生しやすく、逆に乾燥してくると尻腐果が発生しやすくなります。pF メーターを目安とした水分管理を行うとともに、株元を乾かすような管理を心がけます。なお、pF メーターの指示値は2.0 を目安とします。
病害虫防除では、灰色かび病の発生が多くなる時期です。適切な整枝・肥培管理で過繁茂を避け、適期収穫で草勢の維持に努めます。また、可能な範囲で発病部位を除去し、薬剤散布を適期に行います。
エ 夏期高温期の昇温抑制対策
夏期高温に備え遮光幕や塗布型遮光剤を利用する場合には、資材の種類や使用濃度により効果や持続性に差が出ますので、使用方法を十分確認します。また、できるだけハウス内に熱気がこもらないように、ハウスの肩より上部での換気実施やツマ面の開放を行います。梅雨明け後は通路への散水や敷きわら等も地温やハウス内気温の昇温抑制に有効です。また、近年ではハウス内の乾燥対策、高温抑制を目的にミストの活用も始まっていますので、興味のある方は農業改良普及センターにご相談ください。

(3)露地果菜類の管理

ア きゅうり
本格的な収穫を迎える時期となりました。収穫量に応じた追肥とかん水で草勢を確保します。特に乾燥気味の圃場では、かん水や敷きわらなどで土壌水分の保持を図ります。
1本仕立ての場合の生育中期~盛期における基本的な整枝、摘葉管理は表1を参考に行いますが、品種や草勢により管理技術は異なりますので、あくまでも目安となります。2本仕立ての場合は、主枝8~10 節から発生する側枝を1本伸ばします。それ以外の主枝10 節までの側枝は1節摘心とし、主枝11 節以降は2節摘心または半放任とします。いずれの仕立て方法の場合でも、初期生育が劣り側枝の発生が鈍い場合は強剪定を避け、根の発生を促すように管理します。なお、降雹被害により主枝が折れた株は、勢いの良い側枝を選択し、主枝として誘引します。
病害防除では、7 月はべと病や褐斑病、炭そ病等の斑点性病害の予防に重点をおきます。特に炭そ病や褐斑病は、例年発生が見られる7~10 日前からの予防散布が重要です。また、薬剤散布による防除だけでなく、蔓延を防ぐため疑わしい病斑が見られたら積極的に摘葉し、速やかに圃場外で処分します。土壌病害であるキュウリホモプシス根腐病は、気づかないうちに根が感染している場合があります。生育中に萎れが発生していないかどうかを観察し、疑わしい症状が見られる場合は、最寄りのJA または農業改良普及センターへお問い合わせください。
害虫防除では、アブラムシ類やハダニ類等の防除を実施します。特にアブラムシ類は、定植時に施用した粒剤の効果が切れてくる時期ですので、早めに薬剤散布を行います。

表1

イ ピーマン
整枝は、側枝は放任とし、繁茂状態になる時は受光量を高めるため、ふところ枝と徒長枝を間引き剪除します。なお、降雹被害により主枝が折れた株は、下枝が伸びるのを待ち、主枝とします。露地栽培でも、降雨が少なく土壌が乾燥している時はかん水チューブなどによるかん水や、通路かん水などの対策を実施します。近年では露地栽培でも点滴かん水装置などのかん水設備の導入が行われるようになり、尻腐果の被害軽減などに効果を上げています。
梅雨時の曇雨天が続くと灰色かび病に注意が必要です。また、定植時に施用した殺虫剤の効果が切れる時期になるので、アブラムシ類やアザミウマ類の防除を行います。さらに、7 月下旬にはタバコガに注意します。

(4)葉茎菜類の管理

ア 雨よけほうれんそう
梅雨に入り、圃場内への雨水の流入やハウス内が過湿になりやすくなるので、圃場周囲の排水対策を徹底します。また、低温・日照不足から高温・多照へ天候が急変することが多くなります。換気や遮光を遅れずにタイミングよく行い、萎れや徒長を防ぎます。
梅雨明け後は高温となり、ほうれんそうの生育には厳しい時期になるので、各産地で選定している夏播き用の品種を利用し、圃場の乾燥状態に応じて生育中のかん水を積極的に行います。生育中のかん水の目安は、土壌10cm 深のpF 値で、水田では2.3~2.5、畑では2.4~2.7 です。
一部でべと病の発生が見られます。ハウスの換気に努めるとともに、株間を広くして風通しを良くし、被害株は随時抜取り処分します。例年発病が多い圃場では、予防散布を徹底します。
この時期に発生する生育初期の立枯症状の多くは、土壌病害や高温障害、タネバエ等が原因です。
見分け方は図1を参照してください。土壌病害の発生が多い圃場では、計画的に土壌消毒を実施します。
また、アブラムシ類やアザミウマ類、タネバエ等の害虫の発生に注意しながら、粒剤等による予防防除や、発生が見られた場合には薬剤散布を行います。

図1

イ キャベツ
コナガやタマナギンウワバ等の害虫の発生が増える時期を迎えています。定植時の薬剤の利用を徹底するとともに、防除が遅れないように注意します。コナガは薬剤抵抗性が発達しやすいので、系統の異なる薬剤によるローテーション散布を基本とします。なお、岩手県内でジアミド抵抗性コナガの発生が確認されていますので、ジアミド系の薬剤は定植時の薬剤も含めて1作型1回の使用に留めるほか、年間の使用体系を考慮して使用します。
また、収穫が終了した圃場で残渣をそのまま放置すると害虫の発生源になりますので、収穫後は早めに圃場を整理します。
結球期に降雨が続くと株腐病の発生が多くなります。結球開始期から株元にも十分薬液がかかるように薬剤散布を行います。また、圃場の排水対策についても確認します。
ウ レタス
気温の上昇、降水量の増加にともない、すそ枯病、軟腐病、腐敗病等の腐敗性病害や灰色かび病の発生が多くなります。特に、大雨が引き金になって病害が多発する場合がありますので、気象情報等を参考にして、降雨の前後に重点を置いた防除とします。また、これから定植する作型では、排水の良い圃場を選んで作付けするとともに、前作の残渣を圃場外に持ち出す、地温を抑制するマルチを利用する、適湿の時にマルチを張る等の対策を心がけます。
高温期の過剰施肥は、変形球や腐敗の発生を招きやすいので、品種に応じた施肥量にするとともに、適期に収穫して品質の向上に努めます。
エ ねぎ
生育に応じた追肥、土寄せにより葉鞘の伸長を促します。特に早出しを狙う作型では、無理に土寄せを行って葉鞘が細くならないように注意します。今後、降水量の増加が予想されますので、圃場内に水がたまらないよう、圃場の排水対策を確認します。
また、大雨直後に土寄せを行うと軟腐病等病害発生の原因になりますので、圃場の水分が低下してから行うなど、作業のタイミングを計り、状況に応じて薬剤散布を行います。
べと病の発生しやすい時期です。べと病発生圃場では、そのあと秋にかけて葉枯病(黄色斑紋病斑)が発生する傾向があります。秋の防除対策を見込みながら、計画的な薬剤散布を実施します。

最後

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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