農作物技術情報 第3号 果樹(令和4年5月26日発行)

ページ番号2005213  更新日 令和4年5月26日

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タイトル

  • りんごの開花は、4月の気温が高く推移したことから、満開期で平年より5日程度早くなりました。4月中旬以降に低温降霜、降雪が見られましたが、影響は少ない見込みです。結実の状況を見極め、早期かつ良質果を残すよう摘果を進めましょう。
  • ぶどうの生育は、4月の気温が高く推移したため、発芽期、展葉期とも平年より5~6日程度早くなりました。今後の気温の推移により生育の進みは変動しますので、開花期前後の管理を計画的に進めましょう。

りんご

1 生育概況

(1)開花期
生育診断圃の調査結果(表1)から、「ふじ」の開花始期は4月28 日と、平年より7日早く前年並みとなりました。また、「ふじ」の満開期は5月4日と、平年より5日、前年より2日早くなりました。今年は、発芽は概ね平年並みとなりましたが、4月の気温が高めに推移したため展葉は平年より5日早くなり、その結果開花は平年より6日前後早まって概ね前年並みとなりました。
寒気や放射冷却現象により4月17 日、20 日、5月10 日に弱い降霜、4月30 日に一部地域に降雪が認められましたが、昨年のような甚大な被害はないと推察されます。

表1

(2)結実
開花期間中は前半が低温と降雨、後半が好天となり(図1)、そのため中心花の結実状況が懸念されます。人工授粉などの結実対策の実施の有無が本年の結実に影響を及ぼすと推察されます。
4月中旬以降の低温の影響で、品種により果軸が短い果実やサビ果の発生が懸念されます。このため、果実肥大を促すため早期のあら摘果が必要です。また、併せて経過観察と仕上げ摘果で良質果を吟味します。

図1

2 摘果

(1)早期摘果の重要性
開花後1ヶ月位までは主に貯蔵養分で生長し、その後根や葉の生長に伴い当年の同化養分で果実や新梢、新根が生長します。このため、早期の摘果で貯蔵養分の消耗を少なくすることが果実の初期肥大を促すためには重要です。
また、早期の摘果によって種子(ジベレリンを分泌し、花芽形成を阻害する)を減らし、花芽分化を促進することも、隔年結果を防止し安定生産を図るうえでは非常に重要です。
今年の果実肥大と来年の花芽確保のためにも(図2)、早期のあら摘果が大切ですので、満開後30 日頃までにはあら摘果が終了できるよう、品種構成や労力等に応じた作業スケジュールを立て、計画的に摘果作業を進めます。

図2

(2)摘果の留意点
ア 最初に、1果そう1果とする予備摘果(あら摘果)を実施します。その際、不要な果そうの果実を積極的に除いていきます。その後、果実肥大や品質を確認しながら仕上げ摘果を進めます。                イ 摘果終了の目安は表2の通りです。今年の落花期は平年より5日程度早く、落花30 日後は6月10 日前後になります。作業を計画的に進め、早期摘果を心がけてください。
ウ サビ果、三角実や扁平果など、果形の悪い果実、病虫害果、傷果を中心に摘果していきます。
エ 果実は横の発育が良く、果硬が太くて長い正形果を残します。
オ 果台が極端に長いもの(25mm 以上)や短いもの(10mm 以下)は、斜形果の発生割合が高くなるので、できるだけ摘果します。

表2

(3)凍霜害発生園地における摘果の要点
凍霜害の発生した園地では、さび果、奇形果などの障害果の発生が懸念されます。摘果作業は被害様相が明らかになり、結実を確認してから行います。また、結実しても、サビ果や不正形果が多くでるので、予備摘果は多めに残し、仕上げ摘果でよい果形のものを残すように吟味してください。また、中心果が被害を受けた場合は、果形、肥大が良好で障害が少ない側果を利用します。
なお、仕上げ摘果の終了時期は、翌年の花芽確保のため、過度に遅れないよう注意します。

3 病害虫防除

(1)病害虫防除所が発行する発生予察情報を参考に防除を進めてください。昨年来、発生が目立っている黒星病やリンゴハダニ、ナミハダニにおいては注意報が出されています。今後これらの発生動向には十分に注意が必要です。
(2)6月は斑点落葉病など様々な病害の感染時期です。梅雨期は週間天気予報などを活用し、降雨の合間を捉えて、散布間隔が空き過ぎないように防除を実施してください。
(3)黒星病については、他病害との同時防除を兼ねて、本病に効果のある予防剤を定期的に散布してください。その際には散布ムラがないように丁寧に散布します。また、降雨が予想される場合は、降雨前に散布を行ってください。
なお、落花10 日後以降のEBI剤の散布は、耐性菌が発現する恐れがあるので行わないでください。
さらに、園地を見回り発生が確認された場合は見つけ次第、発病葉(図3)や発病果(図4)を摘み取り、土中に埋めるなど適正に処分してください。苗木など未結果樹での発生にも注意し、成木と同様に薬剤防除を徹底します。
(4)ハダニ類は、4月以降発生の多い状態が続いています。気温の上昇とともにさらに増える可能性があります。新梢葉で寄生葉率が30%に達したら、速やかに防除を行ってください。

図34

ぶどう

1 生育概況

紫波町の生育診断圃調査結果によると(表3)、4月の気温が高く推移したため、発芽期は4月26 日と平年より6日、前年より2日早くなり、展葉期も平年より5日、前年より3日早くなりました。
5月19 日発表の一か月予報によると「気温は高い」との予報です。これから開花期にかけては管理作業が重なり忙しくなりますので、生育状況や気象情報をしっかり確認し、計画的に作業を進めて開花前の管理が遅れないよう注意しましょう。

表3

2 開花期前後の栽培管理

(1)新梢の誘引
展葉7~8枚頃に、2回目の芽かき作業に合わせて良く伸びた新梢から誘引します。
(2)花穂の整理
ア 「キャンベルアーリー」は、開花前に3穂着生している新梢については、1穂落として2穂とし、全体で目標着房数の1~2割増の着生数とします。
イ 「紅伊豆」は、最終房数は1新梢1房とします。摘房の時期は、新梢の強弱を判断して強勢のものほど摘房を遅らせ、着色期を目途に最終着房数とします。
ウ 無核化する品種では、花穂の整形と併せて摘穂を行います。摘穂の目安は、ジベレリン処理により着粒が安定するため、最終着房数の1.5 倍程度とします。
(3)花振るい防止
ア 「キャンベルアーリー」は、強めの新梢を開花7~4日前に房先5~7枚の葉を残して摘心します。
イ 大粒種で花振るいが強い品種や園地では、植調剤を使用することにより花振るいを軽減(着粒増加)できます。使用する際は、品種毎の登録内容を十分に確認し、使用時期や希釈倍率に注意して使用してください。
(4)花穂の整形(図5)
ア 「キャンベルアーリー」では、摘芯作業と同時に花穂の副穂を切除し、下端を切り詰めます(尻止め)。また、主穂が長すぎる場合は上段の枝梗を1~2段切除します。
イ 「紅伊豆」などの大粒種は、1~2輪開花し始めた頃から先端部を切り詰めます。「紅伊豆」では副穂を切除し、主穂の基部から4~6段を切除して10~13 段程度を残すように整形します。
ウ 「サニールージュ」では開花初期(副穂の開花が始まった頃)に副穂を除去し(長い花穂は上部支梗を1~3段除去)、花穂の長さを概ね7~8cm とします。なお、花穂の先端は切りつめません。
エ 「シャインマスカット」では開花初期(副穂の開花が始まった頃)に副穂と上部支梗を切除し、花穂の長さを概ね4cm とします。花穂の先端は切りつめません。また、花穂先端が2つに分かれ使えない場合は、第1枝梗を利用します。

図5

(5)無核化処理
無種子化のため、「安芸クイーン」などの「巨峰系4倍体品種」、「サニールージュ」、「シャインマスカット」に対して遅れずに処理を行います。
なお、植調剤を使用する際は、品種毎の登録内容を十分に確認してください。
(6)摘粒
ア 果粒肥大を促し裂果や病害の誘発を防ぎ、着色向上など品質確保に不可欠な作業です。果粒の大きさが小豆から大豆くらいの大きさとなる満開後30 日以内に終了するのが目標です。
イ 1果房当たり「キャンベルアーリー」、「ナイアガラ」は70 粒程度、「サニールージュ」は50粒程度とし、二つ折りになる状態を目安に行いますが、縦に1~2列(2列の場合は表側1列と裏側1列)摘粒する方法や段抜きなどの簡便法もあります(図6)。
ウ 「紅伊豆」、「ハニーブラック」は1果房当たり30~40 粒、「安芸クイーン」は25~30 粒、「シャインマスカット」は40~50 粒程度とします。最上位に4粒程度着粒させ、下部に行くほど徐々に着粒数を減らし、下端は1粒となるようにします(図7)。

図67

3 病害虫防除

(1)ぶどうの開花期前後は、灰色かび病の発生時期です。生育ステージに合わせて、適期防除に努めてください。なお、灰色かび病等の薬剤抵抗性回避のため、同一系統薬剤の連用はしないよう注意してください。
(2)露地栽培で有袋栽培をする場合、防除後、薬剤が乾いたら速やかに袋かけをしてください。

最後

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