農作物技術情報 第2号 畜産(令和4年4月21日発行)

ページ番号2005014  更新日 令和4年4月21日

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タイトル

  • 飼料用とうもろこしの栽培では、品種選定と基本技術を再確認しましょう。               適切な栽植密度で収量確保を狙いましょう。
  • 飼料用とうもろこしは初期生育が重要です。適切な播種床の形成、雑草・害虫の防除を確実に行いましょう。
  • 牛舎の暑熱対策を始めましょう。

1 飼料用とうもろこし栽培のポイント

飼料用とうもろこしは、高エネルギーの子実と比較的消化性の高い茎葉から構成され、単位面積あたりの栄養収量が多く、家畜の嗜好性も良好な粗飼料です。次の栽培技術を基本として、単位収量の向上に努めます。

(1)品種の選定

生育期間内で確実に黄熟期となる品種の中から、収穫作業の分散や気象リスクを考慮し、早晩性の異なる数品種を選定します。また、病害虫や倒伏の被害が大きかった畑では、耐病性や耐倒伏性の高い品種への変更を検討してください。

(2)施肥

施肥は、化学肥料で窒素15 キログラム/10a、リン酸12 キログラム/10a、カリ10 キログラム/10a が基本となります。追肥が必要な畑では、基肥の窒素を8~10 キログラム/10a に抑え、残りの5~7kg/10a を追肥するよう、計画的に分施します。
堆肥の施用量は、10a 当たり3t が標準です。ただし、生堆肥は発芽不良などの原因となるので、播種1ヶ月前には施用して土壌と混和し、分解を促します。糞尿の多量施用は、植物体中の硝酸態窒素含量が高まり硝酸塩中毒のリスクが高まるなど、家畜に健康上の問題を生じさせる場合があるので避けます。
土壌分析や飼料分析を実施している場合は、分析値を参考に化学肥料や堆肥の施用量を増減します。
しかし、化学肥料の過度な減肥は初期生育の不良を、また、堆肥不足は生育期後半の肥料切れを起こすことがありますので、化学肥料と堆肥を合わせて、年間必要量の過不足が無いよう留意してください。

(3)播種床の形成

播種床の仕上がりは、発芽の早さ、斉一性、除草剤の効果に影響します。砕土は、直径2cm 以下となる土塊が全体の7割以上になるように行ってください。砕土が荒すぎると、地中の水分が種子まで運ばれず発芽に影響が出ます。降雨時に砕土を行うと、大きな土塊が出来やすくなるとともに表層に土の膜が出来て土壌の通気性が悪化するので避けます。

(4)播種作業

飼料用とうもろこしは、湿害に弱いので排水の良い畑を選びます。播種床形成前にサブソイラ等で心土破砕を行い、排水性を高めることも有効です。栽植本数は、表1の畦間、株間と栽植本数を参考にして下さい。
栽植本数は、10a あたり極早生品種で8,000 本、早生品種で7,000 本、中生品種で6,500 本、晩生品種で6,000 本を標準とします。密植しすぎると雌穂が小さくなりTDN 含量が低下するだけでなく、茎が細くなり倒伏にも弱くなります。

表1

鳥害防止のため、播種前にキヒゲンを種子粉衣します。
播種は霜が降りない時期で、平均気温が10℃になる頃(5 月上~下旬)に行います。播種深度は3~5cm が基本となりますが、地温が低く土壌水分が高いまたは播種時期が早い場合は3cm 程度、地温が高く土壌水分が低いまたは播種が遅い場合は5cm 程度にすると、発芽不良や生育ムラの防止に有効です。
火山性土壌では、鎮圧を行うことが重要です。鎮圧により発芽が安定し、除草剤の土壌処理効果が高まります。

(5)雑草防除

畑に発生する雑草の種類と発生程度によって、適切な除草剤を選択し、散布時期、散布量、使用回数を守り防除に努めます。毎年同じ除草剤を使用し続けると、その除草剤が効きづらい雑草が残るので、JA や普及センターに相談のうえ、当該雑草に効果の高い除草剤を選択します。
除草剤の土壌処理は雑草の芽吹き前に行うものが多いので、砕土(播種床形成)から土壌処理までの期間を空けないように注意してください。


(6)害虫防除

早期発見が最も重要であり、発生の予想される時期に圃場をよく観察します。アカザ・タデ類などの幼植物はタマナヤガ(ネキリムシ)の産卵を誘発し、発生源となるので、播種後から生育初期にかけて雑草防除を徹底します。被害があった畑は、ダイアジノン粒剤5など効果のある薬剤を散布してください。

(7)病害対策

飼料用とうもろこしの病害のうち、県内で発生が多く収量に影響するのは、すす紋病、根腐れ病、赤かび病です。
すす紋病は、下部の葉から枯れていく病気です。前年度の収穫残さから胞子が舞い上がり、下位葉に感染して発生が広がります。夏以降に肥料切れを起こすと発生しやすくなり、多発すると減収します。対策は、抵抗性品種の選定、肥料切れの防止(地力を高める)、前作残さのプラウ等による確実なすき込みです。
根腐れ病は、収穫時期に茎の根元が腐って黄熟期を過ぎると一気に枯れ上がり、植物体全体が黄色くなる病気です。稈の内部は空洞化し、軟化するため雌穂が垂れ下がる特徴があります。前作の残さや雑草から感染が広がります。気温が高く、降雨量が多い年は発生しやすいです。対策は、排水性の向上、雑草防除、抵抗性品種の選定、前作残さのプラウ等による確実なすき込み、地力の向上です。
赤かび病は、雌穂にピンクがかった白色のかびを生じて腐る病気です。前作の残さから赤かび病菌が増殖し感染が広がると言われています。赤かび病菌から作られるかび毒は家畜に有害なので、粗飼料の安全性の面からも発生しないようにすることが重要です。対策は、品種の選定(子実の露出が少ないもの、倒伏しにくいもの)、前作残さのプラウ等による確実なすき込み、適正な栽植本数です。

写真1

2 牛舎の暑熱対策

飼料用とうもろこしの播種始めから終わる頃の最高気温は、泌乳牛の暑熱のストレスの指標となるTHI 値が68 を越える日が続くようになりますので、牛舎の暑熱対策が必要です。

式

(1)牛体周辺の風の流れを確保する

牛舎の中で牛体周辺の風の流れが不十分と感じる場合は、対策として換気扇を掃除する、換気扇の台数を増やすなどを検討します。換気扇を掃除すると風速が向上する事例が多いので、ぜひ試してみて下さい。

(2)牛舎に射し込む直射日光を遮断する

牛舎の軒の部分に寒冷紗を設置する、窓に寒冷紗やすだれをかけるなどで牛舎に射し込む日光を遮断します。本格的な暑さが続く前に、できるところから準備します。

【資料利用上の注意】

  • この資料に掲載している農薬の情報は、令和4年4月14 日現在の農薬登録情報に基づいています。
  • 農薬は使用前に必ずラベルを確認し、使用者が責任をもって使用してください。

(資料作成年月日:令和4年4月15 日)

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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