農作物技術情報 第1号 水稲(令和4年3月17日発行)

ページ番号2004948  更新日 令和6年3月13日

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タイトル

  •  適期移植を目標として、播種計画を立てましょう。
  •  出芽揃いを良くするため、適正な浸種水温及び期間を守りましょう。
  •  育苗期間中の温度・かん水管理には最大限の注意をはらいましょう
  •  畦畔のかさ上げや用排水路の点検・補修等は早めに行いましょう。
     

育苗

1 育苗計画

  •  適期(県南部5月10 日~20 日、県中北・沿岸部5月15~25 日)に移植できるよう、移植日から各苗質毎の育苗期間(稚苗20~25 日、中苗30~35 日)を逆算して播種計画を立てます。
  •  近年、作業性を優先した田植の早期化及び気候変動(温暖化傾向)にともない、一年で最も暑い7月末~8月初めに出穂する圃場が多くなり、高温登熟による品質低下のリスクが高まっています。さらに、生育ステージの前進は、冷害危険期(幼穂形成期~減数分裂期)に低温に遭遇しやすくなり、障害不稔発生のリスクも高めることにもなりますので、極端な早植えは避けてください。
  • なお、高密度播種苗育苗や疎植などの苗箱数を減らす方法、あるいは直播栽培の取組みも広がっていますが、管理上注意すべき点もありますので、新規導入の場合は最寄りの指導機関の助言のもとで取り組んでください。

2 作業前の準備

(1)育苗管理体制の確認

  •  育苗規模が大きくなるほど、天候に応じたハウス開閉やかん水の臨機対応が難しくなります。昨年の状況も踏まえ、育苗計画と作業体制に無理がないか点検するとともに、管理の省力化、細菌病対策のためプール育苗の導入を検討します。
  • また、低温・高温時やその他トラブル時に備え、育苗施設の監督役や現場の担当者同士が、常に共通認識を持って行動できるように、連絡体制をしっかり整えます。

(2)育苗環境は清潔に!
各種機材・施設の洗浄を実施し、育苗施設付近に籾殻・稲わら等を置かないようにします。
 

(3)各種機材は事前点検を!

  • 催芽機・育苗機は、設定と実際の温度が合っているか必ず点検します。
  • 播種機の調量設定(播種量・床土や覆土の量・薬剤量)なども事前に確認しておきます。

(4)異品種の混入防止対策
作業者同士で種子袋の記載事項や作業内容について、あらかじめ確認します。確認にはチェックシート等の活用をお勧めします。

(5) 健苗育成のための環境改善
例年、育苗時に病害が発生する施設では、育苗環境が悪化している事例が多くみられます。その場合は、置床の均平や排水対策を施すなど、育苗環境の改善を図ります。
育苗の失敗をなくすことが稲作コストの低減を図る第一歩です。

 

写真1 2

(6)育苗作業・管理の工程
作業の流れや基本事項を確認します(図1)。

図1

3 種子消毒

(1)種子更新は、必ず行う
(2)消毒方法ごとの留意事項を遵守する

  • 生物農薬は、処理環境によって効果が変動しやすいので、浸種水温や水入替え時の取扱い方法、前後に使用する薬剤との相性についても予め確認してください。
  • 生物農薬・温湯消毒は、イネばか苗病に対する効果が十分ではないので注意してください。
  • 低濃度長時間浸漬(24 時間処理)を行う場合は、水温12~15℃になるよう予め調温してから浸種します。→ 4 浸種 参照
  • 異なる薬剤で消毒した種子は、別々の容器で浸種します。

(3)温湯消毒は、処理条件(温度・時間)や処理後の保管方法に注意する

  • 割れ籾が多い種子の場合、58℃20分処理では発芽率が低下する場合があるので、60℃10分処理を基本とするとともに、発芽率のチェックを実施してください。
  • 長期保管する場合は、水分15%以下に通風乾燥し、15℃以下の暗所保管とします。            生乾きの状態は、出芽率の低下や病害の発生を助長するので避けます。

4 浸種

(1)適正浸種水温12~15℃、浸種期間7~10 日を守る
水稲種子は、10℃未満の低水温浸種で発芽速度が遅くなり、発芽率は低下します。特に、浸種後24 時間の浸種水温(1日目の水温)が低いと、その後十分な水温を確保しても出芽揃いが悪くなるため(図2)、用水温が低い場合は、あらかじめ足し湯などにより15℃程度の水温を確保してから浸種を開始します。
また、外気温を遮断し昼夜の寒暖差を小さくするため、下記のような工夫を講じます。

  • 屋内で浸種を行う
  • 浸種水槽にコンパネや被覆資材を重ねて蓋をする
  • 催芽機の利用 等

(2)浸種期間の厳守
浸種期間は7~10 日(積算温度100℃程度)を遵守します。
浸種日数が15 日を越えると、出芽率が低下することがあります。

図2

5 催芽

(1) 催芽温度の厳守
細菌病類の発病を助長するので、30℃を厳守します。
(2) 催芽の確認
発芽の速度は種子予措、品種、休眠性の差で異なることから、所定時間になる前から芽切りの状態を確認します。⇒ 芽の伸ばしすぎは播種・出芽ムラの原因
(3) 病害対策
循環式ハト胸催芽器を用いる場合は、催芽器内に入れた桶内で催芽する(図3)等、種子のまわりの水を直接循環させないよう工夫します。
なお、桶内の水温は、催芽機の設定温度より1~2℃低くなるので、適宜調温してください。

図3

6 播種~出芽

(1)播種量
苗質・育苗期間に応じた播種量設定とします。
稚苗(20~25日育苗):乾籾150~180g/箱
中苗(35~40日育苗):乾籾100~120g/箱
(2)培土の使用量
床土2cm・覆土0.5cm程度とします。
(3)出芽

  • 出芽揃いをよくするため、加温出芽を基本とします。
  • 細菌病対策のため、出芽温度は30℃を厳守します。
  • 出芽長の目安は、稚苗1cm、中苗0.5cm程度です。

図4

7 ハウス展開後の管理

(1)温度管理(慣行育苗・プール育苗共通)

  • 低温や荒天の日以外は、徐々に外気に慣らしていく管理とします(表1)。
  • 5℃以下の低温が予想される場合はハウスを閉め、必要に応じて保温・被覆します。
  • 晴天時は朝の気温上昇に注意し、早めにハウスの換気をおこないます。

表1

(2)かん水(慣行育苗)

  • かん水は基本的に朝1回(9時ごろまでに)、床土に水が十分に浸透するよう行います。              夕方のかん水は、床土内の暖まった空気を冷やし、ムレ苗の発生原因となるので避けます。
  • 育苗の後半は、葉からの蒸散量が増えて乾きやすくなるので、かん水量を増やします。                        乾き過ぎなどにより夕方のかん水が必要となる場合は、しおれ防止程度にとどめます。

(3)追肥(慣行育苗・プール育苗共通)

  • 生育中に葉色がさめてきた場合や、病気で生育が衰えている場合は追肥が効果的です。
  • 時期は、稚苗で1.5~2 葉期以降、中苗は2~2.5 葉期以降とし、追肥量は箱あたり窒素成分1g(硫安であれば現物5g)を水1~1.5L に溶かし、ジョウロ等で散布します。
  • 葉が乾いた状態で散布し、その後水を散布して葉に付着した肥料分を洗い流します(葉焼け防止)。

(4)プール育苗の水管理

  • 1回目の水入れは、緑化終了から必ず2~3 日以内に行います(細菌病対策)。水没による生育不揃いを防止するため、この時点の水深は苗箱の培土表面より下の位置とします(図5左)。
  • 2葉目が出始めたら培土表面が隠れる程度の水位を確保します(図5右)。
  • 水温が30℃を超えたら、新しい水と入れ替えて温度を下げます。
  • プールの落水は、田植えの2~3 日前とし、極端に早い落水は避けます(しおれ対策)。

図5

(5)育苗期病害の対策

  • 育苗期の細菌病類(図6)の発生に注意します。育苗期間中の高温(特に催芽・出芽時30℃、緑化~硬化初期25℃を越える条件)や過湿条件は発生を助長するので、適正な温度・水管理に努めます。
  • 適度なかん水(乾燥と過湿を繰り返さない)を行うとともに、低温が予想される場合は、ハウス内が5℃以下にならないよう、保温資材で温度確保に努める等の対策を徹底します。
  • いもち病菌の感染を防ぐため、稲わら・籾殻は育苗施設付近に置かないよう注意します。

図6

留意点

(6)農薬の安全使用

  • 育苗ハウス内等で農薬を散布する場合、隣接する作物へ飛散しないよう注意します。
  • 水稲育苗後に野菜などを栽培するハウスでは、土壌に薬剤が飛散すると後作物への農薬残留がないよう、無孔のビニールシートを敷いたり、ハウス内で箱施用剤等の使用を控えるなどの対策を講じます。

圃場準備

1 畦畔や農業用排水路等の点検・補修

  • 幼穂形成期や減数分裂期など、イネが低温に弱い時期に、冷害対策として深水管理(15cm 以上)ができるよう、あらかじめ畦畔をかさ上げしておきます。
  • また、畦畔や水尻からの漏水を防ぎ、湛水状態を保てる圃場をつくることは、深水管理や除草剤の効果を高め、農業用水の浪費防止にもなりますので、畦畔や水尻の補修も行います。                        農業用水・排水路等に修繕が必要となる箇所がないか、早めによく確認してください。

2 土づくり

(1)有機物の施用
有機物の施用は、土づくりに欠かせない技術です。
有機物の種類により、施用量が異なりますので、表2を参考に適正量を施用してください。

表2

(2)深耕

  • 稲の生育・収量・品質を高めるためには、根の活力を高める土づくりが必要です。
  • 根の発達は、土壌の物理性と密接に関係しており、作土層が深く柔らかく、透水性が十分確保されていれば、根は下層まで深く分布し、養水分を生育後期まで豊富に吸収利用することができます。
  • 作土が浅いと肥効の持続が短くなるうえ、根張りも悪くなり根の機能が早く低下し、気候変動に対する抵抗力が弱くなるので、作土深は15cm 程度を確保します。
  • なお、一気に深くすると、生産力の低い下層土が混入するため、毎年徐々に深くするか、土づくり肥料・たい肥の投入による地力増強、側条施肥なども検討します。

たい肥 耕起

最後

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農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
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