《水稲》稲わらのすき込みについて

ページ番号2000238  更新日 平成21年7月29日

印刷大きな文字で印刷

質問内容

《これは2007年10月の相談です》
収穫も終わり、今年も稲わらの全量すき込みを行います。なるべく腐熟促進させたいと思い考えていた所、疑問が生じましたので質問させて下さい。
腐熟が促進される条件とは?
1.気温が高い事
2.好気性条件である事
3.適度な水分がある事(60%ぐらい?)
4.窒素を消費するため、施用する事
で良いでしょうか?
JAの現在の指導では
1.早め(気温が高いうち)に耕起する事
2.深耕(15cm以上)する事(出来ればプラウ耕?)
3.窒素入り土壌改良資材を投入する事
だったと思います。
しかし、我が家の条件に合わなかったり、もっと腐熟を促進できないかと考えていたら疑問がうまれました。
条件は、毎年、稲わらすき込みするので、なるべく腐らせたい。今年の仮払い金額をみると、肥料の価格も抑えたい。深耕ロータリー、レーザープラウ・レーザーハローやそれに伴うクローラトラクターの導入は、現実的ではない。普通のロータリーで耕す。
そこで質問なのですが、
1.深耕する事により、嫌気性になり腐熟が阻害されないか?耕起を初冬まで遅らせる(地表にて好気的条件で腐熟させる)方が良いのではないか?(水分量が不足するかな?)
2.または、水分量・酸素量も考慮して、1〜5cm程度の浅耕にし、春に深耕する方が腐熟するのでは?
3.堆肥の切り替えしの様に、秋に2回耕起した方が効果があがるのか?
4.窒素成分の補給を目的とするならば、硫安・輸入尿素等、価格の安い単肥で十分ではないのか?(これについては、腐熟の促進のみで回答していただければ。必要に応じて、ケイカル等投入したいと思います。)
以上、まとまりのない文章になりましたが、よろしくおねがいします。

回答

いなわらの腐熟を低コストに効率的に進めたいというご相談と理解しました。
結論としては
「資材や耕起深等にはそれほど注意する必要はありませんが、早めに鋤込む」ことをおすすめします。
まず、腐熟が促進される条件についてですが、全くご指摘の通りです。それぞれの項目について多少解説いたしますと、
腐熟を促進する条件
(1)気温(地温)が高いこと
地温が高いほど、微生物の活動が盛んになりますので腐熟は促進されます。
ただし、地温が低くても微生物はかなり活動しておりまして、真冬でも腐熟は進行しております。
ちなみに地温は真冬でも絶対に0度以下にはなりません。
(2)好気性条件であること
酸素がある条件ですと腐熟は効率的に進みます。
ただし、酸素が少ない条件でも腐熟を進める微生物は活動しております。
(3)適度な水分があること
刈り取りが終わった後の水田の土壌水分は30〜45%程度だと思われます。
腐熟を進めるためには、にぎって水がしみ出るようなやや高めの水分状態が良いと言われております。
(4)窒素を添加すること
いなわらは炭素が多く、窒素が少ないため、いなわら腐熟促進肥料を施用した方が腐熟は進みます。
ただし、地温や酸素の状態等に気をつければ、資材を使用しなくても腐熟は十分に進みます。
しかし、地力窒素を蓄えるためには窒素を施用した方が良いと思います。
窒素源は硫安であっても鶏ふんであっても地力窒素になることには変わりがありません。
(5)鋤込む深さ
表面よりは下層の方が分解が進むことが多いようです。
ただし、その差は小さいですし、下層土の状態にもよりますから、深耕については必ず実施すべき項目ではないと思います。
JAの「深耕すること」という指導も腐熟を促進することとともに、作土を拡大して生産を安定させることも含まれていると思います。
ただし極端なグライ土壌や泥炭土であれば表層の方が分解が進むということがあるかも知れません。しかし、そのような圃場では、わら鋤き込みそのものをしない方が稲の生育は安定いたします。
従いまして、質問に対する回答としては、次のように考えています。
(1)深耕による腐熟抑制の可能性について
地温の高い時期に土と混ぜて、土壌中の微生物に分解させるのが優先すると考えます。
鋤き込み作業が困難なほどの状態であれば別ですが、鋤き込みできるのであればなるべく早く土と混ぜるのが良いと思います。
地表に置いたままでは、乾燥することもありますし、土との接触もありません。多少水分が多めでも土と混ぜた方が分解は進みます。
(2)深耕の時期や浅耕との組み合わせについて
もし、深耕するのであれば春よりは秋の方が望ましいと思います。長い期間深いところに鋤込むという意味からです。
(3)耕起回数について
ご指摘の通り、もし可能なのであれば、間を空けて2回耕起すると腐熟は進みます。
経験では、秋2回に限らず、秋1回春1回でも同様の効果があります。
(4)腐熟促進に添加する窒素の形態について
ご指摘の通り、いなわら腐熟促進・地力窒素向上を目的とした場合には尿素でも多少未熟な鶏ふんでもなんでも構いません。
ただし、バークたい肥のような、いなわらよりも炭素率が高いものは当然不適当です。
結論としては、
(1)通常の水田であれば、多少水分が高くても早めに鋤込むのが望ましい。
(2)深い方が腐熟は進むが深耕は必須ではない。耕起回数は多いほど腐熟はすすむ。
(3)腐熟促進肥料は腐熟に必須というよりは地力増強に効果が高い。窒素であれば種類はなんでも良い。
ということになります。

このページに関するお問い合わせ

農林水産部 農業普及技術課 農業革新支援担当(農業研究センター駐在)
〒024-0003 北上市成田20-1
電話番号:0197-68-4435 ファクス番号:0197-71-1088
お問い合わせは専用フォームをご利用ください。