《水稲》水田の水生生物(カイエビ)の発生について

ページ番号2000224  更新日 平成21年7月13日

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質問内容

農業技術の相談とは違うのですが、水田に生息する水生生物についてお尋ねします。
カイエビという甲殻綱鰓脚亜綱貝甲目カイエビ科の生き物を御存知でしょうか。
以前から今頃の水田に何かいるなと気にはなっていたのですが、まじまじと見たら透明な二枚貝の殻がの中にミジンコのような体をした生き物で、カイエビというものだそうです。
隣接した田んぼには住んでおらず、特定の田にしかいないようでした。
また、地域的にも発生が多く見受けられる地域があるようです。
カイエビ(写真を見比べるとタマカイエビのようですが)は岩手県では珍しい生物なのでしょうか。
それと、水稲には害をなさないのでしょうか。
また、圃場によっての生息の有無の違いは何なのでしょうか?教えていただけたらさいわいです。

回答

  • 水稲栽培との利害について

餌は小動物の死体やプランクトンなので、イネには無害だと思います。
文献によると、田面水を濁らせるので除草に役立つともありますが、効果が発揮されるほどの生息密度にはなかなかならないのではないでしょうか。

  • 地域や水田により発生に差があるのは?

水田の特徴として、一年のなかで土壌が湛水される期間と乾燥する期間に分かれることがあります。
一般に水中に生息する動物は、水がなくなり土壌が乾燥すると、生息することが困難となりますが、水田に生息する動物の一部は、この環境にうまく適応していることが知られています。
カイエビの卵がその圃場に以前からあるのか、外部から資材や土とともに持ち込まれたのかは判りませんが、卵がある場合、ふ化条件が揃うかどうかで発生に差が生じます。
カイエビ類が含まれる甲殻類においては、水田土壌が乾燥する秋以降は卵で土壌中に存在し、春に水田が湛水されることで、卵が孵化することが知られています。
面白いことに、土壌がいったん乾燥しないと、水に入れても卵は孵化しないそうです。
雪や地形の影響で冬に土壌が乾燥しない水田では、発生は難しいのかもしれません。
また、岩手では記録のない動物ですが、カブトエビという甲殻類では、水田の代かきによって卵が水面上に浮くため、代かき後の水を水路に流すと卵も一緒に流れてしまい、水田内のカブトエビも減少すると考えられています。
以上のように、秋から春にかけての土壌水分条件や、田植え前の水管理によって水田中の動物の発生が大きく影響するようです。
カイエビ類の岩手県での分布については明らかではありませんが、これらの観点から水田を観察されると、興味深いことが見つかるかもしれません。

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