《奥州》夏の猛暑に負けない!江刺地区のトマト産地の取組

ページ番号2011266  更新日 令和6年12月23日

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 奥州市江刺地区は内陸南部に位置し、北上川流域に面する平坦部と北上山系に連なる中山間地や山間地からなる自然豊かな地域で、「江刺金札米」、「江刺りんご」、「江刺野菜」等のブランド農産物が生産されています。

 JA江刺野菜部会トマト専門部(以下、トマト専門部)では、夏秋作型(4月中下旬定植、6月上旬から10月まで収穫)で、「りんか409」をはじめ複数の品種を組み合わせた栽培が行われています。

 近年の夏期高温により、裂果や軟果といった障害果の発生による市場からのクレームに加え、落花による減収や、それに伴う栽培意欲の低下など様々な課題が顕在化してきています。

 これらの課題を解決するため、新たに硬玉品種を導入し、普及拡大につなげるための活動が令和5年度から始まりました。

 

硬玉(かただま)品種について

 硬玉品種とは、その名が示す通り、果皮が硬い品種のことをいいます。その中でも、硬さの最上位といわれているのが「麗月」(サカタのタネ)、「桃太郎みなみ」(タキイ種苗)です。硬玉品種のメリットとしては、裂果や軟果の発生が少ないことや、夏期の落花が少なく、着果に優れていることがあげられます。夏の高温による裂果等は、夏秋産地共通の課題であり、他県の主要産地でも硬玉品種への切り替えが進んでいます。こうした動きを踏まえ、猛暑下でも安定出荷のできる産地を目指し、以下の活動に取り組みました。

令和6年度の取組

(1) 硬玉品種の試験栽培

 トマト専門部では、硬玉品種を栽培する若手生産者で構成される「硬玉トマト研究会」を立ち上げ、試験栽培を行いました。試験圃場を、ベテラン農家も含めて、平坦部に4か所、(中)山間部に5か所設置し、JA江刺と連携して、栽培期間をとおして生育調査を行いました。「麗月」は、過去に試験栽培を行った際に小玉が多いと低評価でしたが、再度試験栽培を行い、「桃太郎みなみ」とともに、高温耐性が江刺地区で発揮されるか確認しました。

(2) 硬玉トマト研究会中間検討会の開催

 平坦部で試験栽培を行う生産者の圃場を会場に、8月30日に硬玉トマト研究会中間検討会が開催され、6名の生産者が参加しました。普及センターからは栽培概要や生育調査の中間結果を、JA江刺からは品種別選果データをそれぞれ報告し、既存品種との違いや収穫までに時間がかかること等について参加者と共有しました。その後、意見交換が行われ、肥培管理や着果性、生理障害の発生などさまざまな視点で活発な議論が展開されました。実際に、「麗月」と「桃太郎みなみ」の試験圃場を視察し、自身の圃場との違いに気づきが得られ、日頃の栽培管理を振り返る機会にもなりました。

ハウスの中でトマトを見る写真
硬玉トマト圃場巡回の様子
話し合いの様子
硬玉トマト研究会中間検討会の様子

(3) 実績検討会での作付け推進

 12月17日に行われた実績検討会では、トマト専門部の部会員に向けてJA江刺、硬玉トマト研究会、普及センターが、それぞれの立場から硬玉品種導入に向けた説明を行いました。JA江刺からは、種苗会社を講師に招いた「麗月」の栽培講習会や現地巡回、先進地・岐阜県への研修会といった令和6年度の活動内容について報告がありました。また、最終選果データにより、硬玉品種は既存品種と比べて、A品率、小玉の割合ともに高い結果が示されました。「麗月」を栽培した生産者からは、高温期の着果性に優れていることや、果形が良く店持ちが良い、裂果がかなり少ないといったメリットが報告され、それを踏まえた栽培管理についての提言もありました。普及センターからは両者の報告を裏付ける生育データを報告し、「麗月」が江刺の平坦部の気候に適する可能性を示しました。参加した部会員からは、既存品種との切り替え時に留意する点や「麗月」に適した台木の種類など質問が飛び交いました。

グラフ
実績検討会で報告した生育調査資料
(平坦部と山間部での麗月の開花段数、収穫段数)

今後について

 「麗月」は山間部などの冷涼な気候下では着果性の良さが平坦部ほど発揮されなかったことから、他の硬玉品種での適性を検討します。また、「桃太郎みなみ」は令和6年度の試験圃場が少なく、着果性の面で既存品種との違いを見出せなかったことから調査を継続します。

 普及センターでは、これらの取組をとおして、硬玉品種の普及拡大を図りながら、江刺地区が夏秋トマトの産地として維持・発展できるよう、関係機関・団体と連携して支援してまいります。

青いトマト
麗月の着果の様子

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このページに関するお問い合わせ

奥州農業改良普及センター
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