《奥州》県南地域の気候を生かしたりんどう極早生品種の活用 ~奥州市衣川地域~

ページ番号2010596  更新日 令和6年3月22日

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色鮮やかなりんどう
年内2度目の開花(10月)の様子

はじめに

 奥州農業改良普及センターの管内にある奥州市衣川地域は、りんどう生産の盛んな地域で、岩手県育成品種を中心に5月下旬から促成りんどうの出荷が始まり、青、白、桃のりんどうが11月上旬まで次々と出荷されています。また個人育種に取り組む生産者による「衣川ピンク」をはじめとする地域オリジナル品種が多数開発されています。

りんどうの圃場
衣川地域の7月の様子

極早生品種「いわて夢あおい」の出荷

 衣川地域は県南部に位置し、県内でも開花が早い地域で、岩手県育成品種で極早生の「いわて夢あおい」(7月上旬開花の青系の品種)を活用して、3つの作型に取り組んでいます。

 1つ目はハウスでの促成栽培で、季咲よりも早く出荷できることから、極早生品種だけでなく、地域オリジナル品種も栽培しています。令和5年は5月25日から出荷となりました。

 2つ目は季咲き作型です。例年は6月10日頃出荷を迎えますが、令和5年は春先が高温であったこともあり、露地出荷で約1週間早い6月4日から出荷が始まりました。りんどうを県内でも早く出荷できる地域特性を生かし、「いわて夢あおい」は管内では最も作付け面積の多い品種となっています。「いわて夢あおい」の令和5年6月の県内出荷のうち、管内の出荷量は、56%と過半を占め、高単価となる盆時期に迫る単価となっています。

 3つ目は、ジベレリン処理による、1年に2度出荷する作型です。

岩手県育成品種
いわて夢あおい(6月)

収穫後のジベレリン処理の実施

 岩手県農業研究センターから平成28年に、研究成果『りんどう極早生品種「いわて夢あおい」における全茎収穫を可能とする収穫後のジベレリン処理技術』が発表されました。これは、「いわて夢あおい」の全茎収穫後にジベレリンを散布することで新たに立茎させ、養成茎として伸長させることで翌年も全茎収穫が可能となる技術です。また、翌年の開花期が5日から1週間程度前進します。処理後の株の生育に影響を及ぼすため、7月20日頃までに処理します。

 開花期の早い管内は、この技術を活用することが可能ですが、技術の適用に当たり管理に注意が必要です。この技術により伸長した茎は若くて柔らかいため、葉枯病等の病害の発生が多くなります。りんどうは盆、彼岸に需要期を迎えますが、養成茎の伸長期はこの非常に忙しい時期と重なるため、通常防除に加え、特別防除を実施するなど丁寧な管理が求められます。

 また、除草の徹底が必要で、こまめな除草を行うことにより、病害虫の発生を防ぎ、追肥もりんどうの株に十分いきわたらせることができます。収穫後のこれらの丁寧な管理により、通常は収穫後の養成茎として使用する茎が、10月には開花を迎え出荷できるまでに立派に生長します。

1枚目
ジベレリン処理前の株の状態
2枚目
3週間後の処理株
3枚目
9月の処理株

10月に開花する「いわて夢あおい」の出荷

 6月に開花する「いわて夢あおい」の花は、その後に出荷される品種と比較して青が薄い印象を与えます。しかし、10月のいわて夢あおいは青色が濃く、葉色も6月よりも濃い緑となり、6月の草姿とはまた違った魅力があります。令和5年は、秋まで高温で経過したため、ジベレリン処理後の生育期間も長く、4段から5段の茎も見られました。この処理により、管内の一部の生産者が9月中旬から10月に2回目の「いわて夢あおい」の出荷を行っています。なんと、りんどう二毛作による出荷なのです!手間暇のかかる作型のため、管内のこの作型での出荷はまだ、2.3%とわずかではありますが、取り組んでいる生産者は少ないものの、興味を持ち、ジベレリン処理を始める方もいます。

地域特性を生かしたりんどう生産の継続

 管内は大規模りんどう経営体が少なく、家族経営による小規模の経営が主体の地域です。高齢化が進み、新規生産者も少ないことが課題ですが、地域特性を生かしながら、魅力あるりんどう経営を実現できるよう支援していきます。

 (文:奥州農業改良普及センター)

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