《奥州》産地情報 地域オリジナルりんご品種「奥州ロマン」の生産拡大を目指して

ページ番号2005710  更新日 令和6年3月13日

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はじめに

 胆江地方は、胆沢川によって開かれた胆沢扇状地と、北上盆地の田園地帯が広がる自然豊かな地域です。当地方はこの環境を活かし、水稲、果樹、畜産、野菜、花き等、様々な品目が栽培されています。

 そのような中、奥州市江刺は、りんごの栽培が盛んです。高品質化と管理作業の省力化を目的としたわい化栽培の取組みが早くから行われ、現在JA江刺管内の約220haで「江刺りんご」が生産・販売されています。

 江刺地域では、「ふじ」「ジョナゴールド」「シナノゴールド」等、本県を代表する品種に加え、地元で育成された「紅ロマン」等特徴的な品種が栽培されています。その中で、近年導入に力を入れている品種のひとつに、地域の名前を冠した新品種「奥州ロマン」があります。

奥州ロマン
収穫前の「奥州ロマン」

「奥州ロマン」について

 「奥州ロマン」は、奥州市江刺の高野卓郎さんが育成し、平成28年に「高野5号」として品種登録されました。10月中下旬に収穫期を迎える品種で、シャキシャキした独特の歯ざわりと強い甘味があり、貯蔵方法によっては7か月間程度品質を維持することができるなど、優れた特徴があります。

「奥州ロマン」栽培上の課題

 「奥州ロマン」は、育成の年数が浅いため、栽培特性で不明な点が多くあります。普及拡大を図るため、大玉で高品質な「奥州ロマン」の生産技術の確立が課題となっています。この課題を解決するため、奥州農業改良普及センター(以下、普及センター)では、高品質果実生産に向けた栽培技術の確立を目指し、平成30年度から関係機関と連携して調査し、生態や収穫適期の把握、果実肥大促進方法の開発等を行いました。

「奥州ロマン」の生産拡大に向けて

(1)「奥州ロマン栽培マニュアル」の作成と活用

 これまでの調査で得られた新たな知見や栽培のポイント、調査データを暫定的に作成されていた栽培マニュアルに追加し、令和3年度に栽培技術向上と生産振興を目的として、充実した内容の「奥州ロマン栽培マニュアル」を発行しました。

 マニュアルは「奥州ロマン」を栽培する管内の生産者や関係機関等に配布され、栽培管理に活用されています。

マニュアル

中身
令和3年度に発行した「奥州ロマン栽培マニュアル」の表紙(
上)と内容の一部(下)

(2)部会での取組

 JA江刺のりんごは、近年、高温の影響から平場で「ジョナゴールド」の着色が進みにくく、収穫が遅れる等の問題がありました。JA江刺りんご部会では、その代替品種を検討し、令和元年度に「奥州ロマン」を導入推奨品種に位置づけました。以降、改植による導入推進を図り、収穫前管理指導会や収穫目揃会を実施し、適期着色管理や適期収穫に向けた意識醸成が地域全体に普及するよう取組を行っています。

収穫前管理指導会
「奥州ロマン」を背景に、講師の高野氏が
説明している様子

今後の課題

 「奥州ロマン」の栽培面積は、主力品種と比較するとまだまだ少ない状況ですが、年々増加しています。「奥州ロマン」は導入されて間もないため、若木がほとんどですが、今後面積の拡大や、樹が生長するのに伴い、生産量の増大が見込まれます。そのため、部会が一体となり、高品質果実の生産を拡大していくためにも、栽培管理技術の共有が課題です。それに向け、適切な栽培管理技術をJAや関係機関が連携して、生産者への普及に取組んでいきます。

ポスター1
「恋桜」のポスター

ポスター2

今後に向けて

 「奥州ロマン」は、高い貯蔵性を活かして、りんごの流通量が少なくなる3月頃に出荷する戦略をとっています。

 「桜の花が咲く頃に大切な人を思い、贈ってほしい」との思いから「恋桜」という商標で取り組んでいます。

 今後はより多くの生産者が高品質な「奥州ロマン」を生産し、さらに所得向上につなげていけるよう、関係機関が協働しながら産地づくりを支援していきます。

 

(文:奥州農業改良普及センター)

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このページに関するお問い合わせ

奥州農業改良普及センター
〒023-1111 岩手県奥州市江刺大通り7-13
電話番号:0197-35-6741 ファクス番号:0197-35-6303
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