《奥州》100周年を迎えた江刺金札米~これからの100年に向けて~

ページ番号2004263  更新日 令和6年3月13日

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江刺金札米は100周年

 江刺金札米は、誕生となる栽培開始から令和3年で100年を迎えました。本年度は、100周年を記念して、様々なイベントなどの取組が実施されています。

 江刺金札米のはじまりは、品質の良い新品種「陸羽132号」が江刺で試験栽培された大正10年(1921年)。この品種導入を契機に生産者と関係者が一丸となり生産・販売に力を入れて全国的な評価を得ました。

 江刺金札米の全国的評価を獲得したこれまでと、これからの取組を紹介します。

100周年を記念して製作された米袋
図1 100周年を記念して製作された米袋

ブランド米「江刺金札米」の誕生とこれまでの取組

 明治末期から大正10年頃までの岩手米の評価は極めて悪く、市場価格も全国最下位のレベルでした。当時栽培されていた品種は、いもち病に弱く、品質が悪いなど劣ったものでした。

 そのような中、農林省農事試験場陸羽支場(秋田県大曲町、現秋田県大仙市大曲)で育成された陸羽132号が、大正10年に岩手県立農事試験場胆江分場(江刺郡愛宕村、現奥州市江刺)で試験栽培が開始されました。従来品種に比べて収量が高く、耐病性も強く、品質の高いことから栽培が広まりました。

 陸羽132号の普及には農事試験場胆江分場とともに、江刺郡農会が尽力し、その結果、品評会においても好成績を修めるようになりました。

品種の導入に加えて、乾燥調製技術の改善も進められました。乾燥はハセ掛棒掛の普及に努め、籾摺りは、土摺臼に替えて肌ずれや砕けが少ない岩田式籾剥機(図2)の導入の普及に努めた結果、評価を高めることができました。

所蔵:農業科学博物館(北上市成田)
図2 所蔵:農業科学博物館(北上市成田)

 また、江刺郡農会は郡内の俵米を共同販売し、東京の深川市場で高評価を得て、その後木村徳兵衛商店を委託販売先として移出されました。

 江刺米は、登場するやいなや、他県の良質米産地を追い抜き、一気に市場のトップに躍り出ました。その後も「味の良い江刺金札米」として高値で取引されるようになり、他との区別のため米俵に赤札、後に金札を付け、さらに輸送した一車の中の一俵に大黒様の鋳物を入れるなどして販売し、評価をさらに高めていきました。昭和初期には全国最高の格付けとなり、第2次世界大戦前の食糧管理となるまで全国から高い評価を得続けました。

大正後期の東京正米標準米価
図3 大正後期の東京正米標準米価

 第2次大戦後も、良質米の生産販売や作業の省力化のための取組が進められました。

 昭和30年代には、英国製大型トラクタの導入や大型ヘリコプターによるいもち病空中散布などにより省力、良質米生産に取り組まれ、昭和40年には当時の稲瀬農協が、もみ処理能力1,000トンのカントリーエレベーターを全国で3番目の施設として整備しました。その後、平成4年には全国最大規模のカントリーエレベーターが増設されるなど、全国に先駆けた技術、施設等の整備が積極的に行われました。

 その後も生産者とJAはじめ関係機関が良質米づくりに積極的に取り組み、玄米輸送のバラ出荷や水稲採種圃の設置、最近では全国的にも注目される地域全体での特別栽培(減農薬、減化学肥料)、「金色の風」生産者のGAPへの取組などの安全安心な米生産が進められています。令和2年度現在、約3,000haが作付され、一等米比率99.7%と高品質の米生産により、江刺金札米の高い評価を得ています。

江刺金札米を支える種子生産圃場と施設
図4 江刺金札米を支える種子生産圃場と施設

今後の100年に向けて

 100年の節目を記念し、令和3年度にはこれまでの100年を振り返り、今後に活かす取組が実施されています。

 JAを事務局として関係機関と連携した江刺金札米100周年記念事業実行委員会が主体となり、米俵復刻再現制作、100周年記念米袋での販売、記念グッズ制作販売、江刺金札米学会シンポジウムの開催、記念式典の開催などが行われています。

100周年を記念して復元された米俵
図5 100周年を記念して復元された米俵

 記念プロジェクトの一つとして、江刺金札米学会シンポジウムが11月19日に開催されました。ブランド米誕生の背景や当時の関係者の取組について、大学、研究機関、普及センター、郷土文化館、実需者等の講演により振り返り、今後の取組に活かされる内容となりました。

江刺金札米学会シンポジウム(令和3年11月19日開催)
江刺金札米学会シンポジウム
令和3年11月19日開催

 金札米学会シンポジウムのトークセッションでは、若手生産者が江刺金札米のこれからについて、現状に即した技術なども取り入れながら、地域の先輩が築いた金札米を維持発展させたいと力強く話し、今後の100年へ希望を感じさせる会となりました。

写真:江刺金札米学会シンポジウム トークセッション
江刺金札米学会シンポジウム
若手生産者・関係機関職員によるトークセッション

 今後も生産者とJA、関係機関が連携して、基本技術の励行や革新技術の積極的導入を図り、江刺金札米のさらなる飛躍を目指していきます 。

(奥州農業改良普及センター)

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