《二戸》産地情報「甘茶生産拡大への取組~二戸地域~」

ページ番号2005542  更新日 令和4年8月29日

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甘茶

甘茶栽培の歴史と活用

 甘茶は、アジサイ科に属する、高さ80cm程度の落葉低木で、ガクアジサイによく似た花をつけます。摘み取った葉を半乾燥、揉捻(じゅうねん)、発酵、乾燥すると、上品な甘みのあるお茶が生まれます。岩手県北部に位置する九戸村では、村おこしの一環で地域資源調査を行った結果、気候や土壌が生育に適していることが分かり、1983年(昭和58年)に栽培が始まりました。

 甘茶の甘味成分「フィロズルチン」は、砂糖の200倍の甘味を持ちながらも、ノンカロリーに近い天然甘味料として注目され、薬用作物として製薬会社に出荷されるほか、特産品のお菓子の材料として販売、また、ドイツやベルギー、イギリスなど海外にも輸出され、甘いお茶として飲まれています。

甘茶生産拡大の壁

甘茶は令和元年の時点で8.5トンを超える需要があるのに対し、出荷量は3.3トンと生産の拡大が求められている品目でした。高い需要に応えるためには、生産拡大が必要ですが、甘茶の多くは複合経営の一品目(主要品目+甘茶)として栽培されている上、栽培事例が少なく、新規栽培者の掘り起し等で、解決すべき課題が多くありました。

甘茶
生育中の甘茶

課題解決へ向けた動き

甘茶の栽培技術に関する知見は少なく、課題解決には多くの協力が必要だったことから、生産者、九戸村、甘茶工場、JA、二戸農業改良普及センター(以下、普及センター)等が生産振興に関わる役割を分担し、一丸となった取組が行われました。

(1)手取り除草の労力軽減

甘茶栽培は、基本的に農薬を使用しないため、作業の中でも手取り除草が占める時間と労力の割合が大きく、新たに栽培を始める際の高いハードルになっていました。そこで、低コストで抑草効果のある被覆植物(リビングマルチ)に着目、生産者と普及センターが協力し、令和2~3年度に実証を行いました。結果は、通路での抑草効果が得られ、農家からの期待の声が大きく、導入を図る生産者も増えています。

マルチ
通路を覆う被覆植物(リビングマルチ)

(2)栽培技術の平準化

産地として収量を安定的に確保するためには、どの生産者の一定の単収を得ることが欠かせませんが、甘茶栽培では栽培方法が統一されておらず、生産者間の収量にも差が生まれていました。そこで、各関係機関が協力し、高単収農家の栽培技術等を落とし込んだ「甘茶栽培マニュアル」を令和3年度に作成しました。令和4年度からはこのマニュアルを基にJA新いわて主催の甘茶栽培指導会が開催され、技術の平準化が図られています。

(3)早期成園化へ向けた育苗

甘茶は、挿し木から育成し、収穫可能になるまで、3~4年程度かかるのに加え、苗の供給体制が明確化されていないことから、新規栽培希望者が参入しにくい状態となっていました。そこで、普及センターでは、令和2年度より、通常、畑で行う挿し木を不織布ポット等に行い、収穫までの生育期間短期化を図る実証を行っています。現在も実証を継続中ですが、実証農家からは、「慣行の挿し木の方法より生育量が優れている」との声も上がっています。また、関係機関の役割分担が明確化されたこともあり、苗の供給体制についても改善しつつあります。

甘茶
乾燥後の甘茶
マニュアル
作成した「甘茶栽培マニュアル」

今後の課題

労力軽減や栽培方法の平準化等については、産地で一丸となった取組を通し、徐々に改善・向上してきていますが、生産者減少による生産量の減少や新たに肥料価格の上昇などの課題も発生し、新規栽培者の確保や低コスト化技術の普及が欠かせないものとなっています。このように様々な課題はありますが、普及センターでは、生産者や関係機関と連携しながら、生産者の収益向上、需要に対して十分な供給ができるよう、甘茶の産地づくりを支援していきます。

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このページに関するお問い合わせ

二戸農業改良普及センター
〒028-6103 岩手県二戸市石切所字荷渡6-3
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