《盛岡》 産地情報 「岩手県内トップの出荷量を誇るJAいわて中央・ミニトマト産地」
1 県内トップの出荷量を誇るJAいわて中央・ミニトマト産地の取組
JAいわて中央管内(盛岡市、矢巾町、紫波町)は、ミニトマトの一大産地として知られています。安定した生産と出荷体制が確立されており、出荷量は県内第1位を誇ります。盛岡市近郊の比較的温暖な気候と水はけの良い土壌を活かし、全国へ品質の高いミニトマトを出荷しています。
2 継続的な新規生産者の参入で産地基盤を強化
本産地では、従来からの生産者に加えて、新規就農者を積極的に受け入れており、ここ数年も毎年数名の新規生産者が加わっています。JAいわて中央と関係機関が連携し、技術支援や経営面でのサポートを行っており、生産者が安心して営農を継続できる体制を整えております。
3 「データ駆動型農業」の実践を支援
盛岡地域では、植物生理に基づく栽培管理とデータ活用を理念とする「データ駆動型農業」の実践支援に力を入れています。トマトの収量・品質は、気象や生育環境の変化に大きく左右されるため、気温・湿度・日射量といったデータをもとにした管理が不可欠です。そこで今年度は、盛岡地方農業農村振興協議会の主催により、全3回の「データ駆動型実践研修会」を開催しています。
研修会では、生育状況と気象データをリンクさせて振り返ることで、収量や品質に影響を与える要因を分析し、的確な栽培計画の立案へとつなげています。
また、環境要因が光合成や植物の生育に与える影響について植物生理の観点からの講義も行い、若手生産者を中心に「気象データから先を読む」「植物の仕組みに沿って管理する」といった考え方が広がりつつあります。
4 環境制御技術の導入実証と技術の普及
こうした意識の高まりを受け、環境モニタリング機器の設置のほか、温湿度やCO₂濃度を制御する「環境制御技術」の導入も進んでいます。盛岡農業改良普及センターでは低コスト環境制御技術の実証圃での効果検証を行いながら、低圧ミスト装置や小型炭酸ガス発生装置等の導入を推進するとともに効果的な運用に向けた指導・支援を行っています。
5 コナジラミ防除が課題、産地全体で対策に取り組む
一方で、近年ではコナジラミ類による被害が大きな課題となっています。コナジラミ類の寄生により、果実の汚れ、草勢の低下など収量や品質に大きな影響を及ぼしています。多発地域では、発生前の令和4年対比で収量が2割以上減少するなど深刻な被害が発生しており、早期の課題解決が求められています。
盛岡普及センターではこの課題に対処するため、令和5年度、6年度にコナジラミ類防除研修会を開催しており、それぞれ60名以上の生産者が参加し、コナジラミ類の生態や県内外の最新の防除技術、IPM(総合的病害虫管理)の先進事例を学びました。
また、令和7年度は、JAいわて中央野菜部会の取組の一つとして、全生産者に黄色粘着板を配布し、発生状況をモニタリングするとともに、防除情報の共有や適期防除の指導を強化していく予定としております。
さらに、普及センターでは、今年度からはコナジラミ類防除に関する総合防除実証を行っています。この実証では、防虫ネットと外気導入ファンを組み合わせた技術や、抵抗性が発現しない微生物農薬を活用した新たな防除体系について検証を行っていく予定にしています。
また、迅速かつ的確な防除を実施している先進地への視察も予定しており、生産者の意識改革や総合防除技術の確立と普及により、難防除害虫への対応力の強化を図っていくこととしています。
6 今後の展望
JAいわて中央のミニトマト栽培は、気候や立地条件を活かしつつ、新規就農者支援、技術研修、環境制御、防除対策といった多面的な取組を通じて、持続可能な発展を続けています。今後は、高品質・安定出荷の継続に加え、環境配慮や消費者ニーズへの対応も視野に入れながら、県内外から信頼されるブランド産地の確立を目指していきます。




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