《盛岡》産官等連携による「もち性小麦」を核とした地域振興~もち姫物語~

ページ番号2001593  更新日 令和6年3月13日

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産官等連携による「もち性小麦」を核とした地域振興~もち姫物語~

【転作小麦の課題】
 盛岡農業改良普及センター管内の小麦生産は、水田転作を契機に拡大し、県内小麦作付面積の約50%を占めています。
 主に栽培されていた「ナンブコムギ」は、その独特の風味から一定の需要がありましたが、生産面では縞萎縮病に弱いため、年々収量が低下し、生産者の所得確保や生産意欲低下が大きな課題となっていました。

【きっかけは偶然か必然か】
 盛岡市に本社のある白石食品工業株式会社《シライシパン》は、自社ベーカリーで特徴あるパンを製造するため、他県産の「もち姫」という小麦を扱っていました。取扱量増加への対応や地元産原材料へのこだわりから、地元の岩手中央農業協同組合(以下、「JAいわて中央」という。)に栽培を打診したことが全てのきっかけでした。
 そこで、「もち姫」の栽培から加工販売まで見通しが利いた産地を築くため、普及センターが中心となり、生産者を基軸とし、品種育成をした農研機構東北農業研究センター、JAいわて中央、製粉業社等で構成する「盛岡地方もち小麦の郷づくり研究会」を平成29年5月に設立しました。

【もち性小麦「もち姫」とは?】
 従来の小麦は、お米でいうと全てウルチ性の品種しかありませんでしたが、平成7年に農研機構東北農業研究センターが世界初のモチ性小麦「もち姫」を育成しました。
 モチ米と同じく、加工すると小麦のお餅ができるほか、パンや菓子類に使用するとモチモチとした独特の食感となるなど、多様な加工品への応用が期待されています。
 なお、「もち姫」は、ナンブコムギで問題となった縞萎縮病に対する抵抗性が強く、同病害による収量への影響がないことも「もち姫」への大きな期待のひとつでした。

【研究会の活動(生産編)】
 
「もち姫」の生産は、JAが製粉業社等と需要量を見通して計画し、平成29年産7haからスタートし、令和2年産約65haまで拡大しました。
 研究会では安定生産に向けた栽培技術研修のほか、栽培圃場見学会など実需者(製造業社)と生産者の交流も行ないました。

【研究会の活動(需要拡大編)】
 小麦は、お米や野菜などと異なり、収穫物(小麦粒)がそのまま一般家庭などで消費されることはなく、製粉(一次加工)の後、パンや菓子、麺類などに加工(二次加工)された後に一般消費者へ提供されます。このため、「もち姫」消費拡大のターゲットを食品製造業者や飲食店等に定めるとともに、一般消費者の方に知っていただくまで時間がかかることから、幅広いPR活動が必要となっています。
 そこで、食品製造業の方などに「もち姫」の持つ独特の加工適性を広く知っていただくため、研究会設立初年度に加工試作品の発表会を開催しました。県菓子工業組合などの協力をいただき、25品の試作品を披露することができ、その後、14品の商品化が予定されました。
 また、小麦の栽培体験を通じて直接消費者の方へPRするためのイベントも行っています。水稲や野菜などは、岩手県内で比較的身近に触れる機会がありますが、小麦の栽培体験は、おそらく県内初の取組だと思われます。現在、6組の家族が紫波町内の小麦畑で秋の種まきから、翌夏の収穫までの作業体験と小麦観察ノートへの記録などを行っています。

【活動の成果(生産編)】
 これまで生産者は、生産した小麦がJAに出荷した後、どのように加工販売されているか分かりませんでしたが、研究会活動を通じて、小麦が身近な商品になるまで見届けることができるようになりました。これにより生産者の生産意欲が高まったほか、小麦の流通販売や小麦加工品等への関心も高まりました。
 生産者所得の面では、研究会会員でもある紫波町が産地交付金の手当てを設けたことなどにより、従前のナンブコムギ対比約3割の所得アップとなり、生産者の小麦生産に対する意欲が増々高まっています。

【活動の成果(需要拡大編)】
 試作品発表会や消費者交流など、研究会の取組を通じて食品製造業者等に「もち姫」の加工適性が徐々に理解されてきました。
 県内の製粉業社が扱う「もち姫」が1年間で約十トンも増加しました。さらに、県内外から「もち姫」の供給に関する問い合わせが多く寄せられ、現在では、県内外の飲食店や食品会社から品質の良い「岩手県産もち姫」として指名リクエストされるまでになりました。
 身近なところでは盛岡市内の「もち姫」を使用したうどん店が連日大盛況となっているほか、紫波町内の飲食店では「もち姫」を使用した「ひっつみ」が人気となっています。
 また、研究会会員の白石食品直営のベーカリーでは、「もち姫」コーナーを設け、食パンのほか様々な商品が開発販売されています。

【今後の取組】
 「もち姫」のモチ性という独特の加工適性は、その配合割合や加水率の程度など、加工が難しいことから、美味しい「もち姫」商品を開発するため、加工事業者の創意工夫がポイントとなっています。
 そのため、「もち姫」生産加工の先駆けである青森県おいらせ町の「アグリの里おいらせ」との情報交換を進め、県内の加工事業者へ必要な情報提供をしていく必要があります。
 また、生産面では、需要を見通した面積拡大や安定供給のための栽培技術指導など、普及センターだけでなく研究会一体となった取組を更に展開していく必要があります。

【終わりに】
 当研究会の取組や生産者、消費者の声をまとめた動画が公開されましたので、ぜひご覧になってください。
 スマートフォンやパソコンで「もち姫物語」と検索していただくか、下記QRコードを読み取ってください。

QRコード

研究会の構成イメージ_役割分担

研究会の構成イメージと役割分担

写真:発表会

試作品発表会の様子

写真:見学会

加工事業者の圃場見学会

画面:経営試算表

「もち姫」生産の経営試算

写真:うどん店

もち姫を使用したうどん店

添付ファイル

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このページに関するお問い合わせ

盛岡農業改良普及センター
〒020-0023 岩手県盛岡市内丸11-1
電話番号:019-629-6730 ファクス番号:019-629-6739
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