《宮古》産地情報『新たな展開を見せる宮古地域のブロッコリー栽培』

ページ番号2012229  更新日 令和7年11月6日

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宮古地域のブロッコリー

 宮古地域では、宮古市、山田町、岩泉町、田野畑村の4市町村からなる沿岸部から山間部まで多種多様な地形や気象条件の中で野菜が栽培されています。また、地形的に耕地が限られるため単一品目を大規模に栽培することが難しく、果菜類(ピーマン、きゅうり)や土地利用型品目(ブロッコリー、だいこん、にんじんなど)を組み合わせた経営が行われています。

 その中で、ブロッコリーは、雪が少なく春が早い沿岸の気象条件を生かし、6月に収入を得られる品目かつ夏秋野菜の補完品目として、平成14年に田野畑村の5戸・120aで試作を行ってから、令和3年には作付面積30ha・販売額8000万円を超え、地域の主力品目となっています(写真1、図)。

写真1ブロッコリーの栽培状況
写真1 ブロッコリーの栽培状況
図宮古地域におけるブロッコリー生産の推移
図 宮古地域におけるブロッコリー生産の推移

近年の取組み

(1)秋どり作型の検討

 6月に出荷する「春ブロッコリー」は、市場のニーズが高く、他産地との競合が少ないため、盛岡などの市場では宮古地域が主力産地となっています。一方で、夏秋野菜が終了する秋から冬にかけての補完品目として、秋が長い沿岸の気象条件を生かした「秋どり作型(秋ブロッコリー)」を検討しました(平成30年)。

 その結果、8月下旬に定植し、11月に収穫することが可能であることがわかり、取組む生産者が増えました。

 しかし、近年の夏季異常高温による病害虫や生理障害の発生などにより栽培が難しくなっています。

(2)グローバルGAPの認証取得

 持続的な農業経営に向けて農業生産に関する意識の向上につなげるために、若手生産者を中心にグローバルGAPの団体認証を取得しました(令和2年)。

(3)コンテナ出荷の検討

 宮古地域のブロッコリーは、鮮度を保持するために「発泡スチロール箱に氷詰め」を行っていますが、近年の資材費高騰は、この「発泡スチロール箱」の価格にも影響し、生産者の手取りが減少し、課題となっています。

 そこで、資材費低減を目的とし、再利用可能な「折りたたみコンテナ」による出荷を検討しました(写真2、令和6~7年)。

 その結果、翌日店頭販売される販路であれば問題がないことが確認されました。

 今後は、契約販売のような形での出荷に対応できる見込みがあることから、利用できる生産者のコスト低減につながると見込まれます。また、全量の切り替えは難しいことから他のコスト低減手法についても検討を続けています。

写真2容器(発泡スチロール箱、コンテナ)と氷詰めの様子
写真2 容器(発泡スチロール箱、コンテナ)と氷詰めの様子

(4)新規栽培者・労力確保の取組み

 産地の維持拡大には、新規栽培者の確保が必要です。そこで、新規栽培希望者向けの「圃場見学会」を開催し、実際に見てもらうことでブロッコリー栽培への取組みをすすめています(写真3)。

 また、ブロッコリー栽培は、作業の大半が収穫調製に費やされます。そのため、収穫期となる6~7月は労力確保が重要です。そこで、農作業に従事することを希望される方のために「作業体験会」を開催し、実際の作業を体験しながら農作業や働き方に理解を深めてもらい、雇用主とのマッチング会「農作業パート・アルバイト募集説明会」を開催し、労力確保に努めています。

写真3新規栽培者希望者向けの圃場見学会
写真3 新規栽培者希望者向けの圃場見学会

(5)地域の理解を深める活動

 地域の産業である農業への理解促進を図るため、地元の小学校を対象にブロッコリーの栽培体験学習を実施しています(写真4)。

写真4小学校の栽培体験学習
写真4 小学校の栽培体験学習

新たな展開

(1)気象変動への対応

 これまで、沿岸の気象特性を生かした栽培が行われてきましたが、近年の高温や乾燥など大きな気象変動により、これまでの品種や栽培方法での安定生産が難しくなってきています。そこで、品種や防除体系の検討、乾燥対策など様々な対策を講じながら、安定生産ができるよう取組んでいます。

(2)久慈地域への拡大

 宮古地域に隣接する久慈地域でも春ブロッコリーの栽培が広まっています。宮古地域は試作されてから二十数年が経ち、産地としては拡大から維持する段階に入っていますが、地形や気象条件が似た野田村などでの栽培が増えており、生産者同士の交流を深めながら、同じ産地として今後のさらなる拡大が期待されています(写真5)。

写真5宮古と久慈の生産者交流
写真5 宮古と久慈の生産者交流

添付ファイル

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電話番号:0193-64-2220 ファクス番号:0193-64-5631
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