《宮古》産地記事『宮古市川井地区におけるしそ生産~川井赤しそが地理的表示(GI)登録に~』

ページ番号2011373  更新日 令和7年2月25日

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「川井赤しそ」について

 宮古市川井地区(旧川井村)で栽培されているしそは、葉の表面が緑色、裏面が赤紫色という特徴を持った片面紫蘇で、色素や香りも強く肉厚な在来品種を選抜して栽培が行われてきました。栽培は、昭和60年ころから始まり、平成元年にはしそジュース「ペリーラ」の販売が開始されました。平成3年ころから栽培が本格化していき、川井しそ生産組合は平成4年に設立されています。

川井赤しその写真
図 「川井赤しそ」
栽培ほ場の写真
図 「川井赤しそ」栽培ほ場

しそ栽培の安定生産に向けた取り組み

(1)育苗方法の改善

 肉厚で香りに優れた「川井赤しそ」については他県JAからも100tを超える大口の取引についての提案がされました。しかし、その提案を受けた時点では、まだ収穫量は30tが限界であったため、要望に応えるためにはしその単収向上が必要な状況でした。そこで、単収向上に向けて、栽培技術の改善が図られました。

 まず、しそ生産が安定しない要因の一つとして苗の供給が不安定であり、そのために収穫量の年次変動が大きいということが課題となっていました。それまでの育苗は、育苗床に種子をばらまきまたは条播し、適期になったら育苗箱から抜き取り定植するというものでした。しかし、この育苗方法では、発芽率や生育のばらつきが大きく、定植苗の不足や定植後の活着不良などの問題がありました。

 そこで、普及センターでは「セル成型育苗」について提案し、関係機関・団体と連携を取りながら、技術導入を図りました。「セル成型育苗」の確立に当たっては、安定した発芽のために必要な温度や、苗立ちを確保するための適切な播種量などの条件を予備試験等の実施により明らかとしました。

 「セル成型育苗」の技術確立後は、苗の生産を地域内の農業法人に委託することによって、高品質な苗の安定供給体制が確立され、また生産者の育苗労力の削減も図られました。

定植適期のセル成型苗の写真
図 定植適期のセル成型苗

(2)施肥方法の改善

 育苗のほかにも単収向上に向けて、施肥の改善にも取り組みました。当初の施肥体系では、施肥は基肥のみとなっていました。しかし、基肥のみでは生育途中で肥切れして、収穫終盤で十分な生育が確保できなくなることが低単収の要因として想定されました。そこで、基肥だけでなく、こまめな追肥を行うよう施肥体系の改善を行った結果、それまで900キログラム/10a程であった単収を、1,300キログラム/10a程度まで伸ばすことができました。

地理的表示(GI)の登録に向けた取り組み

 しその生産、加工品の開発製造など様々な取組を進めてきた結果、川井しそ生産組合は平成16年には「いわて地域特産作物オンリーワン賞」、平成22年には個性ある「産地づくり賞」を受賞するなど、その取組が認められてきました。

 そのような中、平成30年には「川井赤しそ」の更なるブランド化を推進し、付加価値を高めることを目的として、宮古市川井しそ生産組合、株式会社川井産業振興公社の2団体を構成団体として「川井しそブランド推進協議会」が設立されました。そして、「川井赤しそ」の地理的表示(GI)の登録を目指す取り組みが進められました。地理的表示(GI)制度は、その地域ならではの自然的、人文的、社会的な要因、環境の中で長年はぐくまれてきた品質、社会的評価等の特性を有する産品の名称を、地域の知的財産として保護するものです。

 地理的表示(GI)登録は、令和5年6月5日に第1類 農産物類 野菜類(しそ)と第5類 農産物加工品類 野菜加工品類(しそ塩蔵品)として申請が行われました。その後、現地調査、学識経験者委員会を経て、令和7年1月30日付で地理的表示(GI)農林水産大臣登録 第160号として登録がされました。2月4日にはブランド協議会より宮古市長への登録報告も行われ、たくさんの報道機関の取材をうけていました。

「川井赤しそ」GI登録証の写真
図 「川井赤しそ」GI登録証
図「川井ペリーラ」 GIマーク入ラベル予定の写真
図「川井ペリーラ」
GIマーク入ラベル(予定)

今後の取り組みについて

 現在、川井しそ生産組合の組合員数は15名と高齢化に伴い漸減している状況にあります。組合員からは、今回の地理的表示(GI)登録を契機として、「川井赤しそ」の栽培拡大に向けて機運醸成を図っていこうという動きが出てきています。

 今後も、特色のある「川井赤しそ」がより発展していけるよう、引き続き普及センターも一緒に取り組んでいきたいと思います。

(文:宮古農業改良普及センター 松浦 拓也)

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宮古農業改良普及センター 産地育成課 情報担当
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