《久慈》産地情報『新規品目の導入による久慈地域野菜産地の新たな取組』

ページ番号2010657  更新日 令和6年4月22日

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久慈地域のほうれんそう生産と新規品目の導入について

 久慈地域は、「やませ」による夏期冷涼な気候を生かしたほうれんそう産地として発展し、平成15年頃の最盛期には販売額10億円を超える産地となりましたが、近年は販売額が年々減少しており、当時の3割程度となっています。

 減少の要因の一つが夏の気温の上昇です。7月の平均気温は年々上昇傾向であり(図1)、令和5年には異常な高温となるなど(図2)、冷涼な気候を好むほうれんそうは、栽培しにくい状況となっています。

 これまでは、ほうれんそうを中心とした野菜振興を図ってきましたが、農業所得確保に向けて、気象に合った新たな品目の導入も検討し、令和3年頃からピーマン、ブロッコリー等の新規品目を含めた野菜振興を図ることとしました。

7月の平均気温のグラフ
図1 7月の平均気温の推移
令和5年の気象推移のグラフ
図2 R5年の気象の推移

これまでの取組

(1) 関係機関との連携強化と支援体制の構築

 JA新いわて久慈地域野菜部会では、これまで、ほうれんそうを中心に生産振興を行ってきたことから、新規品目栽培者に対する支援体制が構築されていませんでした。

 そのため、関係機関・団体(農協、市町村、振興局農政部)が集まって、毎月開催してきた園芸ミーティングにおいて、ほうれんそう中心の協議から新規品目を加えた協議に変更するとともに、関係機関がお互いの強みを生かしながら連携した支援体制を構築し、新規品目の栽培者や導入志向者などの導入ステージに対応した支援を効率的に実施できるよう協議しながら、令和5年度は次のような取組を行いました。

(2) 新規品目栽培者の確保

ア 新規栽培者確保説明会の開催(11月)

 久慈地域で栽培されている主な野菜品目の栽培概要をまとめた「久慈地方野菜作付推進ガイドブック」を作成し、ガイドブックをもとに新規品目の主な作業や労働時間・経費・所得の目安等を紹介する説明会を開催しました。参加者にはアンケートを実施し、作付け希望品目等について意向を確認するとともに、圃場見学会への参加誘導を行いました。

イ 圃場見学会の開催(7、10月)

 新規栽培者確保説明会で栽培に関心を持った参加者等に対して、アンケート結果を基に品目を選定し、栽培圃場の見学や栽培者との交流の機会を提供するための見学会を開催しました。

圃場見学会の写真
圃場見学会の様子(ブロッコリー圃場)

(3) 新規品目栽培者の育成

ア 新規品目栽培指導会・全戸巡回・個別指導

初めて新規品目の栽培に取り組む栽培者等に対し栽培指導会を新たに実施しました。指導会後に農協と連携して全戸巡回を行うとともに、随時、個別指導を行い、栽培技術のスキルアップを支援しました。

イ 先進産地研修会の開催(6、9、10月)

新規品目栽培者等を対象とし、先進産地や大規模経営体の取組を学ぶ研修会を開催して参加者のステップアップを図るとともに、参加できなかった栽培者を対象に研修内容を伝達する個別巡回を行いました。

ウ 戸別営農相談の実施(12月)

新規品目の全栽培者に対し、栽培終了後に営農相談を行い、生産上の課題と対応策をカルテにまとめ、関係機関が栽培者と共有しながら、S-PDCAサイクルに基づいた支援を実施しました。

エ 新規品目実績検討会の実施(2月)

これまでは新規品目の実績を検討する場がなかったため、新たに実績検討会を実施し、当年の取組状況、課題及び次年度にむけた対応策について栽培者、関係機関と共有しました。

先進産地研修の写真
先進産地研修の様子(ピーマン)
戸別営農相談の写真
戸別営農相談の様子

活動の成果

(1) 新規品目栽培者の確保

 新規栽培者確保説明会で把握した導入志向者に対し、ニーズに基づいた圃場見学会の品目選定や個別支援により、新規品目導入志向者の理解醸成を図り、令和5年の新規品目の栽培者が7名増加と栽培面積拡大につながりました。

 令和5年の取組により、令和6年にも新規栽培者が加わり、さらに産地拡大が見込まれています。

(2) 新規品目栽培者の育成

 栽培指導会、関係機関と連携した全戸巡回指導により、新規栽培者の単収が向上し、出荷量・販売額が増加しました。

 また、戸別営農相談では、対象農家の所得向上に向けて、個人の経営に合った新規品目の導入による複数品目を組み合わせた農業経営モデルを提案し、栽培者の販売額向上につながった事例もありました。

2月末におけるピーマン、ブロッコリー合計の農協販売額・出荷量の推移のグラフ
図3 ピーマン、ブロッコリー合計の農協販売額・出荷量の推移(2月末実績)

今後の活動

(1) 関係機関と連携した支援体制の改善・定着

 新規品目栽培者の確保・育成に向けては、関係機関と連携した継続的な支援が必要です。栽培者確保説明会や指導会、先進産地研修会など引き続き実施するとともに、栽培者等のニーズに合わせた支援体制の改善と野菜部会内への定着に向けた支援をしていきます。

(2) 先進的役割を担う「産地リーダー」の育成

 新規品目の産地拡大のためには地域内における自律的な指導体制が必要となってきます。栽培技術が高く意欲高い栽培者を対象とし、導入志向者や新規栽培者の相談役となるような「産地リーダー」に育成していき、地域内での新規品目導入のさらなる波及を図っていきます。

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このページに関するお問い合わせ

久慈農業改良普及センター
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