《久慈》産地情報『ワイン加工適正の高いヤマブドウ系統の選抜と普及拡大』~久慈地域~

ページ番号2006836  更新日 令和6年3月13日

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系統別に醸造試験を実施したワイン

はじめに

 ヤマブドウは久慈地方が国内有数の産地となっていますが、生産者の収益性が低いことが課題でした。しかし、平成二十八年に「涼海の丘ワイナリー」が開業されたことで、単価の高いワイン原料としての需要が増加し、生産者の収益性向上につながっています。

 一方、ヤマブドウでは既存の系統に加え、近年新たに新規有望系統となる「高森早生系」と「佐藤系」が選抜され、収穫期の作業分散や収量の増加による安定供給が期待されています。

 そこで、久慈農業改良普及センターでは、新規有望系統の品質を早期に把握し、導入を加速化することを目的として、生育特性・醸造適性の把握、普及拡大に取り組みました。

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新規有望系統「高森早生系」「佐藤系」の概要
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新規有望系統のワイン加工適性調査結果
注(地独)岩手県工業技術センター醸造試験結果(R2)
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現地研修会の様子

ワイン加工適性の高い系統の選抜と生育特性の把握

(1)系統別比較実証ほの設置・調査

 新規有望系統を含む6系統について、系統別比較実証ほを設置し、生育特性・果実品質等の調査を継続して行いました。

 平成三十年から令和二年までの系統別品種比較実証ほの調査の結果、二系統ともに、優良な系統であることがわかりました。

 「高森早生系」は他系統より収穫期が早く、収穫・調製作業の平準化が期待できること、収量が多く、糖度等の果実品質も優れています。

 「佐藤系」は結実率が高く、病害等による果実の腐敗も少ないこと、収量は平均以上であり、糖度等の果実品質も優れています。

(2)ヤマブドウ新規有望系統の醸造試験

 新規有望系統のワイン醸造試験を(地独)岩手県工業技術センターに委託し、既存系統「野村系」との比較により、醸造適正を把握しました。

 果汁品質調査及び醸造試験の結果、いずれの系統とも、搾汁率、果汁成分、発酵の状況、ワイン成分など醸造上の問題はありませんでした。また「高森早生系」は色が濃く、甘い香りと味の厚みで官能評価結果が高く、「佐藤系」は個性的な香りと軽やかな味で、官能評価は既存系統並みに良好であることが分かりました。

(3)ヤマブドウ新規有望系統の評価

 新規有望系統の早期普及や販路拡大を図ることを目的として、新規有望系統のワイン醸造適性評価のため、県内の専門家(ソムリエ等)による外部評価会を実施しました。

 専門家による外部評価会では、ワイン評価の他にも、ヤマブドウワインと料理のペアリングの提案や、ヤマブドウの酸味をいかしたワイン造り等について助言があったので、地元ワイナリーへフィードバックし、取り組みを促しました。

 また、地域の関係者を集めた評価会では、参加した生産者や地元ワイナリー、関係機関等に新規有望系統の生育特性やワイン加工適性等の周知を図りました。

 いずれの系統でも高い評価が得られ、地元ワイナリーでも新規有望系統を利用してワインを製造したいという意見も得られました。

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ヤマブドウ新系統のワイン適正評価委会の様子(令和3年2月19日)

新規有望系統の普及・拡大

(1)新規有望系統の特性等の周知(令和二年~)

 新規有望系統の特性等を早期に周知し、新改植を促進することを目的として、久慈地方ヤマブドウ振興協議会が開催する実績検討会及び現地研修会(年四回)において、新規有望系統の生育特性・果実品質、ワイン加工適性等を周知しました。その結果、新規有望系統は優良系統として会員に認識され、新規有望系統への新改植希望が出てきています。

(2)生産を振興する品種への位置づけ

 新規有望系統の導入を促進するため、「果樹産地構造改革計画(令和三~七年計画、久慈地方果樹産地協議会)」において、新規有望系統を「生産を振興する品目・品種」として位置付けました。

 新規有望系統を「果樹産地構造改革計画」に位置付けたことにより、「果樹経営支援対策事業」を活用した新改植が可能になり、生産者の新改植の負担減につながりました。令和四年度には、本事業を活用し、約二十aが新規有望系統に改植される見込みです。

おわりに

 現在久慈地域では、生産者の高齢化等の理由から生産量が減少しており、地域需要分を満たせていない状況です。久慈農業改良普及センターでは、収量の多い新規有望系統への改植等を勧めながら、ヤマブドウの生産性向上に向け、引き続き支援して行きます。

(文:久慈農業改良普及センター)

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このページに関するお問い合わせ

久慈農業改良普及センター
〒028-0064 岩手県久慈市八日町1-1
電話番号:0194-53-4989 ファクス番号:0194-53-5009
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