酪農サポートチームが一丸となった乳価アップ作戦

ページ番号2004452  更新日 令和6年3月13日

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酪農サポートチームが一丸となった乳価アップ作戦

~岩手県一関地域の取組~

1 背景

 当地域は、酪農家が90戸以上存在し、県内酪農家戸数の約15%を占める酪農産地です。その一方で平均飼養頭数は15頭と県内でも最小規模です。酪農従事者の平均年齢は60歳を超え、年に約10戸が廃業するなど、従事者の高齢化や廃業が顕著になってきています。

 当地域で生産される生乳は体細胞が多く、廃棄乳の発生や乳価の低迷が問題となっています。平成29年度時点の当地域の乳価は、県平均よりも約1円/キログラム低く推移し、当地域の経済損失額は約6,000万円と推定される状況にありました。

 

2 課題

 当地域が今後、酪農産地として維持・発展していくためには、乳質改善を図り、地域乳価を引き上げ、農家所得の向上を図る必要があります。そこで、一関管内で特に課題となっていた体細胞数低減に取り組みました。

 

3 体細胞とは

 体細胞は、白血球や剥がれ落ちた乳腺の上皮細胞で、市販の牛乳にも含まれています。体細胞数が多いということは、牛の体内で何らかの炎症(乳房炎等)が起きていることを示します。

 乳価は、体細胞数のほか、乳脂肪、無脂乳固形分、細菌数によって決まります。乳価テーブルには、体細胞数の「乳質格差金」というものがあり、体細胞数が高くなると乳価は下がります。

 体細胞数が一定値を超えると「出荷停止」となり、廃棄乳が発生します。そのため、体細胞数の低減は廃棄乳の発生防止につながり、農家所得の向上に直結します。

 

4 活動体制

 本県では、地域の酪農振興を推進するため県酪農振興アクションプランに基づき、農協、農林振興センター、家畜保健衛生所、普及センターで構成する「酪農の郷サポートチーム」を、各地域で組織しています。

 体細胞数低減による乳価アップを目指し、サポートチームの活動計画に位置付け取り組みました。普及センターは、酪農家への聞き取り調査、改善指導、成果等情報発信を担当しました。

 

5 取組内容

(1)搾乳手技等の現状把握

 搾乳手技等の聞取調査は、酪農家全戸を対象に実施しました。聞取は、年1回酪農家全戸を巡回するミルキングシステム診断(搾乳機器の点検やメンテナンス)に併せて実施しました。

 聞取調査により、優良農家に共通する事項として「牛床の管理」が重要であること、新たな知見として「蹄の管理」が大きく影響することが分かりました。

 

(2)個別改善指導

 聞取調査結果に基づき、優良農家の共通取組事項を示しながら個別改善指導を行いました。体細胞数が多く、飼養牛の乳房炎が疑われる農家には、乳房炎の原因菌を特定する乳汁培養検査に誘導し、飼養環境の改善指導のほか、原因牛の特定や搾乳手順の調整などに活用しました。

(3)分析結果の伝達・波及

 普及センターでは、全戸調査と生乳出荷成績をまとめ、分析し、部会研修会で伝達しました。また、リーフレットを作成し、農家への注意喚起を行いました。

6 活動成果

(1)乳価価格差縮小

 地域平均乳価と県平均乳価との価格差は、H29年度の0.90円/kgに対しR2年度は0.57円/kgで、乳価格差は0.33円縮小しました。

 

(2)乳質改善大賞受賞者の増加

 全農いわてが主催する岩手県乳質改善大賞受賞者が、H30年度は0名でしたが、R2年度は3名(うち若手酪農家1名)に増加しました。

 

7 今後の課題

 価格差は縮小したものの、地域平均乳価は県平均乳価より依然低い状態です。酪農サポートチームの取り組みを通じて体細胞数低減技術は定着しつつあります。今後はさらに乳価に影響のある乳成分(無脂乳固形分)や細菌数の改善に取り組んでいきます。

表1
体細胞数による乳価格差
伸びすぎた蹄
蹄の伸びすぎは体細胞の増加や乳量、繁殖成績に悪影響を及ぼします

蹄の長い農家と短い農家の分娩間隔の比較

蹄の長い農家と短い農家を乳量で比較

県平均乳価との差

このページに関するお問い合わせ

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〒029-0803 岩手県一関市千厩町千厩字北方85-2
電話番号:0191-52-4961 ファクス番号:0191-52-4965
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