【産地・産直等情報】《八幡平》販売額20億円の産地を目指して

ページ番号2010819  更新日 令和7年3月24日

印刷大きな文字で印刷

地域の概況

 岩手、葛巻、玉山地域を含むJA新いわて東部管内は、夏季冷涼な気候と、地域の畜産農家が生産した良質な堆肥を利用した土づくりにより、キャベツ、ピーマン、ながいも、だいこんなどの栽培が盛んな、全国でも有数の露地野菜産地となっています。

 なかでもキャベツは、甘みと柔らかさに優れる春系品種の栽培にこだわり、ブランドキャベツ「いわて春みどり」として全国に広く知られています。

収穫を迎えたキャベツ畑です。
収穫を迎えたキャベツ
収穫作業の様子です。
収穫作業

キャベツ「いわて春みどり」の歴史

 岩手県におけるキャベツ栽培の歴史は明治初期まで遡り、明治37年に「南部甘藍」が育成されたあとは、盛岡近郊からその周辺地域へと産地が拡大していきました。昭和15年には、旧御堂村63ha、旧川口村50ha、旧一方井村25ha、旧沼宮内町13haなど、現在の岩手町を中心に産地が形成され、岩手県は、明治末から戦前期にかけて群馬県や長野県を上回る全国有数のキャベツ産地でした。
 その後、群馬県等の高冷地から京浜市場までの距離の有利性をいかした新鮮なキャベツが大量に市場に出回るようになると、アザミウマ類によるゴマ病の大量発生なども重なり、「南部甘藍」の産地は衰退しましたが、高度経済成長の時代に消費動向が変化し、キャベツも生食中心になると、消費者の「柔らかく、甘いキャベツが欲しい」という声に対応し、従来の寒玉品種とは異なる春系品種を導入したことで、産地として復活を遂げることになりました。
 春系品種導入後、オリジナルブランド「いわて春みどり」として、生産部会、関係機関一体となって、品質の向上や、適品種の選定、栽培技術の確立などに努めたことで、現在では、多くの市場、消費者に要望される一大ブランドとして成長しています。
 

JA新いわて東部管内における「いわて春みどり」栽培の特徴

(1)耕畜連携による堆肥を活用した土づくり
 岩手町では、地域にある豊富で良質な堆肥資源を有効に活用するため、平成15年度から、耕種経営体、畜産経営体、JA、行政が一体となり耕畜連携に向けた取組を開始しました。堆肥需要に関する情報共有や、キャベツ等における化学肥料代替実証展示圃の設置などを経て、平成17年度からは堆肥購入に係る岩手町からの助成制度も開始しました。
 現在も内容を拡充しながら岩手町による助成制度は継続しており、キャベツに限らず、様々な野菜品目で地域内堆肥の利用が進んでいます。

(2)生産者個々の大型化による産地面積の拡大
 JA新いわて東部管内においても、高齢化等により生産者数は年々減少しており、平成13年度に214戸あった経営体は、令和5年度には59戸まで減少しています。
 一方、中心的経営体では定植や除草作業等の機械化による作業の省力化・効率化や外国人技能実習制度の活用などにより、規模拡大を進めたことで、産地全体の「春みどり」栽培面積は、平成13年度の245haから、令和5年度の400haへと拡大しています。
 また、概ね10ha以上の大型農家15戸程度で産地全体の生産量の9割近くを占めていることも特徴で、後継者の確保も進んでいます。

JA新いわて東部地域におけるキャベツ(春みどり)生産・販売の推移

JA新いわて東部地域におけるキャベツ(春みどり)生産・販売の推移です。
注令和4年は大雨・日照不足により出荷量が減

(3)適品種の選定や標高差を活かした長期継続出荷

 地域の気象条件に合った適品種の選定による収量向上も特徴の一つです。品種の試作検討は、生産部会、JA、普及センター等が連携して行ってきました。これまで、耐暑性が高い「夏さやか」を平成11年度に導入したのをはじめ、「春さやか」、「秋さやか」を導入しており、現在も、試作品種の栽培実証や種苗会社への視察調査など毎年実施されています。

 また、JA新いわて東部管内のキャベツ圃場は、標高400mから800mまで広がっているため、標高差を活かしたリレー栽培により、生産の安定化と長期継続出荷が図られています。

産地における新たな課題と現在の取組

(1)肥料価格の高騰と堆肥の有効活用

 近年、国際情勢の変化に伴い肥料の確保や価格の高騰が問題となっており、農家経営の圧迫が懸念されています。そのため、これまでも土づくりとして堆肥の活用が推奨されてきましたが、現在、化学肥料代替として、豚ぷんや鶏糞の活用について検討しています。令和5年度は、化学肥料の一部をそれらに置き換えて栽培したところ、生産に影響なく、肥料価格を慣行の施肥体系よりも15%~60%程度下げられることが確認されました。今年度も、堆肥の代替割合を変更し、更なる検討を行っています。

試作した堆肥入り指定混合肥料です。
試作した堆肥入り指定混合肥料
堆肥と化学肥料の混合散布機です。
堆肥と化学肥料の混合散布機

(2)新規病害の発生と防除対策

 令和5年度、産地内において、国内外で未報告のキャベツ新規病害が発生し、一部では半分以上出荷できなくなるなど、甚大な被害となりました。今年度も同様に病害が発生するか現時点では不明ですが、農業研究センターの協力を受けながら、新規病害に効果のある薬剤を用いた防除体系の実証を行っています。

新規病害の発病の様子です。
新規病害の発病の様子
新規病害の初期症状です。
新規病害の初期症状

(3)異常気象の発生と新資材の検証および適品種の選定

 近年、夏季の高温や豪雨・干ばつ、春先の霜害など、さまざまな異常気象により生産が不安定となっています。このような影響は今後ますます大きくなるものと予想されますが、今年度は高温対策としてバイオスティミュラント資材の効果を検証する実証を行っています。資材の利用により乾燥耐性を高めることで、高温時における初期生育の安定化や欠株発生の抑制を期待しています。

 また、低温や高温に強い品種の選定も引き続き行っています。

販売額19億円の達成と新たな目標

 JA新いわての東部地域春みどり専門部会は、規模拡大等により作付面積を年々増加させたことで、平成18年度には作付面積が約290haとなり、念願の販売額10億円を突破しました。更に、その後も生産性の向上と産地面積の拡大を図ったことで、令和2年度には、高単価にも支えられ、販売額19億6千万円を達成しました。

 令和3年度から5年度にかけては、単価安や豪雨・高温など異常気象の影響により販売額はやや伸び悩んでいますが、現在は、販売額20億円の突破という新たな目標を掲げ、生産者と関係者が一丸となって取組を行っています。

このページに関するお問い合わせ

八幡平農業改良普及センター岩手町駐在
〒028-4307 岩手県岩手郡岩手町大字五日市9-48
電話番号:0195-62-3321 ファクス番号:0195-62-1377
お問い合わせは専用フォームをご利用ください。