《八幡平》ルポルタージュ 日本一のりんどう産地、その取り組みと新しいスタート

ページ番号2006631  更新日 令和5年1月5日

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部会創立50周年を迎えて

令和4年11月17日、盛岡市で新岩手農業協同組合八幡平花卉生産部会創立50周年記念大会が開催されました。新型コロナウィルスの感染拡大により当初の予定より一年遅れの開催ではありましたが、当日は関係機関・団体、市場関係者など来賓や生産者、総勢280名余が出席し、式典が執り行われました。式典では歴代の部会長へ感謝状が贈呈されるとともに、50年前にりんどうの栽培を始めた先人たちの先見の明と努力を称えました。

50周年記念式典の様子 (歴代部会長表彰)
50周年記念式典の様子(歴代部会長表彰)

日本一の産地の「はじまり」と「いま」

旧安代町(現:八幡平市)でりんどう栽培が始まったのは昭和46年。県北の山間部であるこの地は「やませ」の影響を受けやすく、水稲の不作が頻繁に起こるため、収入が不安定でした。

この事態を打破すべく立ち上がったのが、当時の若手農業者で構成された4Hクラブのメンバー。水稲に代わる品目としてりんどう栽培に着目し、当時の県園芸試験場職員だった吉池貞藏氏(八幡平市名誉市民)や故玉山清農業改良普及員らの協力と指導のもと、栽培を開始しました。

食料にならない切花を栽培するのは反対だと言う声や、栽培技術等の知見が皆無というハンディキャップを抱えてのスタートでしたが、翌47年に安代町農協花き園芸生産部会が設立された後は自家育苗から委託育苗への転換、品質の均一化など課題を解決しながら出荷量を伸ばしていきました。昭和60年には岩手県のりんどう販売額が全国トップとなり、平成2年には安代町のりんどう販売額は10億円を突破。同4年には安代町オリジナル品種の育成がスタートしました(現在の八幡平市産りんどうの98%以上は地域オリジナル品種)。また、平成14年からは海外輸出を開始し、同27年に農林水産祭園芸部門では「天皇杯」を受賞。令和3年に東京オリンピック・パラリンピックのビクトリーブーケに岩手県産りんどうが採用され、今や「安代りんどう」は国内外でその存在を不動のものにしています。

「日本一」の産地の取組

八幡平花卉生産部会では現在、毎月一回役員会を開催し、複数の部門に分かれて具体的な課題解決に取り組んでいます。

このうち、切花りんどうの栽培技術を協議・決定する「りんどう専門部」では、土づくりや病害虫防除について、自主的に状況把握や実証圃設置による解決方法の検討に取り組んでいます。近年は温暖化の影響で発生する病害虫の状況にも変化が見られるため、状況に応じた農薬の特別散布の実施が必要となってきています。月一回のりんどう専門部・技術班(関係機関・団体や農協、一般社団法人など各支援機関で構成)合同会議での情報交換や協議、専門部員の圃場での実証により、これらの課題の解決に速やかに対応できる体制が整っています。八幡平農業改良普及センターでは、実証圃における生育データ集計とそこから得られた傾向や対応策などの課題解決方法、気象災害対策などタイムリーな情報を、出来るだけ情報収集した当日に「花き情報」として発行し、速やかな伝達を心がけています。

鉢物研究会や育苗研究会でも同様に自らによる課題解決に取り組んでおり、スピード感のある情報共有が図られています。また、ほぼ全ての部会員が出席する年二回の集落座談会は、栽培技術等の情報提供と、部会員から部会や支援機関に対する意見等を伝える機会であり、産地の維持・発展の一助となる重要な行事の一つとなっています。

機構図

実証圃の検証 (りんどう専門部)
実証圃の検証(りんどう専門部)
集落座談会のようす
集落座談会の様子

また、毎年7月上旬に開催されている全戸圃場巡回では、全部会員140戸あまりの圃場を部会役員や普及センター含む関係機関職員が分担して巡回し、病害虫防除や除草、フラワーネット設置などの栽培管理が適切に行われているかを確認しています。この中で、栽培年数の短い部会員に対しては基本的な栽培技術を普及センターが、栽培マニュアルだけでは伝達できない管理や出荷物調製のコツなどを先輩生産者が丁寧に指導するなどして地域全体の栽培技術の底上げが図られています。

全戸圃場巡回のようす
全戸圃場巡回の様子

新しいスタート

50周年記念大会の日は、花き部会にとってはゴールではなく、新たなスタートの日となりました。

高齢化や栽培者減少の影響は少しずつ出始めているものの、部会が主導する技術指導による単収向上、消費地のニーズに合わせた柔軟な出荷体制、そして新しくりんどう栽培を志す後進たちへの技術的・経営的指導を着実に実施し、これからの50年、その先も産地を繋いでいくために、産地一丸となった努力と挑戦はこれからも続きます。

このページに関するお問い合わせ

八幡平農業改良普及センター
〒028-7112 岩手県八幡平市田頭39-72-2
電話番号:0195-75-2233 ファクス番号:0195-75-2269
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